債券を売却したときの処理

簿記有価証券
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債券を売却した場合は、その債券の帳簿価額と売却によって得られる金額との差額を有価証券売却損勘定または有価証券売却益勘定に計上します。有価証券売却損・有価証券売却益とされる金額は、売却にあたって証券会社等に対して支払う手数料の処理方法によって変わるため、この記事ではこの手数料の処理まで含めて説明します

債券の売却金額の求め方

債券を売却したときは、その債券の帳簿価額と、債券の売却によって得られる収入金額との差額を、その債券の売却による損失または利益とします。

債券の売却金額は、額面金額100円あたりの金額または債券1口あたりの金額を使って、次の計算式を使って求めます(1口あたりの金額が額面金額100円でない場合は、計算式の最後の割る金額100円をその債券の1口あたりの額面金額に変えてください)。

債券の売却金額=購入・売却する債券の額面金額×額面金額100円(1口)あたりの金額÷100円

債券を売却したときの仕訳

売却損益の計算

通常、債券の売却にあたっては、証券会社に対して手数料を支払うことが必要になります。債券の売却による損失または利益の額は、この手数料の支払額を売却損益の計算に含めるかどうかによって変わります。

以下では、次の取引を使って、それぞれの方法による仕訳を見ていきましょう。

【取引】売買目的で保有する債券(額面金額1,000,000円、帳簿価額994,000円)を額面金額100円あたり99.7円で売却した。売却にあたって証券会社に対して支払う手数料1,000円を差し引いた残額は後日受けとることにした。

手数料を無視して売却損益を計算する場合

まず、手数料を無視して、帳簿価額と売却金額との差額として売却損益を計算する方法から見ていきましょう。この方法では、手数料の支払額は、債券の売却取引とは別に処理することになります。

有価証券売却損益の計上

それでは、売却損益を計上する仕訳からみていきましょう。

まず、売却した債券の帳簿価額994,000円をその債券が記録されている勘定から減らします。帳簿価額とは、債券を売却した時点でその債券について記録されている金額のことで、債券の取得原価にその後の帳簿価額の修正額(時価評価により生じる評価損益、償却原価法の適用、強制評価減など)を加減した金額となります。この取引例では債券を売買目的で保有していることから、ここでは売買目的有価証券勘定の金額を減らします。

次に、債券の売却金額を計上します。売却金額はさきほどの計算式を使って次のように求めます。

  • 額面金額1,000,000円×額面100円あたりの金額99.7円÷100円=997,000円

この取引例では、まだ売却金額を受け取っていないので、この997,000円は未収入金勘定に計上します。未収入金勘定には、将来に受け取ることのできる金額が計上されるので、この勘定は資産の勘定です。資産の勘定ですから、その記録は借方に行います。

最後に、債券の帳簿価額と売却金額の差額を売却による損益として計上します。この取引例では、帳簿価額994,000円の債券を997,000円で売却したのですから3,000円の利益を計上します。この利益は、収益の勘定である有価証券売却益勘定に記録します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
未収入金997,000売買目的有価証券994,000
  有価証券売却益3,000

手数料の計上

しかし、実際には売却代金997,000円をすべて受け取れるわけではありません。実際に受け取る金額は、ここから手数料1,000円を差し引いた金額になります。そこで、さきほど計上した未収入金勘定の金額から1,000円を取り除きます。未収入金勘定は資産の勘定ですから、ここから金額を取り除くときは貸方に記録を行います。

その代わりに借方に計上されるのが支払手数料勘定です。手数料を支払うことによって、企業の財産は減少しますから、支払手数料勘定は費用の勘定になります。費用の勘定ですから、その記録は借方に行います。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
支払手数料1,000未収入金1,000

なお、この2つの仕訳を1つにまとめて、次のように仕訳してしまうことが普通です。この場合、借方・貸方の両方に出てきている未収入金勘定の金額は相殺されて、その差額である996,000円(997,000円-1,000円)が未収入金勘定に計上される金額となります。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
未収入金996,000売買目的有価証券994,000
支払手数料1,000有価証券売却益3,000

手数料控除後の金額で売却損益を計算する場合

もうひとつの方法は、手数料を控除した後の受取金額をもとに債券の売却損益を計算する方法です。この場合、手数料の金額は売却代金から差し引かれてしまっていますので、別途、支払手数料勘定の記録が行われることはありません。

さきほど見たように、売却した債券の帳簿価額は994,000円、手数料を控除した後の受取金額は996,000円ですから、この場合の有価証券売却益は2,000円(996,000円-994,000円)となります。手数料を控除した分だけ有価証券売却益も少なくなっていることに注目してください。

この手数料控除後の金額で売却損益を計算する場合の仕訳は、次のようになります。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
未収入金996,000売買目的有価証券994,000
  有価証券売却益2,000

端数利息の処理

債券を利払日の翌日以外の日に売却した場合、債券の買手(売却先)から、債券の売却金額に加えて、自社が受け取るはずだった利息(端数利息)を受け取ることになります。この端数利息の受取りは、債券の売却とは別に行われるものなので、債券の売却損益の計算には含めません。

たとえば、次のような取引を考えてみましょう。

【取引】売買目的で保有する債券(額面金額1,000,000円、帳簿価額994,000円)を額面金額100円あたり99.7円で売却した。売却金額と端数利息1,500円の合計額から売却にあたって証券会社に対して支払う手数料1,000円を差し引いた残額は後日受けとることにした。なお、売却損益は手数料控除後の受取金額と帳簿価額の差額として計算する。

この場合、債券を売却した企業が受け取る金額は997,500円(売却金額997,000円+端数利息1,500円-手数料1,000円)ですが、売却損益を計算するときには、端数利息を除いた金額996,000円(売却金額997,000円-手数料1,000円)を使います。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
未収入金996,000売買目的有価証券994,000
  有価証券売却益2,000

そのうえで、この仕訳とは別に端数利息を受け取る仕訳を行います。端数利息もまだ受け取っていないのですから、受取利息勘定の相手勘定は、さきほどと同じように未収入金勘定となります。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
未収入金1,500受取利息1,500

これら2つの仕訳を1つにまとめると次のようになります。実務上は、上の2つの仕訳のように分けて行っても、1つにまとめて行っても、どちらでも構いません。簿記検定などの資格試験では、次のような1つにまとめた仕訳が模範解答が多い傾向にあります。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
未収入金997,500売買目的有価証券994,000
  有価証券売却益2,000
受取利息1,500

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