期間損益計算を行うための決算整理仕訳がすべて終わったら、損益振替仕訳と資本振替仕訳の2つからなる決算振替仕訳というものを行います。この一連の仕訳が、会計期間ごとに行われる手続の最後の手続となります。
この記事では、第1の決算振替仕訳である損益振替仕訳について見ていきます。
損益振替仕訳
損益振替仕訳では、収益の勘定、費用の勘定の勘定残高を、すべて損益勘定に振り替えます。これにより、その会計期間の収益の額、費用の額が1つの場所にまとめられ、企業の経営成績を一目で把握できるようになります。
収益の勘定残高の振替
収益の勘定では、通常、貸方残高(借方の合計金額よりも貸方の合計金額の方が大きい状態)になっていますので、その金額を損益勘定に振り替えるときは、
- 収益の勘定の借方に、残高金額(借方と貸方の差額)を追加計上し、勘定残高をゼロにする
- 損益勘定の貸方に、収益の勘定の残高金額を書き写す
という2つの記録を行えばよいことになります。
【設例1】売上勘定の期末残高800,000円を損益勘定に振り替える。
売上勘定は収益の勘定なので、その金額は貸方に記録されています。まず、この売上勘定の残高をゼロにするために、その反対側である借方に売上勘定の記録を行います。そして、その相手勘定(貸方)を損益勘定とします。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
売上 | 800,000 | 損益 | 800,000 |
この仕訳を勘定連絡図の形で示せば、次のようになります。売上勘定の残高(借方と貸方の差額)がゼロになっていることが分かりやすいでしょう。

費用の勘定残高の振替
費用の勘定では、通常、借方残高(借方の合計金額の方が貸方の合計金額よりも大きい状態)になっていますので、その金額を損益勘定に振り替えるときは、
- 費用の勘定の貸方に、残高金額(借方と貸方の差額)を追加計上し、勘定残高をゼロにする
- 損益勘定の借方に、費用の勘定の残高金額を書き写す
という2つの記録を行えばよいことになります。
【設例2】仕入勘定の期末残高350,000円および減価償却費勘定の期末残高200,000円を損益勘定に振り替える。
仕入勘定、減価償却費勘定はともに費用の勘定なので、その金額は借方に記録されています。まず、これらの勘定の残高をゼロにするために、その反対側である貸方に記録を行います。そして、その相手勘定(借方)を損益勘定とします。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
損益 | 350,000 | 仕入 | 350,000 |
損益 | 200,000 | 減価償却費 | 200,000 |
これらの仕訳を勘定連絡図の形で示せば、次のようになります。仕入勘定および減価償却費勘定の残高(借方と貸方の差額)がどちらもゼロになっていることが分かりやすいでしょう。
損益勘定には、その貸方に収益の勘定残高が振り替えられています。今回、費用の勘定残高が振り替えられたことで、損益勘定には、すべての収益・費用の勘定の残高が集まったことになります。

収益・費用の勘定の締切
損益振替仕訳により、収益の勘定、費用の勘定の勘定残高はすべて損益勘定に振り替えられましたから、勘定残高はゼロになっているはずです。最後に、これらの勘定残高がすべてゼロになっていることと確認します。この最後の確認の作業を勘定の締切といいます。
勘定残高は、借方と貸方の差額で計算されますから、借方の合計金額と貸方の合計金額が等しくなっていれば、勘定残高がゼロになっていることを確認できます。そこで、勘定の締切は、次の2つのステップで行います。
- 借方・貸方の合計金額をそれぞれ計算する
- 借方と貸方の合計金額が一致することを確認する
まず、借方・貸方の合計金額をそれぞれ計算します。合計金額を計算するにあたっては、通常の記録と合計金額を区別するために一本線(合計線)をひきます。なお、借方と貸方の記録の数が異なるときは、少ない方の余白に後から記録を付け加えられないために、摘要欄(相手勘定等を記録する部分)に斜線を引きます。
次に、借方・貸方の合計金額を見比べて、両者が一致していたら、それぞれの合計金額の下に二重線(締切線)をひきます。二重線がないのは、「確認がまだ終わっていない」ことを意味するので、両者の一致を確認したら必ず二重線を引いてください。

上では、売上勘定の締め切りだけを示しましたが、その他の収益・費用の勘定についても、同じように締切を行います。
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決算振替仕訳は、損益振替仕訳の後、資本振替仕訳へと続きます。2つの仕訳は必ずこの順番で、セットで行わなければならないものですので、損益振替仕訳が理解できたら、引き続き、資本振替仕訳についても学習してください。
- 損益振替仕訳と収益・費用の勘定の締切 この記事
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