先入先出法による商品の期末棚卸高の計算

簿記決算整理
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商品売買取引について、商品が増減するたびに商品勘定の残高を増減させる処理方法(売上原価対立法、分記法など)を採用していない企業では、決算にあたって、売上原価を計算するために商品の期末棚卸高を計算する必要があります。

商品の期末棚卸高は、その企業が、商品の払出単価をどのように計算しているかによって決まります。期末に払い出されなかった商品(期末に売れ残っている商品等)が期末棚卸高となりますから、商品の払出単価が決まれば、自動的に期末棚卸高も決まるわけです。

商品の払出単価の計算方法にはいくつかの方法がありますが、この記事では、商品の払出単価を先入先出法で行っている場合の期末棚卸高の計算について説明していきます。

先入先出法とは

先入先出法(first in first out method)とは、先に仕入れた商品から順に払い出すと仮定して、払出単価の計算を行う方法をいいます。

先入先出法によれば、商品の期末棚卸高は、その商品の期末時の価額に近いものとなります。先に仕入れた商品から順に払い出すと仮定するので、期末に残っているものは、自動的に、後から仕入れたものとなるからです。

先入先出法による場合は、商品を仕入れた月日、個数、金額を継続して記録していなければなりません。いつ仕入れたかが分からなければ、どれが先に仕入れた商品で、どれが後から仕入れた商品か分かりません。また、個数や金額が分からなければ、それをいくらで評価したらよいか分からなくなってしまいます。

これらの記録は、どの会計帳簿に行われていても構いません。仕入帳であっても、商品有高帳であっても問題はありません。また、会計帳簿への記録が行われていなくても、商品を仕入れた際に受け取る納品書などの証憑であったとしても構いません。ただし、この場合は、何らかの形で商品の仕入れにあたって発生した付随費用が分かるようにしておく必要があります。付随費用が分からなければ、商品の取得原価を正しく計算することができないからです。

設例

新しく仕入れた商品から順に遡って計算する

先入先出法では、まず、期末商品の数を確認したうえで、新しく仕入れた商品(会計期間中、最後に仕入れた商品)から順にさかのぼっていく形で、その金額を計算します。

【資料】
1. 期末直前における商品の仕入れの状況
…… これ以前の仕入の状況は省略 ……
3月10日20個19,000円(単位取得原価:950円)
25日30個30,000円(単位取得原価:1,000円)

2. 期末における商品の数は40個であった。

商品の仕入れの状況や商品の数が上のようになっていた場合、商品の期末棚卸高は次のように計算されます。

  1. 最も新しく仕入れた商品(3月25日)
    • 30個 30,000円
  2. 次に新しく仕入れた商品(3月10日)
    • 10個(期末商品の数40個-3/25仕入分30個)
    • 10個×単位取得原価950円=9,500円
  3. 合計
    • 30,000円+9,500円=39,500円

期末における商品の数

この「期末における商品の数」として何を使うかは、会計期間中に商品の出入りを継続的に記録しているか(出入りのたびにその数を記録しているか)どうかによって変わります。

商品の仕入数量、売上数量を継続的に記録している場合

商品有高帳などを使って、商品の仕入数量、売上数量を継続的に記録している場合は、それらの記録をもとに算出した期末商品の数(帳簿棚卸数量)を使って期末帳簿残高を計算します。

決算にあたって、実際に商品を数えて期末の数量(実地棚卸数量)を確認することも行いますが、売上原価の計算に直接この数量を使用することはしません。

商品の仕入数量、売上数量を継続的に記録していない場合(実地棚卸のみ行う場合)

一方、商品の仕入数量、売上数量を継続的に記録していない場合は、決算にあたって、実際に商品を数えて期末の数量(実地棚卸数量)を確認することになります。

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