先入先出法による商品有高帳の記帳①(仕入時と売上時の記録)

簿記会計帳簿商品売買
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この記事では、先入先出法による商品有高帳の記録のうち、商品を仕入れたとき、商品を売り上げたときに行う記録について見ていきます。

先入先出法では、商品を受け入れた順に払い出していきます。このため、商品有高帳には在庫商品をどのような順番で受け入れたのかが分かるように記録を行っていかなければなりません。通常、商品の仕入れは、その商品が売り切れる前に行われますから、在庫商品は、複数の異なるタイミングで仕入れた商品から構成されることが普通です。

先入先出法による商品有高帳の記帳

設例

問題

次の甲商品について4月中に行われた一連の取引について、先入先出法により商品有高帳への記録を行いなさい。なお、甲商品の前月繰越高は14,400円(30個×@480円)である。

4月3日売上10個商品1個あたりの販売価格@800円
9日仕入20個商品1個あたりの購入価格@490円、付随費用200円
12日売上15個商品1個あたりの販売価格@800円
18日売上10個商品1個あたりの販売価格@800円
20日仕入25個商品1個あたりの購入価格@490円、付随費用200円
27日売上10個商品1個あたりの販売価格@800円

解答

商  品  有  高  帳
甲 商 品
摘要受入払出残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
41前月繰越3048014,400   3048014,400
 3売上   104804,800204809,600
 9仕入2050010,000   204809,600
         2050010,000
 12売上   154807,20054802,400
         2050010,000
 18売上   54802,400   
      55002,500155007,500
 20仕入2549812,450   155007,500
         2549812,450
 27売上   105005,00055002,500
         2549812,450

商品を売り上げたときの記録

払出欄

商品を売り上げたときは、商品有高帳の払出欄に、次の3つのものを記録します。

  1. 倉庫等から払い出した商品の数量
  2. 払出単価
  3. 払出金額

商品の払出単価は、売上があった直前の残高欄に記録されている単価をそのまま使用します。商品有高帳は、商品に係る原価の動きを記録する帳簿なので、商品の販売単価を使用してはいけません。直前の取引がどのような取引であっても関係ありません。

直前の残高欄に1時点で仕入れた商品のみが記録されている場合

直前の残高欄に1時点で仕入れた商品のみが記録されている場合は、その残高欄に記録されている単位取得原価を払出欄の単価(払出単価)として使います。下の例では、直前(1日)の残高欄に記録されている単位取得原価が480円ですから、これがそのまま売上時(3日)の払出単価になります。

払出単価が決まったら、これに販売数量を掛けて払出金額を計算します。下の例では、払出金額は10×480=4,800となります。

摘要受入払出残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
41前月繰越3048014,400   3048014,400
 3売上   104804,800204809,600

直前の残高欄に複数の異なる時点で仕入れた商品が記録されている場合

直前の残高欄に複数の異なる時点で仕入れた商品が記録されている場合は、その残高欄に記録されている単位取得原価のうち、上に書かれているものから使用していきます。下の例では、直前(9日)の残高欄に480円、500円の2つの単位取得原価が記録されていますが、このうち上に書かれているのは480円ですから、これが売上時(12日)の払出単価になります。

払出単価が決まったら、これに販売数量を掛けて払出金額を計算します。下の例では、払出金額は15×480=7,200となります。

摘要受入払出残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
 9仕入2050010,000   204809,600
         2050010,000
 12売上   154807,20054802,400
         2050010,000

残高欄の一番上に書かれている数量よりも払出数量の方が多かった場合、その多かった部分については、2番目以降の払出単価を使って記録を行っていきます。

この設例では、18日に商品10個を売り上げています。しかし、直前(12日)の残高欄の1番上に記録されている単位取得原価480円の商品は5個しかありません。この場合、払出単価480円が使えるのはこの5個分だけです残りの5個分については、残高欄で次の行に記録されている単位取得原価500円を、その払出単価として払出欄に記録します。

どちらも払出数量は5個ですが、払出単価が480円、500円と異なっているため、払出金額も2,400円、2,500円と変わってきます。

摘要受入払出残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
 12売上   154807,20054802,400
         2050010,000
 18売上   54802,400   
      55002,500155007,500

残高欄

残高欄には、次の3つのものを記録します。

  1. 払出後の商品の数量(在庫数量)
  2. 単位取得単価
  3. 残高金額

先入先出法では、商品の払出単価を計算するにあたって、その商品を受け入れた順番が重要になるため、異なるタイミングで仕入れた商品が在庫として残っている場合は、その順番が分かるように、仕入れた順に別々の列に分けて記録を行う必要があります。下の商品有高帳では、直前(9日)に20個あった単位取得原価480円の商品が、商品の販売後も(12日)まだ5個残っていますから、残高欄でも、まずはこの5個分の記録を行って、これに続いてそれよりも後に仕入れた単位取得原価500円の商品に関する記録を行います。

摘要受入払出残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
 9仕入2050010,000   204809,600
         2050010,000
 12売上   154807,20054802,400
         2050010,000

商品の払出しによって、先に仕入れた商品のすべてを払い出してしまった場合、それ以降、そのタイミングで仕入れた商品についての記録を行う必要はありません。下の商品有高帳では、18日に単位取得原価480円の商品をすべて払い出してしまったため、この日の残高欄からは単位取得原価480円の商品に関する記録が消えています。残高欄に記録されるのは、まだ販売されていない単位取得原価500円の商品だけです。

摘要受入払出残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
 12売上   154807,20054802,400
         2050010,000
 18売上   54802,400   
      55002,500155007,500

商品を仕入れたときの記録

受入欄

商品を仕入れたときは、商品有高帳の受入欄に、次の3つのものを記録します。

  1. 新たに仕入れた商品の数量
  2. 単位取得原価【最後に求める】
  3. 取得原価

取得原価は、仕入れた商品の金額(購入代価)に、引取運賃等の付随費用を加えた金額です。仕訳を行う場合と同じように、商品有高帳にも取得原価で記録を行います。今回の設例において、9日の取得原価は、20×490+200=10,000のように求められます。

単位取得原価は、ここで残高欄に記録した取得原価を仕入数量で割って計算します。上の例において、単位取得単価は、それぞれ10,000÷20=500のように求められます。

摘要受入払出残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
 9仕入2050010,000   204809,600
         2050010,000

残高欄

残高欄には、次の3つのものを記録します。

  1. 仕入後の商品の数量(在庫数量)
  2. 単位取得単価
  3. 残高金額

先入先出法の場合、残高欄の記録は、①直前の残高欄の記録をもう一度繰り返したうえで、②その下に新たに受け入れた商品に係る受入欄の記録を書き加える形で行います。下の例では、1行目が直前(3日)の残高欄に記録されている記録を書き写したもの、2行目が新たに仕入れた商品に係る受入欄の記録を書き写したものになります。

摘要受入払出残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
 3売上   104804,800204809,600
 9仕入2050010,000   204809,600
         2050010,000

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