交際費等の損金不算入

簿記収益・費用
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企業が納める法人税の額は原則として会計上の純損益をもとに計算されますが,課税の公平を図るなどの目的から,一部の項目については会計上の金額が修正されることがあります(「法人税法」第22条)。

この記事においてとりあげる交際費等もその修正項目のひとつで,企業が支出した交際費の額は,原則として損金の額には算入されません(「租税特別措置法」第61条の4)。法人税の額は会計上の純損益をもとに計算されますから,費用である交際費等がそのまま損金として認められれば,それだけ純損益の額は減り,これをもとに計算される法人税の額も減るはずです。しかし,実際には,交際費等の額が損金の額に算入されないため,費用(交際費等)が増えても法人税は減らないということになります。

交際費等の定義

「租税特別措置法」では,交際費等について次のように定めています。

交際費等とは,交際費,接待費,機密費その他の費用で,法人が,その得意先,仕入先その他事業に関係のあるもの等に対する接待,供応,慰安,贈答その他これらに類する行為のために支出するもの(次に掲げる費用のいずれかに該当するものを除く)という。

一 専ら従業員の慰安のために行われる運動会,演芸会,旅行等のために通常要する費用
二 飲食費であって,その支出する金額を飲食等に参加した者の数で除して計算した金額が5,000円以下であるもの
三 カレンダー,手帳,扇子,うちわ,手ぬぐいその他これらに類する物品を贈与するために通常要する費用
四 会議に関連して,茶菓,弁当その他これらに推する飲食物を供与するために通常要する費用
五 新聞,雑誌等の出版物または放送番組を編集するために行われる座談会その他記事の収集のためにまたは放送のための取材に通常要する費用

「租税特別措置法」第61条の4第4項,「租税特別措置法施行令」第37条の5より抜粋

会計上の勘定科目は関係ない

交際費等の損金不算入は,会計上の処理にかかわらず行われるものですから,会計上,どのような勘定科目で処理していたとしても関係ありません。「交際費,接待費,機密費その他の費用」とありますが,これは,どの勘定科目で仕訳していてもこの規定の適用を受ける(損金の額に算入しない)という意味です。

このため,ある費用が交際費等に該当するかどうかは,これに続く「その得意先,仕入先その他事業に関係のあるものに対する接待,供応,慰安,贈答その他これらに類する行為のためにに支出するもの」かどうかによって判断されます。「法人税」では申告納税制度が採用されていますから,ある費用が交際費等に該当するかどうかは企業が責任をもって判断しなければなりません。

税務当局の考え方は,法令,解釈通達などによって公表されており,もし判断に迷ったら税務当局に照会することも考えなければなりません。なお,税務調査があった場合などには,企業がその費用を交際費等とした根拠を企業自ら説明する必要があり,その説明が妥当でないと判断されれば,さかのぼって不足税額を納付することが求められます。

少額の接待飲食費・福利厚生費・会議費・取材費などは除外される

ただし,少額(1人5,000円以下)の接待飲食費,福利厚生費,会議費,取材費などについては,たとえこれらが交際費等の定義に該当するものであったとしても,交際費等として取り扱わないこととされています(「租税特別措置法施行令」第61条の4第4項各号)。これらの費用については,その他の費用と同じように損金の額に算入されます(法人税の課税対象から除外される)。

交際費等として取り扱われる費用について,税務上,すべての交際費が同様に取り扱われるからといって,すべて交際費勘定で仕訳してしまうと,このような除外される金額を計算するときに困ってしまうことになります。このような交際費からの除外対象となるもの,および,次の損金不算入となる金額から控除される接待飲食費については,普段から交際費勘定とは別の勘定を用いて記録しておくと,税額計算の負担(確定申告等)を軽減することができます。

損金不算入額の計算

現在,交際費等のうち接待飲食費(その法人の役員・従業員,これらの親族に対するものを除く)の一部については,例外的に損金不算入となる金額から控除されます。この控除される金額は,企業の規模(資本金・出資金の額)によって変わります。

  1. 資本金・出資金の額が100億円以上……ゼロ(交際費等の全額が損金不算入)
  2. 1.および3.以外……接待飲食費の50%
  3. 資本金・出資金の額が1億円以下……接待飲食費の50%または(800万円×事業年度の月数÷12)

交際費等の総額から,その法人の資本金・出資金の額に応じてそれぞれ定められた接待交際費の額を控除した残りが,法人税額の計算上,損金不算入額として取り扱われる(その分,法人税額算定の基礎となる所得の金額が増える)ことになります。

接待飲食費の一部を交際費等の額から外すこの特例措置は,2014年の消費税率引き上げによる景気悪化を緩和する目的で設けられたものです。しかし,大企業については特例が設けられた後も交際費に大きな変化がなかったことが確認されたことなどから,2020年以降,大企業のなかでも比較的規模の大きな企業については特例の適用対象から外し,原則どおり,交際費等の全額を損金不算入とすることになりました。

交際費等の損金不算入は税効果会計の対象外

会計上,費用として処理された交際費等の額が損金不算入とされることによって,会計上の利益と税務上の所得の金額にズレが生じることになります。しかし,交際費等が損金の額に算入されなかったことによる利益と所得のズレは,将来のどこかの期間で解消されるものではない(永久差異)ため,税効果会計の対象とはなりません

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