移動平均法による商品有高帳の記帳②(値引時・割戻時)

会計帳簿商品売買
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この記事では、移動平均法による商品有高帳の記録のうち、値引きや割戻しがあったときに行う記録について見ていきます。

値引きとは、いったん商品売買が行われた後、商品の汚損・破損といった問題などが生じた場合に、事後的にその商品の販売代金を減額することをいいます。バーゲンセールやタイムセールや事前交渉(値切りなど)によって、売買が成立する前に販売価格が切り下げられている場合は該当しません。また、割戻しとは、一定期間中に一定の数量または金額を購入した買手に対して、売手が販売奨励・買手との関係強化等のために、事後的に代金の支払いを免除したり、金銭等を交付したりすることをいいます。どちらも、事後的に販売代金が減額される点で共通しています。

値引きや割戻しがあった場合、買手は商品有高帳への記録を行うことが必要ですが、売手は商品有高帳への記録を行う必要がありません。立場によって記録を行うかどうかが変わる点に注意が必要です。

設例

次の甲商品について4月中に行われた一連の取引について、移動平均法により商品有高帳への記録を行いなさい。なお、甲商品の前月繰越高は15,000円(30個×@500円)である。

4月4日売上20個商品1個あたりの販売価格@800円
5日売上値引 4日売上分。値引額2,000円
10日仕入30個商品1個あたりの購入価格@480円、付随費用300円
11日仕入値引 10日仕入分。値引額500円
17日売上15個商品1個あたりの販売価格@800円
20日売上10個商品1個あたりの販売価格@800円
25日仕入30個商品1個あたりの購入価格@485円、付随費用300円
30日仕入割戻 4月中の仕入れに対して900円の割戻しを受けた

商  品  有  高  帳
甲 商 品
摘要受入払出残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
41前月繰越3050015,000   3050015,000
 4売上   2050010,000105005,000
 10仕入3049014,700   40492.519,700
 11仕入値引  △500   4048019,200
 17売上   154807,2002548012,000
 20売上   104804,800154807,200
 25仕入3049514,850   4549022,050
 30仕入割戻  △900   4547021,150

売上値引・売上割戻を行ったときの記録

売手がいったん売り上げた商品について値引きを行ったり、割戻しを行ったりしたときは、商品有高帳への記録を行う必要はありません。商品有高帳は商品の取得原価の動きを記録していく会計帳簿なので、売上金額を減額する売上値引や売上割引は、そもそも記録の対象になりません。

仕入値引・仕入割戻を受けたときの記録

値引きも割戻しも、商品を仕入れた後、事後的に代金(買手にとっての取得原価)が減額される取引であることに変わりはありません。このため、どちらの場合も同じように記録を行うことができます。

受入欄

買手が仕入れた商品について、値引きや割戻しを受けたときは、商品有高帳の受入欄のうち金額欄に、値引や割戻を受けた金額を記録します。

値引きも割引きも仕入れた商品を返品する取引ではありませんから、値引きや割戻しを受けても商品の数量に変化はありません。また、単価は、金額を数量で割って計算されますが、数量がゼロですから、単価の計算を行うことができません。したがって、数量欄、単価欄は空欄となります。

摘要受入払出残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
 25仕入3049514,850   4549022,050
 30仕入割戻  △900   4547021,150

なお、値引きも割戻しも商品の取得原価を減少させる取引ですから、その金額はマイナスになります。そこで、マイナスの金額であることが分かるように、その記入を赤字で行ったり、金額の前にマイナスを意味する△をつけたりします。このとき、一般にマイナスを表すときに使われる「-」は使用しません。見間違えやコピー等で判別しにくくなってしまうことを避けるためです。

商品有高帳は、補助簿として作成されることから、その記録の方法について会計基準などに定めが設けられていることはありません。このため、その記入方法についても企業の裁量が認められています。

値引きや割戻しの記録にあたって、上では受入欄に記録する方法を説明しましたが、書籍やインターネットサイトでは、値引額・割戻額を受入欄ではなく、払出欄に記録する方法で説明されているものもあります。定めがない以上、このような方法も間違いではありません。

日商簿記検定などの資格試験では、解答すべき場所が(   )で指定されていますから、(   )のある場所に解答してください(払出欄に記入する場合は、赤記・△はいずれも必要ありません)

このサイトでは、商品を払い出していない(商品の数量が変化しない)のに、払出欄に記録が行われることに違和感があるため、上のように受入欄に記入する方法で説明しています。

残高欄

残高欄には、次の3つのものを記録します。

  1. 商品の数量(在庫数量)【直前の在庫数量と同じ】
  2. 平均単位取得単価【最後に求める】
  3. 値引・割戻後の残高金額

値引きや割戻しがあったときも、商品を仕入れたときと同じように、平均単位取得原価を計算しなおすことが必要になります。これは、値引きや割戻しによって、平均単位取得原価を計算するための1つの要素である残高金額が変化(減少)するからです。

値引きや割戻しによって商品の在庫数量が変わることはありませんから、数量は値引・割戻直前前の数量を書き写します。一方、商品の残高金額は、値引・割戻直前の残高欄に記録されていた金額から、その値引きや割戻しを受けた金額を差し引いて計算します。 平均単位取得原価は、ここで残高欄に記録した残高金額を在庫数量で割って計算します。下の例において、平均取得単価は、次のように求められます。

  • 合計数量:45(直前の数量と同じ)
  • 値引・割戻後の金額:22,050-900=21,150
  • 平均単位取得原価:21,150÷45=470
摘要受入払出残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
 25仕入3049514,850   4549022,050
 30仕入割戻  △900   4547021,150

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