減価償却の仕訳(直接法と間接法)

簿記事業用資産決算整理
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決算にあたって行われる減価償却の仕訳の方法には、直接法と間接法の2つがあります。直接法は、各期の減価償却費の額を、建物、備品などの有形固定資産の勘定から直接控除する方法です。これに対して、間接法は、各期の減価償却費の額を、有形固定資産の勘定から直接控除する代わりに、減価償却累計額勘定という特別の勘定に積み上げていく方法です。

なお、直接法と間接法は仕訳の方法が異なるだけなので、減価償却費の計算方法や計算結果(減価償却費の額)に違いはありません。両者に違いが出るのは、減価償却累計額勘定の有無と、有形固定資産の勘定の残高金額の2つになります。

直接法による処理

直接法は、決算にあたって計上される減価償却費の額を有形固定資産の勘定から直接控除する方法です。

有形固定資産の勘定には、有形固定資産を取得したときに、その取得に要した金額(取得原価)が記録されています。直接法では、ここから各期の減価償却費の額を控除していくので、有形固定資産の勘定の残高金額は、まだ各期の費用となっていない金額(未償却残高)、すなわち、将来の会計期間中に費用として処理される金額を意味することになります。直接法は、これからどれだけの金額が費用になるか、いいかえれば、どれだけの収益をあげる必要があるのかを明らかにすることが意識された処理方法であるといえます。

現在の簿記では、原則として、取得原価主義に基づく記録が行われています。減価償却は、あくまでも各期の費用として計上すべき金額を計算するために行うものという位置づけになります。したがって、未償却残高の意味は費用との関係で考えるべきものであり、その有形固定資産の価値とは関係ありません。

【設例1】決算にあたり、当期首に当社が取得した備品(取得原価3,000,000円)について、当期分の減価償却費600,000円を計上する。なお、減価償却の仕訳は、直接法によること。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
減価償却費600,000備品600,000

この場合、この備品について、貸借対照表、損益計算書に計上される金額は、次のようになります。また、備品の未償却残高は、備品勘定の残高金額である2,400,000円となります。

貸借対照表損益計算書
備品減価償却費
2,400,000600,000

間接法による処理

間接法は、決算にあたって計上される減価償却費の額を減価償却累計額勘定に積み上げていく方法です。

間接法では、各期の減価償却費の額が減価償却累計額勘定に計上されるため、減価償却を行った後も有形固定資産の勘定には取得原価がそのまま維持されます。間接法で仕訳を行っている場合、有形固定資産の勘定から金額が減らされるのは、基本的に、その有形固定資産を売却、廃棄等するとき(有形固定資産の使用をやめたとき)になります。したがって、間接法は、有形固定資産の取得原価を会計帳簿上に記録に残しておくことを重視した処理方法であるといえます。

なお、間接法で仕訳を行っている場合、有形固定資産の未償却残高は、その有形固定資産の勘定に計上されている取得原価から減価償却累計額勘定の残高金額を控除することによって求められます。直接法で仕訳を行っている場合とは違い、特定の勘定から直接未償却残高を求めることはできません。

【設例2】決算にあたり、当期首に当社が取得した備品(取得原価3,000,000円)について、当期分の減価償却費600,000円を計上する。なお、減価償却の仕訳は、間接法によること。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
減価償却費600,000減価償却累計額600,000

この場合、この備品について、貸借対照表、損益計算書に計上される金額は、次のようになります。また、備品の未償却残高は、備品3,000,000円から減価償却累計額600,000円を控除した2,400,000円となります。

貸借対照表損益計算書
備品減価償却累計額減価償却費
3,000,000600,000600,000

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