同じ相手と継続的に繰り返し商品売買を行う場合、代金のやりとりを一定期間ごとにまとめて行うことがあります。このような取引形態のことを掛取引といいます。
掛取引では、商品がやりとりされる現場で代金のやりとりを行う必要がないため、代金をやりとりすることによる手間(紙幣・小銭の用意、やりとりする金額に誤りがないかの確認、領収書等の発行・受領、盗難・横領被害を避けるための措置など)を省くことができます。また、複数の店舗を展開している企業では、掛取引にすれば、商品の仕入れに係る代金の支払いを本社(本部)に一元化できるため、各店舗に現金の出納管理を行わせたり、多くのお金を持たせたりする必要もなくなります。
掛取引において必要な処理
掛取引では、掛代金が増減したときに記録を行います。掛代金とは、やりとりされた商品のうち、まだ決済されていないものの代金(後払いとされた代金の未決済額)のことをいいます。掛代金の増減は、次のような場合に起こります。
- 掛代金が増加する場合
- 商品売買取引が行われたとき
- 商品売買代金があとから増額されたとき(当初条件によるもの、ペナルティによるもの)
- 掛代金が減少する場合
- 掛代金が決済されたとき
- 掛代金があとから減額されたとき(値引、割戻しなど)
- 掛代金が消滅したとき(貸倒れ、債権放棄・債務免除など)
掛代金が増加したときの処理
買手側
商品を掛けで仕入れた場合、仕入先(売手側)に対して支払わなければならない金額(債務の額)は、負債の勘定である買掛金勘定に記録します。負債の勘定ですから、その金額が増加したときは貸方に記録を行います。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 20,000 | 買掛金 | 20,000 |
売手側
商品を掛けで売り上げた場合、得意先(買手側)から回収すべき金額(債権の額)は、資産の勘定である売掛金勘定に記録します。資産の勘定ですから、その金額が増加したときは借方に記録を行います。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
売掛金 | 20,000 | 売上 | 20,000 |
掛代金が減少したときの処理
買手側
掛代金を支払ったとき、値引きを受けたときなど、仕入先(売手側)に対して支払わなければならない金額(債務の額)が減少したときは、その金額を買掛金勘定の借方に記録します。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
買掛金 | 20,000 | 現金 | 20,000 |
売手側
掛代金を回収したとき、値引きを行ったときなど、得意先(買手側)から回収すべき金額(債権の額)が減少したときは、その金額を売掛金勘定の貸方に記録します。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 20,000 | 売掛金 | 20,000 |
締日と支払期日
締日とは、売手が買手に対して請求する金額を集計する日のことをいいます。たとえば、「毎月20日締め」(締日が毎月20日)である場合は、毎月20日までに売り上げた商品の代金のうちまだ支払われていない金額が買手に対する請求額となります。
締日と請求書を受け取った日がズレている場合、会計帳簿に記録されている買掛金の額と請求書に記載されている金額がズレることがあります。請求書の内容を確認するにあたっては、それが締日までに行われた取引に係るものである(締日後に行われた商品売買については集計の対象外)であることに注意することが必要です。
支払期日とは、買手が売手に対して支払いを行う期限のことをいいます。通常、請求書が届いてから、支払金額を用意するために一定の期間が設けられます。掛代金(買掛金・売掛金)の減少は、原則として、実際に支払いが行われたときに起こりますから、請求書が届いただけの状態で、買掛金・売掛金の額を減らす記録を行ってはいけません。
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