約束手形の受け取り(受取手形・営業外受取手形)

簿記債権債務
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この記事では、財またはサービスの売却代金等を受け取るにあたって約束手形を受け取ったときの処理について見ていきます。約束手形は、購入代金等の受取り以外に、金銭を貸し付けたときにも受け取ることがありますが、この金銭を貸し付けたときに受け取った約束手形の処理については、この記事ではなく、別の記事で取り扱います(参考 手形貸付けの処理)。

約束手形を受け取ったときは、その振出しが企業の主たる営業活動による収益(売上高など)にかかわるものであるかどうかによって使用する勘定が変わります。前者の場合は受取手形勘定、後者の場合は営業外受取手形勘定です。どちらも将来に支払うことが約束された金額ということにかわりはありませんが、貸借対照表を利用する人々に対して有用な情報提供を行うため、両者は区別されます。

約束手形による代金等の回収

約束手形と小切手の違い

約束手形も小切手と同じように、当座預金口座を使用して代金の支払いを行う手段となります。

約束手形が小切手と異なるところとしては、①支払相手を指定することができる、②支払期日を指定することができるの2つがあります。

まず、支払相手を指定することができる点です。小切手は、原則として、小切手を金融機関に呈示した人が、たとえそれがもともとその小切手を受け取った人でなかったとしても、そのままお金を受け取ります(持参人払い)。これに対して、約束手形の場合は、その約束手形を振り出した人が支払相手を指定することができます。振出しを受けた日から支払期日までの間に、盗難等によって約束手形が他の人の手に渡ってしまったとしても、その人が支払いを受けることはできません。

次に、支払期日を指定することができる点です。小切手は、原則として、振出日から10日以内に支払いを行う必要があるため、振出側の企業も振出しのタイミングで当座預金口座にお金を入れておかなければなりません。しかし、約束手形の場合は、支払期日を指定することができます。このため、約束手形を振り出すタイミングで当座預金口座にお金が入っている必要はなく、小切手の場合と比べて時間的な猶予があります。

約束手形による代金の回収の流れ

約束手形を受け取った場合の回収の流れは、次のようになります。

  1. 約束手形を受け取る
  2. 支払期日が到来したら、金融機関に手形代金の取立てを依頼し、支払いを受ける。

約束手形の場合は、小切手の場合とは異なり、その場で現金の支払いを受けることはできません。約束手形に記載された手形代金は、その約束手形を金融機関に呈示した者が開設している預金口座に入金されます。金融機関は、預金口座を開設したときに取得した情報と照合して、約束手形を呈示した者がその約束手形に記載されている人物と同一人物であるかを確認しているのです。

なお、約束手形を金融機関に呈示した者(受取人)が、その金融機関(受取人側の金融機関)に対して、約束手形を振り出した者(振出人)が当座預金口座を開設している金融機関(振出人側の金融機関)に支払いを請求してもらうことを取立ての依頼といいます。

なお、同じ小切手であっても、線引きが行われている場合(線引小切手)は、その場で現金を受け取ることができません。この場合は、約束手形の場合と同様に、金融機関に取立てを依頼することになります。

約束手形の処理

約束手形を受け取ったときの処理

財やサービスの売却代金等として約束手形を受け取ったときは、将来に支払うことが約束された金額を資産の勘定である受取手形勘定または営業外受取手形勘定に記録します。資産の勘定ですから、新たに約束手形を受け取ったときは借方、約束手形の支払期日が到来し、支払いを受けたときは貸方にその金額を記録します。

受取手形勘定と営業外受取手形勘定は、約束手形がどのようなものの売却代金等として受け取ったかによって使い分けます。企業の主たる営業活動による収益(売上高など)にかかわるものの場合は受取手形勘定、そうでない場合は営業外受取手形勘定です。

なお、小切手を受け取ったときは、その金額を現金勘定に記録しましたが、約束手形の場合はそのようにはしません。約束手形は支払期日まで換金することができないため、いつでも無条件で換金できるという通貨代用証券の定義を満たさないからからです。

参考 小切手の処理

【設例1】売掛金2,500,000円を先方振出の約束手形で回収した。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
受取手形2,500,000売掛金2,500,000

売掛金は、商品等を販売したときに発生する債権なので、約束手形で将来に支払うことが約束された金額は、受取手形勘定に記録します。

代金の支払いを受けたときの処理

約束手形に記入された支払期日が到来し、支払いが行われたときは、将来に受け取ることのできる金額(債権)が減少したことになりますから、その金額を受取手形勘定の貸方に記録します。なお、手形代金の取立てを依頼するにあたって、金融機関に支払った手数料は支払手数料に記録します。

【設例2】かねて受け取っていた約束手形2,500,000円の支払期日が到来し、取立てを依頼したところ、取立手数料1,000円が差し引かれた2,499,000円が当座預金口座に入金された。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
当座預金2,499,000受取手形2,500,000
支払手数料1,000  

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