従業員に対して給料や各種の手当を支払うにあたっては、その給料・手当の金額から、社会保険料および従業員の所得に対して課される税(所得税・住民税)に相当する金額を天引きする必要があります。この記事では、社会保険料の処理についてみていきます。
社会保険料とは、健康保険、介護保険(40歳以上のみ)、年金保険、雇用保険(失業等給付、育児休業給付)および労災保険に係る保険料のことをいい、このうち、労災保険以外の4種の保険料が従業員の給料から天引きされます。ただし、いずれの保険料も労使(雇用側と従業員)とで支払いを分担することとされており、健康保険、介護保険および年金保険については労使折半(半額ずつ負担)、雇用保険は雇用側2:従業員1の割合となっています。
社会保険料が記録される勘定
従業員預り金・従業員立替金
従業員の給料手当に係る社会保険料のうち、従業員が負担すべき金額は、従業員預り金勘定または従業員立替金勘定を使って記録します。
従業員に対して給料手当を支払った後(天引きした後)に社会保険料を納付する場合(後払いの場合)は、従業員の給料手当から天引きした金額を従業員預り金勘定に記録します。これは「従業員から預かっている金額」という意味です。従業員の給料手当に係る税金(所得税・住民税)の天引き額と区別するため、従業員預り金勘定に代えて、社会保険料預り金勘定とする場合もあります。従業員の給料手当から天引きした金額は、後日、納付の形で手放さなければなりませんから、その金額が記録される従業員預り金勘定は負債の勘定です。
従業員に対して給料手当を支払うよりも前に社会保険料を納付している場合(前払いしている場合)は、その前払いした金額を従業員立替金勘定に記録します。これは「従業員のために立て替えている金額」という意味です。社会保険料預り金勘定を使用している場合は、これにあわせて社会保険料立替金勘定とする場合もあります。従業員のために立て替えた金額は、後日、従業員の給料手当から天引きの形で回収されるため、その金額が記録される従業員立替金勘定は資産の勘定です。
法定福利費
従業員の給料手当に係る社会保険料のうち、雇用側(企業)が負担すべき金額は、社会保険料を納付したタイミングで法定福利費勘定を使って記録します。法定福利費勘定は、給料勘定(給料手当勘定)と同じく費用の勘定です。
後払いする社会保険料の処理
給料日の処理
給料日が到来したときは、従業員が負担すべき社会保険料の額を天引きし、残りの金額だけを従業員に対して支払います。この従業員の給料手当から天引きした金額は、従業員預り金勘定を使って記録します。
【設例1-1】給料日となり、従業員に対する給料230,000円から、従業員負担の社会保険料30,000円(後日納付するものである)を差し引いた残額を普通預金口座から振り込んだ。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
給料手当 | 230,000 | 従業員預り金 | 30,000 |
普通預金 | 200,000 |
社会保険料を納付したときの処理
その後、納付する金額は、従業員の給料手当から天引きした金額に、雇用側(企業)が負担すべき金額を加えた金額となります。天引きした金額部分については従業員預り金勘定の金額を取り崩し、雇用側の負担分は法定福利費勘定を使って記録します。
【設例1-2】従業員の給料手当から天引きした社会保険料30,000円(【設例2-1】で天引きしたものである)に、当社の負担分30,000円を加えた60,000円を現金で納付した。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
従業員預り金 | 30,000 | 現金 | 60,000 |
法定福利費 | 30,000 |
前払いしている社会保険料の処理
社会保険料を納付したときの処理
社会保険料を納付したときは、従業員が負担すべき金額(後日、従業員の給料手当から天引きする金額)を従業員立替金勘定、雇用側(企業)が負担すべき金額を法定福利費勘定を使って記録します。
【設例2-1】1年分の社会保険料720,000円(うち従業員負担分は360,000円)を現金で納付した。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
従業員立替金 | 360,000 | 現金 | 720,000 |
法定福利費 | 360,000 |
給料日の処理
その後、給料日が到来したときは、前納した社会保険料の額を天引きし、残りの金額だけを従業員に対して支払います。従業員の給料手当から天引きした金額は、前納した際に計上した従業員立替金勘定を取り崩して処理します。
【設例2-2】給料日となり、従業員に対する給料230,000円から、従業員負担の社会保険料30,000円(【設例2-1】で前納したものである)を差し引いた残額を普通預金口座から振り込んだ。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
給料手当 | 230,000 | 従業員立替金 | 30,000 |
普通預金 | 200,000 |
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給料・手当からは、社会保険料だけでなく、従業員の所得に係る所得税・住民税の額をあわせて天引きする必要があります。両者とも、給料日の処理としてセットで理解するようにしてください。
- 給料手当の処理①(社会保険料の前納・後納) この記事
- 給料手当の処理②(所得税・住民税)
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