仕入の計上基準(仕入先出荷基準・受取基準・検収基準)

簿記商品売買
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商品の仕入れにあたって、これをどのタイミングで記録するかについては、いくつかの考え方があります。現代の簿記では、会計期間ごとに財務諸表を作成し、財産の状況や損益の状況を報告しなければなりませんから、この「どのタイミングで記録するか」という話は、商品の仕入れを財務諸表に載せるか(または載せないか)を判断するにあたっての重要なポイントとなります。

この記事では、仕入先出荷基準・受取基準・検収基準という3つの考え方についてみていきます。なお、これらの言葉については、企業によって、また、文献によっても異なるため、言葉自体ではなく、その意味に注目して読み進めていってください。

仕入先出荷基準・受取基準・検収基準

企業は、さまざまな仕入先から商品を仕入れており、また、ほとんどの場合、その数量も少なくはありません。このため、仕入れた商品は、運送業者等に運んでもらうことが一般的です。仕入先出荷基準・受取基準・検収基準という3つの考え方は、この商品を運送してもらうことを前提としたものになります。

仕入先出荷基準とは、仕入先が商品を出荷したとき(運送業者等に商品を引き渡したとき)に、商品の仕入れを認識する方法です。いつ商品を出荷したかは、通常、仕入先が発行する納品書等に記載されていますので、その記載されている日付で記録を行います。

受取基準とは、商品が届いたときに、商品の仕入れを認識する方法です。企業が管理する倉庫等に入荷したときか、店舗等に入荷したときか、どのタイミングを「届いた」と判断するかは、企業がそれぞれ判断します。

検収基準とは、商品が注文通りに届いているか、届いた商品に傷や汚れなどの問題はないかをチェック(検収)し、その結果、商品に問題がないと判断されたときに、その商品を仕入れたものとして記録を行う方法です。

一度、この考え方に基づいて商品の仕入れを記録するということを決めたら、合理的な理由がない限り、その方法を変更してはいけません。商品の仕入れを記録するタイミングをずらすことで、財務諸表上の金額を操作できてしまうからです。

計上基準ごとの記録の違い

商品が届いたときの仕訳

商品が届いたとき

仕入先出荷基準受取基準検収基準
仕入を計上(出荷日)仕入を計上(受取日)処理なし

商品が届いたときの仕訳は、仕入先出荷基準・受取基準を採用している場合のみ行います。仕入先出荷基準か受取基準かによって、仕訳に添える日付が変わりますので注意してください。仕入先出荷基準の場合は仕入先における出荷日、受取基準の場合は当社の受取日となります。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
仕入20,000買掛金20,000

なお、この説明は商品に添えられている納品書から出荷日を読み取る前提で行いましたが、遠隔地から商品を仕入れる場合は、商品が届く前に、仕入先から出荷を行ったことについての連絡を受ける場合があります。この場合、仕入先出荷基準を採用している企業では、商品の受取日ではなく出荷の連絡を受けたときに仕訳を行います。

発送はされたものの届かなかったとき

仕入先出荷基準受取基準検収基準
仕入を計上
仕入を取り消し
処理なし処理なし

一方、運送中の事故等により、仕入れた商品が届かなかった場合は、仕入先か運送業者からその旨の連絡が来ます。この場合も、仕入先は出荷を行っていますので、出荷のタイミングにおける仕入れの記録を行ったうえで、それを取り消す記録を行います。これに対して、受取基準では商品を受け取ることができませんでしたので、商品の仕入れに係る仕訳を行う必要はありません。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
仕入20,000買掛金20,000
(買掛金)(20,000)仕入20,000

仕入れの記録を取り消したときに行われる相手勘定(借方)の記録については、その状況に応じた勘定を使って行います。返品の場合と同じように買掛金が相殺されたときは、上の仕訳のように買掛金勘定を使用しますが、運送会社から損害賠償を受けるといった場合には、未収損害賠償金(金額が決まっている場合)や未決算(金額が決まっていない場合)などの勘定を使って記録します。

商品の検収をしたとき

商品に問題がなかったとき

仕入先出荷基準受取基準検収基準
処理なし処理なし仕入を計上

検収基準を採用している場合、検収の結果、商品に問題がなかったときは、その商品について仕入れの記録を行います。仕入先出荷基準および受取基準については、すでにこの商品の仕入れについての記録が終わっていますから、特に何もする必要はありません。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
仕入20,000買掛金20,000

商品に問題があったとき

仕入先出荷基準受取基準検収基準
値引・返品を計上値引・返品を計上正常品部分のみ計上

検収の結果、商品に問題があった場合には、どの計上基準を採用しているかによって必要な仕訳が変わります。

仕入先出荷基準および受取基準を採用している場合、すでにその商品に問題がないものとして仕入れの記録を行っていますから、その問題がある商品について値引きを受けたり、返品をしたりといった場合は、当初の仕入れの記録を取り消さなければなりません。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
買掛金5,000仕入5,000

一方、検収基準を採用している場合は、まだ商品の仕入れについての記録が行われていませんので、このような取り消しのための記録は必要ありません。その代わりに、値引き・返品後の金額で商品の仕入れを計上します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
仕入15,000買掛金15,000

このように仕入の計上基準としてどの方法を採用しているかによって、商品を仕入れたときだけでなく、運送に問題があったとき、不良品があったときなどの処理も変わってきます。この方法では、いつのタイミングで商品を仕入れたことにするのかを確認し、仕入れの記録は終わっているのか終わっていないのかを明確にイメージするようにして、混乱してしまわないようにしましょう。

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