残高試算表上の記録の流れ②(費用性資産の費消)

簿記の考え方簿記商品売買
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複式簿記では、取引をその取引によって生じた財産の動きとその理由とに分けて記録されていきます。このため、複式簿記上の記録は、すべて「何が、どうなった」という因果関係をもとに関連づけていくことができます。このような記録のつながりは、各勘定の残高が1つにまとめられた残高試算表上の金額の動きをみるとよくわかります。

この記事では、資産を購入してから、その資産が費用化していく一連の流れがどのように記録されていくかを見ていきましょう。はじめに次の図(アニメーション)を見て、おおまかなイメージをつかんでください。

試算表上の記録の動き(費用性資産)

費用性資産とは

企業は利益を稼ぐ(儲ける)ために活動しています。お金はただ放っておくだけでは1円も増えませんので、利益を稼ぐためには、そのお金を動かす必要があります。

お金は使えばなくなってしまうのですが、簿記では、お金を使ったからといって、それをただちに費用として計上するわけではありません。費用は、企業の財産(純資産)が企業から失われたときに計上されます。このため、お金を使った場合であっても、企業のなかにそのお金の代わりとなる財産が残っていると判断されるときは、費用は計上されないのです。

この「お金の代わりとなる財産」にはさまざまなものがあります。さきほどの図(アニメーション)にあげた商品、備品、特許権等はその代表例です。商品や備品のような目に見える財産だけでなく、特許権のような目に見えない財産も「お金の代わりとなる財産」となることに注意してください。重要なのは、目に見えるかどうかではなく、「まだ企業から失われていない=まだ使える状態」にあるかどうかです。簿記では、この「まだ企業から失われていない=まだ使える状態」にあるものは、費用ではなく資産として処理することになっています。

なお、これらの資産は、企業から失われたとき=企業がもう使えなくなったときに費用として計上されます。将来的に費用となる資産という意味で、これらの資産のことを費用性資産ということもあります。費用性資産は、現金・預金等の貨幣性資産(お金)と費用との間に位置する中間的な存在だとイメージするとよいでしょう。

商品の費消(販売時に一括費用計上)

商品を購入したときは、その商品が販売されるまでの間は資産として計上しておき、その商品を販売したタイミング(企業が手放したタイミング)で費用として計上するというのが、財産の動きに対応した記録の流れになります。以下では、商品売買取引の仕訳を売上原価対立法で行っていると仮定して、商品に係る一連の記録の流れを見ていきましょう。

まず、商品を仕入れたときは、その仕入れた商品を資産として計上します。仕入れた商品は、それが販売されるまでの間、企業に残っていますから(まだ使える状態)、費用ではなく資産として計上しなければなりません。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
商品50,000現金50,000

この資産の勘定(商品勘定)に計上した金額は、その後、その商品を販売したときに費用の勘定(売上原価勘定)として計上します。通常、商品は、販売時にそのすべてを顧客に引き渡しますから(ここでは、「今日は外箱だけ渡しておき、中身は明日渡す」といったような特殊なケースは無視します)、商品勘定に計上した金額は、販売時にまとめて費用の勘定に振り替えられることになります。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
売上原価50,000商品50,000

これら2つの仕訳を残高試算表上で見てみると、次のようになります。取引が進むにつれて、簿記上の記録が下の方に移動していくことがみてとれるでしょう。

試算表上の記録の動き(商品)

なお、商品売買取引を仕訳する方法にはいくつかのものがあり、そのなかには三分法のように商品の仕入時から(販売を待たずに)費用として計上する方法もありますが、このような実際の財産の動きと簿記上の記録がズレるケースについては、別の記事で説明します。

備品・特許権の費消(時の経過に応じて費用計上)

備品や特許権のような長期間にわたって使用される資産(固定資産)についても、基本的な考え方は同じです。しかし、今日の簿記では、期間損益計算を行うことが求められているため、資産が1年を超えて使用されるからといって、その使用が終わるまで費用を計上しないままでおくといったことは認められません(参照 減価償却の意義)。このため、固定資産については、会計期間ごとに少しずつ費用計上が進められていくことになります。

固定資産を取得したときの仕訳は、商品を仕入れたときの仕訳と同じです。取得した固定資産は、それらが使えなくなるまでの間、企業に残っていますから(まだ使える状態)、費用ではなく資産として計上しなければなりません。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
備品50,000現金50,000

この資産の勘定(備品勘定)に計上した金額は、会計期間が終わるごとに(決算日のたびに)、少しずつ費用の勘定に振り替えていきます。この費用に振り替えていく作業のことを、有形固定資産の場合は減価償却(depreciation)、無形固定資産の場合は償却(amotrization)といいます。名前は違いますがやることは同じです。毎期、一定の方法で計算された金額が、その期の費用として計上されていきます。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
減価償却費10,000備品10,000

減価償却費を計上するための仕訳には、資産の帳簿価額を直接減少させる直接法以外にも、減価償却累計額を使って毎期の減価償却費の額を積み上げていく間接法がありますが、資産と費用の関係をより分かりやすくするため、ここでは直接法を使って説明しています。

これら2つの仕訳を残高試算表上で見てみると、次のようになります。さきほどの商品のときと同じように、取引が進むにつれて、簿記上の記録が下の方に移動していくことがみてとれるでしょう。商品のときとの違いは、資産から費用への振り替えが、1度にまとめてではなく、段階的に行われているところです。

試算表上の記録の動き(備品)

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