売掛金元帳(得意先元帳)による売掛金の管理

簿記会計帳簿債権債務商品売買
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この記事では、売掛金元帳への記録について見ていきます。売掛金元帳とは、売掛金の発生・回収の状況を記録する会計帳簿のことをいいます。商品を掛けで販売している場合、代金の受け取りは、商品を販売するつどではなく、一定期間ごとにまとめて行われます。代金の回収にあたっては、売り手が自ら得意先に対して請求書を発行しなければなりません。したがって、売り手は、どの得意先に対してどれだけの商品を販売し、まだ回収していない金額がどれだけあるのかを正確に記録に残しておかなければなりません。

この目的を達成するために、売掛金元帳では、売掛金の状況が得意先ごとに別々に分けて記録されます。仕訳や転記では、企業全体の財産の状況を把握するために行われるため、売掛金の記録が企業ごとに分けられるということは基本的にありません。しかし、これでは得意先ごとに異なる請求額を管理することができません。このような代金の請求という実務に利用するには、得意先ごとに記録が分けられている売掛金元帳の方が圧倒的に便利です。

得意先ごとの売掛金の状況を仕訳や転記だけで把握する手段がないわけではありません。手作業で会計帳簿を作成している場合は、売掛金勘定を使用する代わりに得意先の名称を勘定として使用する方法がありますし(人名勘定)、会計ソフトなどを使用してコンピュータ上で会計帳簿を作成している場合(電子帳簿の場合)は、補助勘定を使用する方法があります。これらの代替的方法を採用している場合は、売掛金元帳を作成する必要はないでしょう。

この記事の内容を理解するために知っておいてほしいこと

売掛金元帳への記録

売掛金元帳への記録は、次のような形で行われます。

売掛金元帳の記録は、得意先ごとに別々に行われますので、どの得意先に対する売掛金なのかを明らかにするために、まず、冒頭に得意先名(下の例では、□□株式会社)を記載します。

以下では、どの得意先にも共通する記載事項について説明しましょう。

得 意 先 元 帳
□□株式会社
摘要借方貸方借/貸残高
41前月繰越570,000 570,000
 3売上(納品書#6257)56,000 626,000
 7売上(納品書#6281)61,000 687,000
 11売上(納品書#6313)77,000 764,000
 12売上返品(12日販売分) 7,000757,000
 14売上(納品書#6329)40,000 797,000
 153月分回収 570,000227,000
 20売上(納品書#6351)72,000 299,000
 24売上(納品書#6400)55,000 354,000
 27売上(納品書#6412)59,000 413,000
 30売上(納品書#6435)67,000 480,000

月日欄

月日は、売掛金が増減した日付を記録します。基本的には仕訳と同じ日になります。

摘要欄

摘要欄には、売掛金が増減した理由を記録します。商品とともに得意先に送付する納品書番号をあわせて書いておくと、後々、得意先から照会を受けたときに確認がしやすくなります。売掛金元帳はあくまでも売掛金の増減を記録するものですから、どの商品をいくらで何個販売したかといった細かな情報については、売掛金元帳に記載せずに、納品書などの他の書類(証憑)への参照を示しておくだけで十分でしょう。

借方欄・貸方欄

借方欄・貸方欄には、売掛金の増減額を記録します。仕訳や転記で売掛金の記録が行われるのと同じ側に記録を行います。売掛金勘定は資産の勘定ですから、売掛金が増加したときは借方、売掛金が減少したときは貸方に記録を行えばよいことになります。参考までに、4月3日、4月12日、および、4月20日の仕訳を書いてみましょう。仕訳で買掛金勘定の記録が行われている側と、買掛金元帳で金額が記録されている側が同じであることが分かるでしょう。

4月3日

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
売掛金56,000売上56,000

4月12日

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
売上7,000売掛金7,000

4月20日

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
当座預金570,000売掛金570,000

借/貸欄

借/貸欄は、次の残高欄の金額が、借方残高であるか貸方残高であるかを示す欄になります。借方に記録された金額の合計額と、貸方に記録された金額の合計額を比べて、どちらが大きい方の文字(借か貸)を記録します。売掛金勘定は資産の勘定ですので、この欄への記入は、基本的には「借」となります。

残高欄

残高欄には、その仕入先に対する売掛金の残高の額を記録します。この金額は、次の2つの方法で求めることができます。

  1. 直前の残高欄に記録された金額に、借方に記録された金額を加えるか(売掛金が増加したとき)、直前の残高欄に記録された金額から、貸方に記録された金額を差し引く(売掛金が減少したとき)
  2. 借方に記録された金額の合計額から、貸方に記録された金額の合計額を差し引く

ただ、上の計算方法を覚えようとするよりも、売掛金が増えたか、減ったかを考えて直感的に計算してしまった方が間違いはないかもしれません。

売掛金元帳に記録する増減額

売掛金は、商品を売り上げたときに発生するものですが、売掛金の増加額は必ずしも商品の販売金額と一致しません。たとえば、得意先に対する商品の発送費を売り手が立て替えている場合、その立替額も顧客に請求することになるので、商品の販売金額よりも売掛金とする金額(請求額)の方が大きくなってしまいます。

また、売掛金の増加額と、売上勘定に記録される金額も必ずしも一致しません。2021年4月から全面施行された「収益認識に関する会計基準」では、顧客に対して約束したこと(履行義務)をまだ果たしていなかったり、顧客から受け取る対価の額が将来に代わってしまう可能性があったり(変動対価)する場合には、商品の販売金額のすべてを売上とすることができないとされているからです。

売掛金元帳に記録する金額は、あくまでも得意先に対して請求する金額です。商品の販売代金や売上勘定に記入される金額と関係なく、「得意先に対していくら請求しなければならないか」と考えて、記録する金額を決めることが重要になります。

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