省令「医療法人会計基準」逐条解説・貸借対照表(貸借対照表の様式・資産の評価)【まとめ】

研究医療法人会計
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省令「医療法人会計基準」の貸借対照表に係る規定のうち、純資産以外の部分(第7条~第12条)に係る逐条解説のリンク集です。

第7条、第8条では、貸借対照表の様式について、第9条~第12条では貸借対照表に計上される資産の評価について規定されています。貸借対照表の様式については、この基準や厚生労働省に示されている様式にしたがうだけで自動的に遵守できてしまうため、資産の評価(貸借対照表価額の決定方法)に係る規定の方が重要度は高いといえるでしょう。

第7条(貸借対照表の表示)

第7条では、貸借対照表の様式について規定されています。

貸借対照表は、会計年度の末日における資産、負債および純資産の状況を明瞭に表示するものでなければなりません。そこで、貸借対照表では、資産、負債および純資産をそれぞれ別々に列挙して、情報が混在しないように工夫することが必要です。

しかし、この「工夫」を医療法人側がそれぞれ行ってしまうと、比較可能性が損なわれ、都道府県による管理も難しくなることから、「医療法人会計基準」では、具体的な貸借対照表の様式(様式第一号)が与えられています。

第8条(貸借対照表の区分)

第8条では、資産、負債、純資産のそれぞれについて、さらに設けるべき細かな区分について規定されています。

資産の部は流動資産と固定資産に、負債の部は流動負債と固定負債に、純資産の部は出資金、基金、積立金及び評価・換算差額等にそれぞれ区分する必要があります。純資産の部については、医療法人の類型によって採用すべき区分が変わりますが、その詳細については、第13条以降で説明します。

第9条(資産の評価原則)

第9条は、貸借対照表に表示される資産の価額(貸借対照表価額)の原則的な考え方について規定されています。

貸借対照表に計上する資産は、原則として、その取得に際して支出する金額(取得価額)によって評価しなければなりません。これは、まだ確定していない損益(未実現損益)の額を計上しないようにする(活動の成果は一連の活動が終了したときに評価する)ためです。

ただし、「法人税法」との整合性を図る観点から無償取得、低廉取得の場合には、原則として、時価による評価が求められます。

第10条(固定資産の評価)

第10条では、固定資産の貸借対照表価額について規定されています。

固定資産は、複数の会計年度にわたって使用されるものであるため、その取得原価をそれぞれの会計年度に配分する減価償却(無形固定資産の場合は償却)の手続が必要となります。このため、固定資産については、その減価償却の常用が分かるように、固定資産の取得価額から、その作成日前に行った減価償却の額を差し引いた残額(未償却残高)を表示することが基本となります。

第12条では、このほかにも災害等による損失額を認識する強制評価減、収益性の低下を貸借対照表価額に反映させる減損手続が行われた場合の貸借対照表価額についても規定されています。

第11条(有価証券の評価)

第11条は、有価証券の貸借対照表価額について規定されています。

有価証券については、原則として、期末における時価によって評価されます。ただし、医療法人については、ボラティリティの高い有価証券の保有が積極的に認められているわけではないため、時価評価とはいっても、この金額が将来に受け取ることができる金額と大きく乖離することはないでしょう。

第12条(金銭債権の評価)

第12条では、金銭債権の貸借対照表価額について規定されています。

金銭債権については、原則として、取得価額から貸倒引当金の額を控除した残額によって評価します。貸倒引当金の額については、医療法人自身で将来に回収不能となる額を見積もることが原則となりますが、一定の場合には「法人税法」上で認められる繰入限度額をそのまま貸倒引当金の額とすることも認められます。

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