移動平均法による商品有高帳の記帳①（仕入時・売上時）

この記事では、移動平均法による商品有高帳の記録のうち、商品を仕入れたとき、商品を売り上げたときに行う記録について見ていきます。

移動平均法では、商品を新たに取得するたびに、その取得前に保有していた商品の取得原価と新たに取得した商品の取得原価の合計額を、その取得前に保有していた商品の数量と新たに取得した数量の合計数量で割って、平均単位取得原価を計算します。移動平均法による商品有高帳の作成にあたっては、この平均単位取得原価の計算が何よりも重要になるので、正確に覚えるようにしましょう。

設例

商品を売り上げたときの記録

払出欄

商品を売り上げたときは、商品有高帳の払出欄に、次の3つのものを記録します。

1. 倉庫等から払い出した商品の数量
2. 払出単価
3. 払出金額

商品の払出単価は、売上があった直前の残高欄に記録されている単価をそのまま使用します。商品有高帳は、商品に係る原価の動きを記録する帳簿なので、商品の販売単価を使用してはいけません。直前の取引がどのような取引であっても関係ありません。下には、直前の取引が売上のケースと（18日）、直前の取引が仕入れのケース（27日）を並べていますが、どちらのケースでも、売上があった直前の残高欄に記録されている単価がそのまま使用されています。

商品の払出金額は、商品を払い出した数量に、さきほど記入した払出単価を掛けて計算します。上の例では、それぞれ10×490＝4,900、10×495＝4,950のように計算されます。

残高欄

残高欄には、次の3つのものを記録します。

1. 払出後の商品の数量（在庫数量）
2. 平均単位取得単価【最後に求める】
3. 残高金額

商品の在庫数量は、売上があった直前の残高欄に記録されていた数量から、売上によって払い出した商品の数量（払出欄に記入した数量）を差し引いて計算します。同様に、商品の残高金額も、売上があった直前の残高欄に記録されていた金額から、売上によって払い出した商品の払出金額（払出欄に記入した金額）を差し引いて計算します。

平均単位取得原価は、ここで残高欄に記録した残高金額を在庫数量で割って計算します。下の例において、平均取得単価は、次のように求められます。

• 合計数量：40－10＝30
• 合計金額：19,800－4,950＝14,850
• 平均単位取得原価：14,850÷30＝495

商品を仕入れたときの記録

受入欄

商品を仕入れたときは、商品有高帳の受入欄に、次の3つのものを記録します。

1. 新たに仕入れた商品の数量
2. 単位取得原価【最後に求める】
3. 取得原価

取得原価は、仕入れた商品の金額（購入代価）に、引取運賃等の付随費用を加えた金額です。仕訳を行う場合と同じように、商品有高帳にも取得原価で記録を行います。今回の設例において、9日と20日の取得原価は、それぞれ20×490＋200＝10,000、25×490＋200＝12,450のように求められます。

単位取得原価は、ここで残高欄に記録した取得原価を仕入数量で割って計算します。上の例において、単位取得単価は、それぞれ10,000÷20＝500、12,450÷25＝498のように求められます。どちらも商品自体の購入単価（49円）や付随費用の額（200円）は同じですが、商品1個あたりの付随費用が異なるため、単位取得原価に違いが生じています。単位原価は、問題文の金額をそのまま書き写すのではなく、必ず自分で計算しましょう。

残高欄

残高欄には、次の3つのものを記録します。

1. 仕入後の商品の数量（在庫数量）
2. 平均単位取得単価【最後に求める】
3. 残高金額

商品の在庫数量は、商品を仕入れた直前の残高欄に記録されていた数量に、仕入によって受け入れた商品の数量（受入欄に記入した数量）を加えて計算します。同様に、商品の残高金額も、商品を仕入れた直前の残高欄に記録されていた金額に、仕入によって受け入れた商品の取得原価（受入欄に記入した金額）を加えて計算します。

平均単位取得原価は、ここで残高欄に記録した残高金額を在庫数量で割って計算します。下の例において、平均取得単価は、次のように求められます。

• 合計数量：15＋25＝40
• 合計金額：7,350＋12,450＝19,800
• 平均単位取得原価：19,800÷40＝495