満期保有目的債券の期末評価を償却原価法(利息法)で行う場合、満期保有目的債券の帳簿価額に加減すべき金額を求めるにあたっては、先に、その債券の実効利子率を求めておく必要があります。
実効利子率とは、その債券から生じる将来キャッシュ・フロー(クーポン利息、金利調整差額、満期時の償還金額の合計)の現在価値がその債券の帳簿価額と等しくなる利子率のことをいいますが、この利子率を電卓で求めることは、ごく一部の例外を除いて非常に困難です。そこで、この記事では、代表的な表計算ソフトであるエクセルのゴールシーク機能を使って、債券の実効利子率を求める方法を紹介します。
準備
キャッシュ・フローを入力する
債券の実効利子率を求めるためには、まず、その債券について、いつ、どれだけのキャッシュ・フローがあるかを確認します。
20X1年1月1日に、満期保有目的でX社社債(額面100,000円)を額面100円あたり98円で取得した。この社債の償還日は20X4年12月31日であり、利払日は毎年12月31日(年1回)、額面金額に対して付される利息の利率(クーポン利子率)は年1%である。
まず、債券の取得にあたっては、その購入代金を支払わなければなりません。支払いによって現金が減りますので、取得にあたっての支出額はマイナスの金額で記録します(額面金額100,000円×98円÷100円=98,000円)。
次に、債券の利息は毎年12月31日に支払われます。現在価値の計算では、収入額だけではなく、いつ収入があるかも重要になりますので、毎年の収入額をそれぞれバラバラに記録します(額面金額100,000円×1%=1,000円)。
最後に、償還日(満期日)には額面金額が償還されますので、この金額も将来キャッシュ・フローの額に加える必要があります。償還日である20X4年12月31日は、最後の利息(1,000円)と額面金額(100,000円)が同時に支払われますので、キャッシュ・フローの額は101,000円(1,000円+100,000円)となります。
A | B | C | D | E | |
---|---|---|---|---|---|
1 | X1/1/1 | X1/12/31 | X2/12/31 | X3/12/31 | X4/12/31 |
2 | -98,000 | 1,000 | 1,000 | 1,000 | 101,000 |
現在価値を求める計算式を入力する
次に、この将来キャッシュ・フローのデータを使って、この債券に関する現在価値を求める計算式を入力していきます。
まず、さきほどの表に、次のように実効利子率が表示される枠(青枠)と現在価値が表示される枠(赤枠)を設けます。
A | B | C | D | E | |
---|---|---|---|---|---|
1 | X1/1/1 | X1/12/31 | X2/12/31 | X3/12/31 | X4/12/31 |
2 | -98,000 | 1,000 | 1,000 | 1,000 | 101,000 |
3 | 実効利子率 | 現在価値 |
そして、現在価値が表示される枠(赤枠)に現在価値を求める計算式を次のように入力します(それぞれの項が分かりやすいようにスペースを入れていますが、実際にはスペースは入れません)。
= A2 + B2/(1+B3) + C2/(1+B3)^2 + D2/(1+B3)^3 + E2/(1+B3)^4
現在価値は、将来キャッシュ・フローを(1+利子率)の階乗で割ることで求められます。階乗で割るとは、その回数割るという意味です。たとえば、4年後のキャッシュ・フローの現在価値は、4年後のキャッシュ・フローを(1+利子率)で4回割るという意味です。エクセルでは、この「〇回割る」という部分を「^〇」と入力することで表現します。
- 参考 現在価値の計算
債券の現在価値は、このキャッシュ・フローの現在価値の合計額として求められます。債券を購入したときに支払う金額(ー98,000)は割引をしませんので注意をしてください。
ゴールシーク機能による実効利子率の計算
ここまでの入力が終わったら、ゴールシーク機能を使って実効利子率の計算を行います。
ゴールシーク機能を起動させると、次のようなウィンドウが表示されます。
ゴール シーク | |||
---|---|---|---|
数式入力セル | |||
目標値 | |||
変化させるセル |
- 数式入力セルには、数式を入力したセルの番号を入力します(上の例だとE3)
- 目標値には、現在価値をゼロにしたいので、0(ゼロ)と入力します
- 変化させるセルには、求めたいものを入力します。今は実効利子率を求めたいので実効利子率が入力されるセルを指定します(上の例だとB3)
ゴール シーク | |||
---|---|---|---|
数式入力セル | E3 | ||
目標値 | 0 | ||
変化させるセル | B3 |
この状態でOKを押すと、自動的に計算が実行され、その結果が「変化させるセル」に指定した場所(B3)に表示されます。
なお、初期状態では、B3のセルに「0」と表示されていると思いますが、これは表示が整数表示になっているためです。「ホーム」メニューにある次のアイコンを何回か押して、小数点以下の数字を出すと答えが出てきます(上の例だと、0.01519=1.519%になります)。

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