省令「医療法人会計基準」逐条解説|第7条 貸借対照表の表示

医療法人会計
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省令「医療法人会計基準」第7条では、貸借対照表の表示に関する基本原則について規定されています。

第7条 貸借対照表は、会計年度の末日における全ての資産、負債及び純資産の状況を明瞭に表示しなければならない。
2 貸借対照表は、様式第一号により記載するものとする。

貸借対照表が表示するもの(第1項)

貸借対照表の構成要素

貸借対照表には、資産、負債および純資産の状況が表示されます。この資産、負債および純資産の状況のことを一般に財政状態といいます。「財政」という言葉が使われていますが、財政状態といっても国や地方自治体のような公的期間のお金の状況という意味ではありません。また、財産の状態という説明がされることもありますが、このような説明も正確ではありません。

財政状態という言葉がどのような意味を表しているかを理解するため、貸借対照表に表示される資産、負債、純資産がそれぞれどのように定義されるかを見てみましょう。

  • 資産……法人が将来の活動に利用できる金銭やもの(知的財産権を含む)、および、将来にこれらを受け取る権利
  • 負債……法人が将来の活動のなかで第三者に対して何らかの形で弁済すべき義務
  • 純資産……資産から負債を差し引いた差額

「資産」というと、今、現在保有しているお金やものをイメージする方も多いと思います。しかし、資産はあくまでも「将来利用できるもの」として定義されるため、知的財産権やお金を受け取る権利(金銭債権)も資産の範囲に含まれます。また、現実的にはお金やものはあっても、それが「将来利用できるものではない」と判断されれば、その全部または一部が資産としては認められなくなってしまうこともあります(決済前の振出小切手、除却したもの、減損したと判断されるものなど)。

資産として「将来」を考慮した以上、その資産のマイナス分についても考慮しないとバランスを欠きます。それが負債です。未収金や借入金が代表的ですが、これらを「財産」と考える人はいないでしょう。しかし、将来のお金やものにマイナスの影響が出る以上、プラスの影響が出る資産と同様に、貸借対照表に計上して「表に出す」必要があります。

純資産は、資産と負債の差額です。株式会社の場合は拘束すべき金額が資本金や準備金として表示されるため、純資産にどのような項目が記載されるかも重要になりますが、医療法人の場合はそのような規定がないため、基金制度が採用されている法人を除いては、細かな項目が開示されることに株式会社ほどの重要性はないと考えられます。

会計期間の末日の状況

医療法人の会計期間は、原則として、毎年、4月1日から翌3月31日までの1年間となりますが、定款または寄附行為に定めがある場合はこれとは別の期間とすることもできる(「医療法」第53条)ため、「会計期間の末日」が具体的に何月何日になるかは医療法人次第となります。なお、「法人税法」上、会計期間の長さが1年を超える場合は、1年ごとに区切って申告を行うことが求められることになります(「法人税法」第13条)。課税所得、納税すべき金額の計算は、社員総会・評議員会によって確定された決算結果をもとに行うこととされているため、会計期間の長さもこれにあわせて1年とされることが一般的のようです。

なお、会計期間の末日の状況を確認するために、会計期間終了後に行った手続の結果は、もともとの会計期間の貸借対照表に反映させる必要があります。たとえば、毎年1月1日から12月31日までを会計期間としている医療法人が、2022年12月31日における預金口座の状況を確認するため、2023年1月4日に残高照会を行ったとします。残高照会を行ったのは新しい会計期間(2023年)に入ってからですが、確認の対象が2022年末の預金口座の状況である以上、その結果は、2022年末の貸借対照表に反映させなければなりません。

明瞭な表示

会計期間の末日における資産、負債、純資産の状況は、貸借対照表上、明瞭に表示されなければなりません。省令「医療法人会計基準」では、この「明瞭な表示」について、次の第2項において貸借対照表の様式が与えられているため、基本的にはこの様式にしたがっていれば問題ありません。

貸借対照表の様式(第2項)

医療法人の貸借対照表は、様式第一号によって作成される必要があります。

脚注1では、貸借対照表に表示する項目(資産、負債、純資産の内訳)の削除や追加が認められています。

医療法人が実際に作成している財務諸表のなかには、該当する金額がない項目について、金額0で表示が行われているものも見られますが、このような項目については、金額を0にするのではなく、項目自体を削ってしまった方が、余計な情報がないので貸借対照表の利用者にとって「明瞭な」表示となります。

会計期間ごとに項目を削ったり、戻したりすると、毎年項目を見直すことになったり、記載すべき項目(前期は金額0であったが、当期は金額0でない項目)を戻し忘れたりということがあるため、作業の手間・確認の手間を余計にかけないために、金額0表示をするという考え方もあるのかなとは思います。

しかし、省令「医療法人会計基準」が比較的大規模の医療法人を適用対象としていること、もともとこの基準が保険診療等を通じて比較的多額の公費を受けて事業が行われている法人について、その経営実態を広く認知・理解してもらうことを目的として起草されたことと鑑みれば、「手間」といった内部的都合ではなく、利用者にとっての明瞭性を意識することが大切です。

脚注2および3において、そもそも基金制度を採用することができない社会医療法人、特定医療法人、経過措置型医療法人について、基金の科目を削除することが求められていることは、このような金額0表示が省令「医療法人会計基準」において望ましくないと考えられていることを示す根拠の1つといえるでしょう。

一方、様式第一号に規定されていない項目を追加する場合は、それがどのような金額を表すものなのか、医療法人について一般的な知見をもつ人であれば誰でも理解できるような項目名をつける必要があります。項目名だけで理解を得ることが難しそうであれば、その項目に注記をつけて、貸借対照表の枠外でその内容を説明することも必要になるかもしれません。

なお、資産、負債、純資産のいずれにおいても、ただ項目を列挙するだけでなく、同じような性格のものをグルーピングすることが必要になります。このグルーピングについては、第8条において具体的に説明されます。

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