現在,財務諸表には,①貸借対照表,②損益計算書,③包括利益計算書(②と③をあわせて損益及び包括利益計算書とする場合もある),④株主資本等変動計算書,⑤キャッシュ・フロー計算書の5つ(損益及び包括利益計算書を入れると6つ)のものがありますが,このうち①貸借対照表と②損益計算書の2つを基本財務諸表といいます。
基本財務諸表は,多くの企業で作成される(青色申告を行う場合は必須)財務諸表ですが,基本財務諸表について知っておくべきポイントはそれだけではありません。それは,期中の取引を記録(仕訳・転記)するためのルールが,これらの基本財務諸表を作る前提で構築されているということです。基本財務諸表について知っておけば,期中の取引の記録(仕訳・転記)がなぜそのようになるのかを理解しやすくなります。
貸借対照表
貸借対照表(バランスシート,B/S)とは,ある時点における企業の財産の状況(財政状態)をまとめたもので,次のように,資産・負債・純資産の3つの要素から構成されます。
貸 借 対 照 表 | |
資 産 | 負 債 |
純 資 産 |
資産
資産は,将来,企業に対して経済的な効果をもたらすもの(将来の経済的便益)をいいます。たとえば,現金や預金は,将来に何か役に立つものやサービスを手に入れることに使えますし,貸付金や売掛金は,将来に現金や預金を企業にもたらすものです。商品は,これを販売することで将来に現金や預金を増やすことに貢献します。また,建物や備品は,自分で保有していることで,仮に自分で保有していなければ支払わなければならなかった家賃やレンタル料を節約できるという意味で経済的な役立ちがあります。
ときどき「簿記は過去のことしかわからない」といったことを言われることがあるですが,必ずしもそうではありません。企業が実際に保有しているものであっても,「将来に使えるものではない」と判断されれば,その一部または全部が資産から外されてしまうこともあります。貸借対照表は,それまでに行われてきた記録を単純に集計しただけのものではなく,将来のことも考えて作成されているのです。
負債
負債は,将来に資産の流出その他の経済的な利益の喪失が予定されていることがらのことをいいます。負債の代表例は借入金です。企業が借り入れを行った場合,将来,そのお金はかならず返済しなければなりません。そのとき,企業の現金や預金(資産)は失われることになります。このような将来に資産を流出させる原因となることがらのことを負債をいいます。負債には,このほかに買掛金,履行債務,資産除去債務などがあります。
純資産
純資産とは,将来の経済的便益である資産から,その将来の減少分である負債を差し引いた残額のことをいいます。通常,資産の方が負債よりも大きな金額となるので純資産はプラスになるのですが,経営状況が非常に悪化しているようなマイナスになることもあります。
純資産はさまざまな理由で増減しますが,このうち企業の営業活動によって増減した金額については,純資産を直接増減させずに,次の損益計算書に計上される収益・費用として記録を行うことになっています。このため,期中に純資産の増減が記録されるのは,株主との間で行われる取引(資本取引)などごく一部です。
損益計算書
損益計算書(P/L)は,一定の期間(通常は会計期間)中に純資産が増減した理由(企業の営業活動にかかわるものに限る)をまとめたものです。損益計算書では,純資産の純増額(増加額から減少額を差し引いた差額)である純利益が計算されるのですが,企業は利益を稼ぐことを目的として活動していることから,損益計算書のことを企業の経営成績を表示する財務表ということもあります。損益計算書は,次のように収益・費用の2つの要素から構成されます。
損 益 計 算 書 | |
費 用 | 収 益 |
収益
収益とは,会計期間中に純資産を増加させた理由(企業の営業活動によるものに限る)をいいます。小売業や卸売業における売上,サービス業における営業収益をはじめ,受取家賃,受取手数料,受取利息などがあります。
費用
費用とは,会計期間中に純資産を減少させた理由(企業の営業活動によるものに限る)をいいます。費用には,売上原価,給料,広告宣伝費,減価償却費,支払家賃,保険料,支払利息などさまざまなものがあります。
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