不動産の賃借にともなう会計処理(敷金・礼金・手数料・家賃)

簿記債権債務収益・費用
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事務所や店舗として使用するため,社宅として使用するために,不動産を借り入れた場合は,月々の家賃を支払うことはもちろんのこと,そのほかにも敷金・礼金・仲介手数料などのさまざまな形での支出が必要となります。この記事では,これらの家賃以外の支出項目の処理も含めた,不動産の賃借にともなって行われる一連の仕訳を見ていきます。

敷金

敷金(しききん)とは,賃借期間中に賃借人(借手・店子等)側が負担しなければならない金額(家賃,賃借人負担の修繕費等)を賃借人が支払わなかったときの担保として事前に支払いが求められる金額のことをいいます(「民法」第622条の2)。

賃借期間中に,もし賃借人が家賃を支払わなかったり,不動産を損傷させてしまった場合は,敷金として納めておいた金額から賃貸人(貸手・大家等)の損害が補填されます(不足する場合は不足額が請求されます)。逆に,賃借人がこれらの問題を起こさなかったり,これらの問題が生じたとしてもその金額が敷金の額よりも小さかった場合は,その残額は賃借契約の終了時に賃借人に返還されます(「民法」第622条の2)。

契約時の処理

契約にあたって,敷金として支払った金額は,差入保証金勘定に記録します。敷金は(問題さえ起こさなければ)将来,賃借契約が終了したときに返還を受けることができる金額であるから,差入保証金勘定は資産の勘定になります(将来に資産の増加をもたらすもの)。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
差入保証金500,000普通預金500,000

契約終了時の処理①(返金を受ける場合)

契約時に敷金として支払った金額よりも,賃借人側の責任で負担しなければならない修繕費等の金額(退去費用)の方が少ない場合は,残金について返還を受けることができます。なお,賃貸借契約は終了していますので,差入保証金勘定に計上した金額はすべて取り崩します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
普通預金200,000差入保証金500,000
退去費用300,000  

契約終了時の処理②(不足額を支払う場合)

契約時に敷金として支払った金額よりも,賃借人の責任で負担しなければならない修繕費等の金額(退去費用)の方が少ない場合は,その不足額を退去にあたって追加で支払うことが必要になります。なお,この場合も賃貸借契約は終了していますので,差入保証金勘定に計上した金額はすべて取り崩します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
退去費用700,000差入保証金500,000
  普通預金200,000

礼金

礼金(れいきん)とは,契約を締結するにあたって,賃借人から賃貸人に対して,その名の通り「謝礼」的な意味で支払われる金銭のことをいいます。礼金は,敷金とは違い,支払った金額が後から戻ってくることはありませんので,契約にあたって支出した金額をそのまま費用として処理します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
謝礼金(支払礼金)200,000普通預金200,000

仲介手数料

仲介手数料とは,賃借人が賃借する物件を探すにあたって不動産業者に仲介を依頼した場合に,その不動産業者に対して支払う金銭のことを言います。賃貸人に対して支払われる礼金と同じように,仲介手数料も後から返ってくることはありませんので,契約にあたって支出した金額をそのまま費用として処理します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
支払手数料200,000普通預金200,000

家賃

家賃を支払ったときは,費用の勘定である支払家賃勘定に記録を行います。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
支払家賃100,000普通預金100,000

なお,契約時には数カ月分の家賃をまとめて支払うことが一般的ですが,この金額のなかに翌期以降の期間に係る金額が含まれている場合は,決算にあたり,その翌期以降の期間に係る金額を翌期に繰り延べることが必要になります。

以上のことから,不動産を賃借する契約を結んだときの仕訳は,次のようになります。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
差入保証金500,000普通預金1,000,000
謝礼金200,000  
支払手数料200,000  
支払家賃100,000  

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