貸付金の利息に係る収益の繰延べ(収益認識会計基準の例外)

簿記収益・費用決算整理
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複数の会計期間にまたがって役務の提供を行う取引において,その対価をその契約時等に受け取っている場合には,これまで,いったんその全額を収益の額に計上しておき,期末に次期以降の期間に対応する部分の金額を繰り延べるという作業という処理が行われてきました(収益の繰り延べ)が,このような処理方法は,企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」の施行により,原則として廃止されることになりました。

しかし,金融商品に係る取引やリース取引のような金融取引に係るものについては,この「収益認識に関する会計基準」の対象外の取引とされており,従前どおりの繰延処理が行われることになります(「収益認識に関する会計基準」第3項,第103項)。今回の記事では,金融商品のひとつである貸付金に係る利息について見ていきます。

(当期中)利息を受け取ったとき

貸付けを行ったときにその貸付けに係る利息を受け取っている場合(貸付金額から差し引かれることが一般的)には,その金額を収益の勘定である受取利息勘定に記録します。

【取引】7月1日,取引先に100,000円を1年間貸し付けることにし,1年分の利息12,000円を差し引いた88,000円を現金で渡した。なお,当社の会計期間は,毎年4月1日から3月31日までの1年間である。

利息として12,000円を受け取っていますので(天引きの場合は,いったん100,000円を貸し付けて,利息12,000円を支払ったもらったと考える),この金額を受取利息勘定に記録します。収益の勘定ですから,その記録は貸方に行います。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
貸付金100,000受取利息12,000
  現金88,000

期中の仕訳では,繰延べのことを考える必要はありません。受け取った(差し引いた)金額をそのまま収益の勘定に記録すればOKです。

(当期末)収益の繰延べ

決算にあたっては,期間損益計算を適切に行うため,当期の収益でない部分(次期以降の機関に対応する部分の金額)を収益の勘定から取り除くことが必要になります。これが収益の繰延べです。

さきほどの問題をもう一度見てください。「会計期間は毎年4月1日から3月31日まで」とあります。これに対して,お金を貸し付ける期間は「7月1日から6月30日まで」ですから,このうち4月1日から6月30日までの3ヶ月分については,当期の費用から取り除く必要があります。

月割計算

当期中に収益の勘定に計上した金額から,当期の収益でない部分を取り除くときには,月割計算という作業を行います。月割計算とは,当期分のものと,そうでないものを月単位で計算していくという按分方法です。

さきほどの問題で,7月1日に受け取った利息120,000円は12ヶ月分の金額です。このうち,当期分でないのは,4月1日から6月30日までの3ヶ月分ですから,当期の費用から取り除く金額は,次のように計算できます。

  • 120,000円÷12ヶ月=10,000円(1ヶ月分の家賃)
  • 10,000円×3ヶ月=3,000円(3ヶ月分の家賃)

収益の勘定に計上していた金額を減らす

受取利息勘定は収益の勘定ですから,この金額を減らすとき借方に記録を行います。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
受取利息3,000  

繰延額を前受収益として計上する

このような調整は,翌期分の収益を翌期になるけ取ったために発生したものなので,空いている借方は前受収益勘定とします。

利息を事前に受け取っているので,翌期になっても,この受取済の利息については受け取ることができません。将来に経済的な損失があるのですから,前受収益勘定は負債の勘定になります。なお,このような取引期間と会計期間のズレを調整するために使われる勘定のことを経過勘定ということもあります。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
受取利息3,000前受収益3,000

前受収益勘定に代えて,前受利息勘定を使用することもあります。しかし,この場合,「受取」と「前受」が同じ「利息」の冠として使われるため,とりわけ簿記の学習を始めたばかりの人にとっては混乱を産んでしまいがちです。はじめのうちは,前受収益勘定などを使って,収益の勘定と経過勘定の区別がつきやすいようにしておいたほうがよいでしょう。

(翌期首)再振替仕訳

翌期(この問題の場合は4月1日)になったら,再振替仕訳という作業を行います。再振替仕訳とは,前期末に行った繰延べの仕訳を元の状態に戻すための仕訳になります。

前受収益勘定の記録を取り消す

まず,さきほど計上した前受収益勘定の記録を取り消すための仕訳を行います。会計期間が変わって,もう「前受」の状態ではなくなりましたから,「前受収益」勘定の記録を残しておく必要もないのです。前受収益勘定は負債の勘定ですから,その記録を取り消すときは借方に記録を行います。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
前受収益3,000  

収益の勘定に振り替える

前期末に前受収益勘定に計上した金額(4月1日から6月30日までの金額)は,会計期間が変わって当期の収益になりますから,再び収益の勘定の記録に復活させてあげます。収益の勘定ですから,その記録は借方に行います。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
前受収益3,000受取利息3,000

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