資本振替仕訳と資産・負債・純資産の勘定の締切

簿記決算整理
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この記事では、資本振替仕訳と、貸借対照表に計上される資産・負債・純資産の各勘定の締切についてみていきます。

資本振替仕訳とは、決算振替仕訳のひとつで、収益・費用の各勘定の残高を損益勘定に振り替える損益振替仕訳に続いて行われる仕訳になります。資本振替仕訳は、会社を設立して事業を行っているか、会社を設立せずに個人として事業を行っているかによってその方法が変わりますが、この記事では、会社を設立して事業を行っている場合を前提として説明します。

この記事の内容を理解するために知っておいてほしいこと

資本振替仕訳

資本振替仕訳とは

資本振替仕訳では、損益勘定の勘定残高を、純資産の勘定に振り替えます。会社を設立して事業を行っている場合、損益勘定の勘定残高が振り替えられる純資産の勘定は、繰越利益剰余金勘定となります。

損益勘定の借方には費用の各勘定から振り替えられてきた金額が、貸方には収益の各勘定から振り替えられてきた金額がそれぞれ計上されています。当期の利益または損失(純損益)は、収益と費用の差額として計上されますから、借方と貸方のどちらが大きいかをみれば、損益勘定の残高が純利益と純損失のどちらを意味するかが分かります。

  • 損益勘定が借方残 → 費用>収益 → 残高は純損失
  • 損益勘定は貸方残 → 費用<収益 → 残高は純利益

簿記検定などの資格試験では、損益勘定自体ではなく、純利益・純損失の額だけが問題文に与えられることもあります。借方残・貸方残がそれぞれ純利益・純損失のどちらを意味しているかが分からないと、問題が解けない可能性もありますので、この関係性は正確に理解してください。

収益・費用は、それぞれ純資産の増加理由・減少理由として定義されます。複式簿記では、金額が増えるときは同じ側、金額が減るときは反対側に記録をするのが原則となりますから、損益勘定上、収益は純資産と同じ貸方、費用は純資産の反対の借方に計上されることになります。収益・費用の定義が分かっていれば、貸借対照表上の純資産の場所だけ覚えておくだけで、損益勘定の勘定残高が純利益・純損失のどちらを意味するかを理論的に(丸暗記せずに)導き出すことができます。

損益勘定が借方残(費用>収益、当期純損失)のとき

損益勘定が借方残であるときは、まず、損益勘定の勘定残高をゼロにするために貸方に損益勘定の記録を行い、その反対側の借方を繰越利益剰余金勘定とします。

【設例1】当期純損失の額は300,000円であった。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
繰越利益剰余金300,000損益300,000

この設例では、当期純損失が出ていますので、その金額だけ純資産の額は減少します。純資産は、貸借対照表上、貸方に記載されますから、その金額が減ったときは、その反対の借方に記録を行うことになります。

損益勘定が貸方残(費用<収益、当期純利益)のとき

損益勘定が貸方残であるときは、まず、損益勘定の勘定残高をゼロにするために借方に損益勘定の記録を行い、その反対側の貸方を繰越利益剰余金勘定とします。

【設例2】当期純利益の額は500,000円であった。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
損益500,000繰越利益剰余金500,000

この設例では、当期純利益が出ていますので、その金額だけ純資産の額は増加します。純資産は、貸借対照表上、貸方に記載されますから、その金額が増えたときは、これと同じ貸方に記録を行うことになります。

資産・負債・純資産の勘定の締め切り(英米法)

資産・負債・純資産の勘定の締切には,大陸法とよばれる方法と、英米法とよばれる方法の2つがありますが、ここではより簡便な英米法による締切の方法について見ていきます。

勘定残高がすべて損益勘定に振り替えられてしまう収益・費用の勘定とは違い、資産・負債・純資産の勘定には勘定残高が残っています。この場合、借方・貸方のうち、合計金額が小さい方に、不足する金額を赤字で追加して、借方・貸方の合計金額を一致させます。赤字で記録を行うのは、この金額が取引による増減額を意味するのではなく、あくまでも締切のために記録された金額(他の金額とは違う)ことをはっきりとさせるためです。

不足額を追加することで、借方・貸方の合計金額が一致しますので、あとは収益・費用の各勘定の締切と同じです。すなわち、

  • 借方・貸方の合計金額をそれぞれ計算して、
  • 借方と貸方の合計金額が一致することを確認する

という2つのステップを踏むことで締切が完結します。

繰越利益剰余金勘定の締め切り

たとえば、繰越利益剰余金勘定の締切を行ってみると、上のようになります。

まず、貸方の合計額が3,000,000円ですので、借方にこの金額を計上して、借方・貸方の合計額を一致させます。なお、この金額が次期への繰越額となりますので、金額の横には次期繰越と書きます。

次に、借方・貸方それぞれについて合計金額を計算します。合計線および余った摘要欄の斜線を引くことを忘れないでください。

最後に、借方と貸方の合計金額が一致したことを確認したら、合計額の下に締切線を引けば、繰越利益剰余金勘定の締切は終わりです。

これと同じ作業をすべての資産・負債・純資産の各勘定について行います。

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決算振替仕訳は、必ず損益振替仕訳と資本振替仕訳のセットで行われます。資本振替仕訳の前に行われる損益振替仕訳についても、必ず正確にできるように確認してください。資本振替仕訳は、損益振替仕訳の結果を使って行われるので、損益振替仕訳を正しく行うことができないと、資本振替仕訳も誤ってしまいます。

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