残高試算表上の記録の流れ③(取得時に費用として計上されるケース)

簿記の考え方簿記
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複式簿記では、取引をその取引によって生じた財産の動きとその理由とに分けて記録されていきます。このため、複式簿記上の記録は、すべて「何が、どうなった」という因果関係をもとに関連づけていくことができます。このような記録のつながりは、各勘定の残高が1つにまとめられた残高試算表上の金額の動きをみるとよくわかります。

商品、消耗品等の資産に係る記録は、その取得時に資産として計上し、その後、それらが企業から失われたときに費用に振り替えるという形が基本となりますが、今日の簿記では、その取得時に費用として計上してしまい、決算のタイミングで未消費分を資産に振り替えるという流れで記録が行われるものもあります。今回は、そのような通常とは逆の流れで記録が行われていく資産について見ていきましょう。

この記事で紹介するのは、下の図(アニメーション)の右側に示した記録の流れになります。

試算表上の記録の流れ(費用先行計上)

なお、財産の動きと対応するように記録していく方法(左側)については、別の記事で説明していますので、そちらもあわせて確認すると理解を深めることができるでしょう。

取得時に費用として計上する方法が認められる理由

企業外部の人々は、通常、企業が作成している会計帳簿(仕訳帳、総勘定元帳等)を直接確認することはできません。多くの人は、企業の財務状況を知るためには、財務諸表を見るしかないのです。これは逆にいえば、財務諸表さえ適切に作成されていれば、企業外部の人々にとっては、どのような会計処理が行われていても特段の問題はないということを意味します。

商品や消耗品は、通常、必要に応じて随時購入されるものであり、企業のなかに長期間にわたってストックされているということはありません。保存する場所も必要ですし、それらを管理する費用も掛かってしまいます。また、商品の場合は、時間が経つにつれて劣化したり、旧式化(新しい上位互換のモデルが発売されてしまう)といったこともあるでしょう。このため、商品や消耗品については、そのつど取得されていくというのが一般的なのです。

財務諸表は、通常、会計期間が終了したタイミング(1年に1回)しか作成されません。多くの商品や消耗品は、期中に取得されていても、同じ会計期間内に消費されてしまっているので、わざわざその取得時に資産として計上したとしても、そのほとんどは費用として財務諸表上に計上されることになります(財務諸表が作成されるまでに、取得した商品・消耗品のほとんどは資産ではなくなっている)。

企業外部の人々は会計帳簿を見ることができないのですから、取得した商品や消耗品をいったん資産として計上していたとしても、その記録が企業外部の人は知る由もありません。このような理由から、取得した商品や消耗品を資産に計上せずに、いきなり費用に計上してしまっても問題はないとされています。このようにすることで、簿記上の記録を1ステップ省略することが可能になります。

期末に未使用・未消費分を費用の勘定から資産の勘定に振り替える

ただし、財務諸表が作成される期末の時点で、取得した商品や消耗品のうち、まだ販売・消費されていないものがある場合は、取得時に行った費用の記録をそのまま残しておくわけにはいきません。実際には、商品や消耗品が企業のなかに残っているのに、それらを資産として計上していないということでは、財務諸表がその企業の実態に反したものになってしまうからです。

このため、期末にまだ販売・消費されていない商品や消耗品がある場合は、その金額をそれらの取得時に計上した費用の勘定から資産の勘定に振り替えることが必要になります。このようにすることで、費用の勘定に記録されている金額は実際に企業の手を離れたものだけになり、資産の勘定にもその未使用・未消費額を計上することができます。

その結果、取得時に資産の勘定に計上し、その販売・消費時に費用の勘定に振り替える方法で記録を行った場合と同じ結果を得ることができます。下の図(アニメーション・冒頭のものと同じ)で期末と表示されているタイミングの記録がどちらの方法でも同じになっていることを確認してください。

試算表上の記録の流れ(費用先行計上)

消耗品の特例

なお、企業外部の人々がその企業について判断を行ううえで重要でない消耗品については、たとえ期末において未使用のものがあったとしても、資産の勘定に振り替えない(費用のままにしておく)ことが認められています。

さきほど取得時に費用の勘定に計上することが認められる理由のなかで、企業外部の人々が出てきたことを思い出してください。ある特定の会計処理が認められるかどうかは、企業外部の人々がその企業についての判断(投資、融資、取引、就職・転職など)を行ううえで意味があるかどうかにかかっています。

たとえば、年間売上高が100,000,000,000円(1000億円)ある企業について判断するときに、1本100円のボールペンが何本あるかといった情報は、はっきり言ってどうでもいい情報でしょう。このような重要性の乏しいものについては、重要でない情報として厳密な方法(未使用分を資産に振り替える方法)をとらなくてもよいことにしているのです。

したがって、このようなケースでは、未使用分の金額だけ厳密な方法で会計処理を行った場合とそうでない場合とで財務諸表上の金額が異なることになります。ほとんど無視してよいような微々たる金額ではありますが。

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