移動平均法による商品有高帳の記帳④(棚卸減耗損・商品評価損)

簿記商品売買決算整理
《広告》

商品については、貸借対照表上に表示される金額を適切なものとするために、決算にあたって、実際の数量を確認し、不足が生じている場合にはその不足分の金額を商品の帳簿価額から差し引くことが必要となります(棚卸減耗損)。また、商品の取得原価よりも売却によって得られると見込まれる金額(正味売却価格)が低い場合は、その正味売却価格まで帳簿価額を引き下げなければなりません(商品評価損)。

この記事では、このような実際の商品の動きをともなわない帳簿価額の減額を、商品有高帳上どのように記録していくかについて、移動平均法で記帳を行っているケースを例に見ていきます。

棚卸減耗損の記帳

棚卸減耗損とは,商品などの棚卸資産について会計帳簿に記録されている数量(帳簿棚卸高)よりも,実際に倉庫のなかや店舗で数えて確かめた数量(実地棚卸高)が少ないときに計上される損失のことをいいます。

【設例1】3月31日、決算にあたり、商品の実地棚卸数量を確認したところ22個であった。この商品についての商品有高帳上の記録が次のようになっていたとして、棚卸減耗損の記録を追加しなさい。

商  品  有  高  帳
摘要受   入払   出残   高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
(   中    略   )
331       2550812,700

この設例の場合、商品有高帳上は25個の商品が残っていることになりますが(帳簿棚卸数量)、倉庫に残っているのは22個(実地棚卸数量)ですので、所在が分からなくなった3個(=25個-22個)について棚卸減耗損を計上します。

商品有高帳上、商品の平均取得単価は508円となっていますから、払出欄に記録する単価の額は508円となります。所在が分からなくなった商品の個数3個に単価508円をかけた1,524円が棚卸減耗損の額となります。

以上から、商品有高帳への記帳は、次のようになります。

商  品  有  高  帳
摘要受   入払   出残   高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
(   中    略   )
331       2550812,700
 棚卸減耗損   35081,5242250811,176

商品評価損の記帳

商品評価損とは、商品の取得原価よりも、その商品を売却したときに得られると見込まれる金額(正味売却価格。売価から売却費用を差し引いた金額)が小さくなっている場合に、商品の帳簿価額をその正味売却価格まで切り下げたときに生じた損失額(帳簿価額の切下額)のことをいいます。商品評価損の計上は、企業が保有している商品について、将来に損失(売却損)が生じる可能性が生じていることを、財務諸表上でも明らかにするために行われる手続です。

さて、商品評価損が生じている場合には、商品有高帳への記帳はどのように行えばよいのでしょうか。

【設例2】(設例1のつづき)期末に保有している商品22個について正味売却価格を調べたところ、商品1個あたり400円まで低下していた。帳簿価額と正味売却価額の差額を商品評価損として計上する。

【設例1】で棚卸減耗損の記帳を行った後の状況は、単価508円の商品が22個となっています。商品の平均単価508円は正味売却価格400円の方が小さいので、単価を切り下げて商品評価損を計上しなければなりません。

切り下げ額は、商品1個あたり108円(=508円-400円)となります。商品は22個ありますから、帳簿価額の切下額は2,376円(=108円×22個)となります。

これを商品有高帳に記帳すると、次のようになります。

商  品  有  高  帳
摘要受   入払   出残   高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
(   中    略   )
331       2550812,700
 棚卸減耗損   35081,5242250811,176
 商品評価損     2,376224008,800

まず、払出欄に帳簿価額の切下額を記入します。商品の単価を切り下げるだけで、個数は変わっていませんので個数欄の記入は必要ありません。また、個数がないので、単価欄の記入も必要ありません。

次に、残高欄ですが、金額欄だけでなく、商品評価損の計上はそもそも商品の帳簿上の単価を修正する手続きですから、単価欄の修正も併せて行わなければなりません。払出欄で金額欄の記録しかしていなかったこともあって、単価欄の修正を忘れてしまいがちですので気を付けてください。

関連記事

コメント

タイトルとURLをコピーしました