社団医療法人の機関

研究医療法人制度
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社団医療法人は、自然人(生物としての人)ではないため、それ自体では何もできません。このため、社団医療法人を設立した場合は、これを動かすための機関を設ける必要があります。

社員と社員総会

社員

社団医療法人は、社団が医療法人として法人格を取得したものをいいます。

社団とは、複数の人の集まりのことであり、この社団を構成する人員(社団のメンバー)のことを社員といいます。社団と社員の関係を船で表すと、社員は船の部品(パーツ)に相当します。社団は、人の集まりですから、これを構成する人が欠けてしまえば船に穴があいて沈没してしまいます。社団と社員は切っても切り離すことはできません。

ただし、これは社員が永遠に交代できないというわけではありません。船でも部品が交換されることはあります。社団を構成するメンバーも交代することは可能です。また、船が一部の部品を取り除いて軽量化したり、新しい機能を追加したりできるように、社団でも社員の数を減らしたり、増やしたりすることもできます(ただし、社員の数は、最低でも3名いることが望ましいとされています(「社団医療法人定款例」第26条備考))。

ある人が社員になったり、社員をやめたりするときは、社員全員から構成される社員総会での承認が必要とされることが一般的です(「社団医療法人定款例」第14条~第16条)。株式の保有割合と比例して議決権割合が決定される株式会社とは違い、医療法人では、すべての社員が1票をもつこととされているため(1人1議決権の原則。「医療法」第46条の3の3)、他の社員にも意見を聞く機会が与えられているのです(少しでも穴があいていれば、そこから船が壊れてしまうこともあります)。

社員総会

社員総会は、上述のように、社員全員から構成される会議体をいいます。社団の存続、基本方針に係る重要な意思決定が行われる場で、最低1年に1度は開催しなければなりません(「医療法」第46条の3の2第2項)。厚生労働省が公表している「社団医療法人定款例」では、次の事項を社員総会の決議事項としてあげています(「社団医療法人定款例」第19条)。

  1. 定款の変更
  2. 基本財産の設定および処分(担保提供を含む。)
  3. 毎事業年度の事業計画の決定または変更
  4. 収支予算および決算の決定または変更
  5. 重要な資産の処分
  6. 借入金額の最高限度の決定
  7. 社員の入社および除名
  8. 本社団の解散
  9. 他の医療法人との合併もしくは分割に係る契約の締結または分割計画の決定
  10. その他重要な事項

社員総会の議決は、出席した社員の多数決によることが基本となります(「医療法」第46条の3の3第3項)。社員総会で行われた議事については議事録を作成し、これを社員総会の日から10年間、主たる事務所に保存しなければなりません(「医療法」第46条の3の6、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」第57条)。

役員

役員とは、社団の運営に従事する者として社員総会で選任された人のことをいいます(「医療法」第46条の5)。上述の船の例えでいえば、役員は作られた船を操縦する人に相当する。社団医療法人の役員は、大きく理事と監事に分けられます。

役員の任期は2年を超えることはできませんが、同時に、再任を妨げないものともされています(「医療法」第46条の5第9項)。これは、2年に1度、社員総会によって業務の遂行状況がチェックされ、改めて承認を受けることが必要となることを意味します。

なお、社員と役員は兼任が可能です。この場合、船自体がその船を操縦する形になり、自分の身体を自分の意思で動かす自然人と同じような状況になります。

理事と理事会

理事

理事とは、社員総会において定められた基本方針に基づいて、社団の運営に関する具体的な方針を決定し、その方針に基づいて現場を指揮する者をいいます。医療法人が開設する病院、診療所その他の医療提供施設の管理者は、原則として、全員理事として選任されなければなりません(「医療法」第46条の5第6項)。

理事の数は原則として3人以上でなければなりませんが、都道府県知事の認可を受けた場合は2名以下でも認められます(「医療法」第46条の5第1項)。複数の理事が選任された場合、理事のうち1名は理事長としなければなりません(「医療法」第46条の6)。理事長は、株式会社における代表取締役や代表執行役と同様に、社団医療法人が外部との取引(物品の購入、融資の受け入れなど)を行うにあたって、法人を代表することになります(「医療法」第46条の6の2)。

理事会

理事会は、すべての理事から構成される会議体をいい、理事長や理事長以外の役員が必要に応じて招集します。厚生労働省が公表している「社団医療法人定款例」では、次の事項を理事会の決議事項としてあげています(「社団医療法人定款例」第35条)。

  1. 本社団の業務執行の決定
  2. 理事の職務の執行の監督
  3. 理事長の選出および解職
  4. 重要な資産の処分および譲受けの決定
  5. 多額の借財の決定
  6. 重要な役割を担う職員の選任および解任の決定
  7. 従たる事務所その他の重要な組織の設置、変更および廃止の決定

理事会の議決は、出席した社員の多数決によることが基本となります(「医療法」第46条の7の2、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」第95条)。理事会で行われた議事については議事録を作成し、これを理事会の日から10年間、主たる事務所に保存しなければなりません(「医療法」第46条の7の2、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」第97条)。

監事

監事とは、医療法人全体や理事の業務、さらには医療法人の財産の状況をチェックし、社員総会や理事会にその状況を報告する者をいいます(「医療法」第46条の8)。また、理事が問題のある行動をしていることを発見した場合、または、その恐れがある場合は、理事に対して直接そのような行動をやめるよう求めることができます(「医療法」第46条の8の3、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」第103条)。監事には、「反則」を未然に防止し、スムーズにゲームの進行させていく「審判」としての役割が与えられているのです。

監事は、その業務の性質上、理事や職員(医療法人のスタッフとして雇用されている者)を兼ねることはできません(「医療法」第46条の5第8項)。監事は、最低1人選任する必要があります(「医療法」第46条の5第1項)。

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