この記事では、当座預金に係る取引の仕訳について見ていきます。当座預金とは、取引先等の資金決済に特化した預金(決済用預金)のことをいいます。普通預金の場合は、金融機関が倒産したときに保護される金額に上限がありますが(元本1000万円まで)、当座預金の場合は全額保護されます。その代わり、当座預金には普通預金のように利息はつきません。
取引先に対する代金等の支払いのために、小切手や手形を振り出すときは、当座預金口座を開設することが必須となります。約束手形については、現在、経済産業省・中小企業庁が廃止の方向で検討を進めているところではありますが、現時点ではまだ残っているものではありますので、簡単に触れておくことにします。
当座預金に係る取引の仕訳のポイント
- 当座預金口座の残高が増えたときは、借方に当座預金勘定の記録を行う。
- 当座預金口座の残高が減ったときは、貸方に当座預金勘定の記録を行う。
- 当座預金勘定の反対側に、当座預金口座の残高が増減した理由を表す勘定を記録する。
当座預金は企業にとって役に立つ財産であり、これが記録される当座預金勘定は資産の勘定になります。したがって、当座預金口座の残高が増えたとき(収入があったとき)は借方に、当座預金口座の残高が減ったとき(支出があったとき)には貸方に当座預金勘定の記録を行います。
当座預金勘定の反対側に記録する勘定(相手勘定)は、当座預金が増減した理由を表す勘定になります。当座預金はさまざまな取引でやりとりされますので、当座預金口座の残高が増減した理由を表す勘定もさまざまです。
当座預金に係る取引の仕訳の例
当座預金口座の開設
【例1-1】当座預金口座を開設し、現金200,000円を預け入れた。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
当座預金 | 200,000 | 現金 | 200,000 |
【例1-2】当座預金口座を開設し、現金200,000円を預け入れた。なお、口座開設手数料10,000円は普通預金口座から引き落とされた。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
当座預金 | 200,000 | 現金 | 200,000 |
支払手数料 | 10,000 | 当座預金 | 10,000 |
現在、地方銀行を中心として、当座預金口座の開設に手数料が請求されることが増えてきました。この場合、当座預金口座を開設する仕訳に加えて、手数料を支払う仕訳を連続して行う必要があります。
上の仕訳例では、当座預金口座に現金を預け入れる仕訳と、手数料を支払う仕訳を別々に行いましたが、次のように仕訳を1つにまとめてしまうこともできます。この場合、当座預金勘定に記録される金額は、当初、預け入れた金額200,000円から手数料10,000円を差し引いた残りの190,000円となります。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
当座預金 | 190,000 | 現金 | 200,000 |
支払手数料 | 10,000 |
当座預金の預け入れ・入金
【例2-1】現金100,000円を当座預金口座に預け入れた。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
当座預金 | 100,000 | 現金 | 100,000 |
【例2-2】当座預金口座に売掛金300,000円が振り込まれた。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
当座預金 | 300,000 | 売掛金 | 300,000 |
当座預金口座の残高が増えたときには、借方に当座預金勘定の記録を行います。当座預金口座については、支払意だけでなく、取引先からの入金口座としても使用されることが一般的なので(支払いだけに使用し、受け取りには使用しないといったことはあまり考えられません)、振り込みによる入金の仕訳も示しておきました。
小切手による支払い
当座預金口座からの出金は、原則として、小切手を使って行います。小切手とは、当座預金口座を開設している金融機関に対して、「この小切手を持参した人に、当座預金口座に預けているお金を支払ってください」ということを依頼するための紙片です。
金融機関は、それが誰であっても「小切手を持参した人」に支払いを行います。自分がお金を引き出したいときは小切手を自分で持っていきますし、他の企業にお金を支払いたいときは小切手をその他の企業に渡して金融機関に持っていってもらいます。自分でお金を引き出すときも小切手が必要となることに注意してください。
簿記では、小切手を振り出したタイミングで当座預金勘定の金額を減らします。他の企業に小切手を振り出したときは、振り出したタイミングと実際に当座預金口座から支払いが行われるタイミング(相手企業が金融機関にその小切手を持っていったタイミング)との間にタイムラグがありますが、そのズレを気にする必要はありません。あくまでも振り出したタイミングで当座預金勘定の金額を減らしてください。
【例3-1】当座預金口座から100,000円を引き出すために小切手を振り出した。引き出したお金は現金で受け取った。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
現金 | 100,000 | 当座預金 | 25,000 |
【例3-2】買掛金200,000円を支払うために、仕入先に小切手を振り出した。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
買掛金 | 200,000 | 当座預金 | 200,000 |
約束手形による支払い
取引先等に対する支払いを行う場合、当座預金口座から支払いが行われるタイミング(支払期日)を指定することができます。この場合は、小切手ではなく、約束手形を振り出します。約束手形とは、「○○月○○日に、△△(取引先)に対して××円を支払います」ということを約束する紙片をいいます。
この場合、約束手形を振り出したタイミングと、実際に当座預金口座から支払いが行われるタイミングがズレますので、小切手のときのように、振り出しと同時に当座預金口座の金額を減らしてしまうと、会計帳簿上記録されている金額と実際の当座預金口座の残高とが大きく乖離してしまいます。
そこで、約束手形の場合は、その振り出しを行ったタイミングでは、いったん、将来の支払期日に支払うことを約束した金額を支払手形勘定に記録しておきます。借り入れを行ったときと同じように、将来の支払額を負債として記録しておくのです。ここで記録された金額は、支払期日に支払いが行われた(=将来の約束がなくなった)タイミングで、当座預金勘定の金額を減らすと同時に消滅させます。
【例4-1】買掛金200,000円を支払うために、仕入先に約束手形を振り出した。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
買掛金 | 200,000 | 支払手形 | 200,000 |
【例4-2】【例4-1】の約束手形について支払期日が到来し、当座預金口座から200,000円が支払われた。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
支払手形 | 200,000 | 当座預金 | 200,000 |
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