現在価値の計算

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投資をすればお金は(基本的に)増えていく

お金は,ただ放っておくだけでは1円も増えませんが,投資をすることで少しずつ増えていきます。たとえば,現金1,000,000円を年利率0.2%(利息1年ごとに支払われ,次の年の元本に追加するものとします[複利])の定期預金に預け入れたとしましょう。この場合,預金の残高は1年ごとに次のように増えていきます(説明の便宜上,利子に対して課される税金は無視します)。

  • 投資額:1,000,000円
  • 1年後:1,000,000円×0.2%=2,000円,1,000,000円+2,000円=1,002,000円
  • 2年後:1,002,000円×0.2%=2,004円,1,002,000円+2,004円=1,004,004円
  • 3年後:1,004,004円×0.2%=2,008円,1,004,004円+2,008円=1,006,012円
  • 4年後:1,006,012円×0.2%=2,012円,1,006,012円+2,012円=1,008,024円
  • 5年後:1,008,024円×0.2%=2,016円,1,008,024円+2,016円=1,010,040円

このように「定期預金に預け入れる」という行動をすることで,現在1,000,000円のお金は5年後には1,010,040円になるわけです。これは定期預金の話で説明しましたが,これは他のものに「投資」をしたときも同じです。何かに「投資」をすれば,その金額は時間の経過とともに変化していくわけです。お金がどれだけ増加するかは,何に「投資」をするかによって変わります。場合によっては,残念ながら時の経過とともに金額が減ってしまう可能性もあります。

将来の目標額を稼ぐためには,今,いくら投資すればいいのか?

それではこれを逆に考えてみましょう。5年後に1,010,040円を得るためには,今,いくら定期預金に預け入れなければならないでしょうか(定期預金の年利率は0.2%とします)。ここまでの話を見てきた人はすぐに答えが出るでしょう。定期預金に預け入れなければならない金額は1,000,000円です。この5年後の1,010,040円を得るために,現在投資しなければならない1,000,000円のことを現在価値(将来の金額をもとに計算した現在の投資額)といいます。

さて,それでは,さきほどのようなヒント(現在から将来への流れ)がなくても現在価値を計算できるように,その計算方法を一般化しておきましょう。

まずは,元本の金額と1年後の金額の関係を整理しましょう

それでは,話を単純にするために,まずは,期間を5年ではなく1年にしぼって考えてみることにしましょう。さきほどの計算(現在の金額から1年後の金額を求める)を思い出してください。

① 1年後の金額は,元本の金額に1年分の利息を加えることで計算できました。

1年後の金額=元本+利息……①

② そして,利息は元本の金額に利率を掛けることで計算できました。

利息=元本×年利率……②

③ ②の利息の計算式を①の利息の部分に代入すると,次のようになります。

1年後の金額=元本+(元本×年利率)……③

④ 元本が2ヶ所に出てきますので,これを1つにまとめましょう。

1年後の金額=(元本×1)+(元本×年利率)
      =元本×(1+年利率)    ……④

この④の式が,1年後の金額と元本(現在の金額)の関係式になります。

次に,2年後の金額です

それではこの続きを行っていきます。1年後の計算式から2年後の計算式を導き出せれば,同じようにすることで3年後,4年後,……の計算式も導き出すことができます。

⑤ 2年後の金額は,1年後の金額に1年分(2年目)の利息を加えることで計算できました。

2年後の金額=1年後の金額+2年目の利息……⑤

⑥ 1年後の金額は,さきほど④で求めましたから,これを⑤の1年後の金額のところに代入することにしましょう。

2年後の金額=(元本×(1+年利率))+2年目の利息……⑥

⑦ 次に,利息についても計算していきましょう。2年目の利息は,元本ではなく1年後の金額に対してつきますので,この点に気をつけてください。

2年後の金額=(元本×(1+年利率))+(1年後の金額×年利率)
      =(元本×(1+年利率))+((元本×(1+年利率))×年利率)……⑦

⑧ 1年後の金額(元本×(1+年利率))が共通して出てきていますので,さきほどと同じようにこの部分を1つにまとめてしまいます。

2年後の金額=((元本×(1+年利率))×1)+((元本×(1+年利率))×年利率)
      =(元本×(1+年利率))×(1+年利率)……⑧

⑨ 掛け算ですから(  )を解いて,次の計算式が最終形になります。

2年後の金額=元本×(1*年利率)×(1+年利率)……⑨

途中複雑でしたが最終形は簡単になりました。「×(1+年利率)」がもう1個増えただけです。このようにすれば,何年後の金額であっても計算できます。n 年後の金額は,元本に(1+年利率)を n回かければ求められるのです。

現在価値を求める計算式

この計算式を利用すれば,将来の金額から現在価値(元本に相当する金額)を求めることができます。等式ですから,両辺に同じ操作をすれば,左辺と右辺の関係性(等しい状態)を維持できます。それでは,式⑨の両辺を(1+年利率)で割ってみましょう。

2年後の金額÷(1+年利率)=元本×(1+年利率)×(1+年利率)÷(1+年利率)
             =元本×(1+年利率)×((1+年利率)÷(1+年利率))
             =元本×(1+年利率)×1
             =元本×(1+年利率)

2÷2=1,3÷3=1のように,同じ数で割るとその数が何であっても答えは1になりますから,(1+年利率)÷(1+年利率)の部分は,1に置き換えることができます。1をかけても数字は変わりませんからこの部分を消すと,(1+年利率)の部分が1つ消えてしまいます。

同じように,もうひとつ(1+年利率)を消してしまいましょう。

2年後の金額÷(1+年利率)÷(1+年利率)=元本×(1+年利率)÷(1+年利率)
                    =元本

これが現在価値を求める計算式になります。2年後の金額を2回(1+年利率)で割ることで現在価値を求めることができます。そして,何年後の金額であっても同じように現在価値を求めることができます。n 年後の金額について現在価値を求めるときは,その金額を n 回(1+年利率)で割ればよいのです。なお,電卓で現在価値を計算するときは,年利率は小数点に直して入力してください。0.2%は0.002になります。

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