国庫補助金等で取得した資産の圧縮記帳②(直接減額方式の場合)

簿記事業用資産
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建物、機械装置等の固定資産を取得するために、国や地方公共団体から補助金や給付金(国庫補助金等)を受けることがあります。この場合、その国庫補助金等を使って取得した固定資産について、課税の繰り延べを図るために圧縮記帳とよばれる会計処理を行うことが認められます。

圧縮記帳には、大きく分けて、①取得した固定資産の帳簿価額を直接減額する方法(直接減額方式)、②国庫補助金の額に相当する金額等を圧縮積立金として積み立てる方法(積立金方式)の2つがありますが、この記事では、取得した固定資産の帳簿価額を直接減額する方法(直接減額方式)による処理について説明します。

国庫補助金等で取得した資産の圧縮記帳

設例

次の一連の取引を仕訳しなさい。

  1. 20X1年9月1日、機械を取得するため国庫補助金5,000,000円を受けることとなり、当座預金口座に入金された。
  2. 20X1年10月1日、機械7,000,000円を取得し、代金は小切手を振り出して支払った。
  3. 20X2年1月31日、9月に受け取った国庫補助金について返還不要が確定した。

会計期間中の処理

国庫補助金等を受けたとき

企業会計の場合、受け取った国庫補助金等の額は、収益の勘定である国庫補助金等受贈益勘定に記録します。収益の勘定ですから、その記録は貸方に行います。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
当座預金5,000,000国庫補助金等受贈益5,000,000

非営利法人に係る会計ルールのなかには、受け取った国庫補助金等を預り金などの負債の勘定に計上することが求められているものもあります。このような非営利法人における取り扱いについては、別の記事で取り扱うこととします。

国庫補助金等を原資に固定資産を取得したとき

固定資産を取得したときは、その固定資産の取得原価を資産の勘定(この設例では機械勘定)に計上します。この段階では、圧縮記帳が認められる要件である「返済不要の確定」はありませんから、国庫補助金等の存在を無視して仕訳します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
機械7,000,000当座預金7,000,000

国庫補助金等の返還不要が確定したとき

直接減額方式では、返還不要が確定した国庫補助金等の額を固定資産の帳簿価額から直接減額します。この場合、固定資産の相手勘定は、費用の勘定である圧縮損勘定に記録します。費用の勘定ですから、その記録は借方に行います。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
機械圧縮損5,000,000機械5,000,000

決算時の処理

圧縮後の金額をもとに減価償却

直接減額方式の場合、固定資産の減価償却は、返還不要が確定した国庫補助金等の額を減額した残りの金額に対して行います。たとえば、上記の機械について、定額法により減価償却を行うとした場合(耐用年数5年、残存価額ゼロ、当期中の使用月数6か月)、その仕訳(直接法による)は次のようになります。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
減価償却費200,000機械200,000
  • 減価償却費=(取得原価7,000,000円-国庫補助金等の額5,000,000円)÷5年×(6か月÷12か月)=200,000円

圧縮記帳による課税の繰り延べ

直接減額方式では、固定資産の帳簿価額を直接減額したときに計上される圧縮損により、収益として計上された国庫補助金等受贈益の額が相殺されてなくなってしまいます。このため、受贈益に対していきなり税が課されるということはなくなります。

その代わりに、その後の課税額が少しずつ増加します。まず、固定資産の取得原価を最初に減らしてしまった分、その後の減価償却費の額が圧縮記帳を行わなかった場合と比べて小さくなります。費用である減価償却費の額が減りましたから、収益との差額で計算される利益の額が大きくなります。法人税等は企業の稼ぎに対して課されることになるので、利益の額が大きくなった分だけ課税額は増えます。

圧縮記帳には、国庫補助金等を受け取ったときに課される税額を、その国庫補助金等を原資として取得した固定資産が使用される期間にわたって配分していくという課税の繰り延べの効果があります。その詳細については、別の記事(国庫補助金等で取得した資産の圧縮記帳①(圧縮記帳の効果))に詳しくまとめてありますので、興味のある方はそちらを参照してください。

受給した国庫補助金等を返還したとき

取得した資産が国庫補助金等を受給するにあたって行った申請内容と異なるときや、そもそも資産の取得を行わなかったときは、国や地方公共団体から返還が求められることがあります。この場合は、国庫補助金等受贈益勘定に計上した金額を取り崩して対応します。

なお、返還にあたっては、国庫補助金等を受けた日から返還日までの加算金が加算されるので、その金額を国庫補助金等返還加算金、租税公課などの費用の勘定に計上します。たとえば、上の設例で受けた国庫補助金等について返還が求められ、加算金150,000円とあわせて返還した場合の仕訳は、次のようになります。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
国庫補助金等受贈益5,000,000当座預金5,150,000
国庫補助金等返還加算金150,000  

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