端数利息の計算

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国債、地方債、社債などの債券を売買したときは、その債券自体の価格や証券会社に対して支払う手数料のほかに、その債券の以前の保有者が受け取るべき利息の受け渡しが必要になります。この債券の以前の保有者が受け取るべき利息のことを端数利息といいます。

なお、端数利息は、額面に対して利息がつかない債券の場合(ゼロクーポン債)、以前の保有者がいなかった場合(新規発行債券を取得した場合)、以前の保有者が受け取るべき利息がない場合(利息計算期間の初日に売買が行われる場合)には生じません。このため、端数利息はすべての債券の売買に生じるものではないので注意してください。

端数利息とは何か

端数利息の受け渡し

債券については、定期的にその発行主体(国、地方自治体、企業など)から利息が支払われます。通常、利息は債券の保有期間に比例して支払われるものですが、債券は原則としていつでも自由に譲渡(売買)することができるので、債券の発行主体は誰がどれだけの期間その債券を保有していたかを把握することができません。このため、債券の発行主体は、すべての債券の保有者が、利息が計算される期間(6か月間、1年間のケースが多い)の最初から最後までその債券を保有していたとみなして、その期間分の利息を全額支払ってきます。

しかし、このままでは、利息の計算期間の途中で債券を売買した場合に問題が生じてしまいます。たとえば、利息の計算期間が4月1日から9月30日までの6か月間で、直近の利払日から3か月後の6月30日にこの債券が売買されたとしましょう。この場合、債券の元々の保有者(売手)も、現在の保有者(買手)も、その債券を3か月ずつ保有していたことになりますが、この債券に係る利息は、現在の保有者(買手)に6か月分支払われてしまいます。債券の元々の保有者(売手)は、その債券の発行主体から利息を一切受け取ることができないのです。

そこで、債券の発行主体の代わりに、債券を新たに取得した側(買手)が元々の保有者に対して利息の支払いを行うのが、今回のテーマである端数利息の受け渡しです。

端数利息の計算

端数利息の計算方法

債券の売買が行われたときに、その債券の買手が売手に対して支払わなければならない端数利息の額は、次の計算式によって求められます(1年を365日として計算する場合)。

端数利息=(債券の額面金額×年利率)×(直近の利払日の翌日から債券を売買した日までの日数)÷365

まず、(債券の額面金額×年利率)の部分でその債券の1年分の利息が計算されます。この1年分の利息のうち、債券の元々の保有者(売手)が保有していたにもかかわらず、まだ利息を受け取っていない期間に相当する金額が端数利息の金額になります。端数利息は日数単位で計算されるため、この金額を365で割っています(小数点以下の端数が計算に影響しないように、割り算は最後に回しています)。

この「債券の元々の保有者が保有していたにもかかわらず、まだ利息を受け取っていない期間」というのが、次の(直近の利払日の翌日から債券を売買した日までの日数)の部分です。元々の保有者は、直近の利払日に利息を受け取っていますから、まだ利息を受け取っていない期間というのは、その利息を受け取った日(直近の利払日)の翌日からということになります。その日から元々の保有者(売手)が債券を手放した日までの期間に相当する利息が、端数利息として新しい保有者(買手)によって補われる金額になります。

端数利息の計算にあたっては、月ごとの日数の違いを無視するため、1年を360日(30日×12か月)として計算することもあります。この場合は、1年分の利息を365日ではなく360日で割って、1日分の利息を計算します。

端数利息の計算例

【取引】20X1年8月10日、X社が発行する社債(額面金額1,000,000円)を額面100円あたり99.5円で取得した。この社債の利率は年1.825%であり、利払日は3月末と9月末の年2回である。なお、端数利息は1年を365日として計算すること。

それでは、この取引例を使って、債券(X社社債)を購入した企業が債券の売手に対して支払わなければならない金額を計算してみましょう。

  • 社債の購入代金
    • 額面金額1,000,000円×99.5円÷100円=995,000円
  • 端数利息(4月:30日、5月:31日、6月:30日、7月:31日、8月:10日→計:132日
    • (額面金額1,000,000円×年利率1.825%)×132日÷365日=6,600円
  • 買手が支払わなければならない金額
    • 購入代金995,000円+端数利息6,600円=1,001,600円

月によって日数が変わりますので、月ごとの日数を正確に覚えていないと端数利息の計算を正しく行うことができませんので注意しましょう(簿記検定などの資格試験では、うるう年か否かによって日数が変わってしまう2月を端数利息の計算に入れないように出題が行われますので、2月の取り扱いについて心配する必要はありません)。

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