この記事では、試算表の作成方法について見ていきます。試算表とは、会計帳簿上で記録が行われているすべての勘定について、勘定ごとに金額を集計し、その結果をひとつの表にまとめたものをいいます。試算表は、会計帳簿に行われている記録の全体像を把握することに役立ちます。
試算表には、金額の集計の仕方の違いによって、合計試算表、残高試算表および合計残高試算表の3つのものがあります。企業の取引規模を知りたいときは合計試算表、試算表が作成された時点の状況を知りたいときは残高試算表、これらの情報をまとめて知りたいときは合計残高試算表が作成されます。
なお、試算表に対しては、長い間、「会計帳簿への記録が正しく行われているかを確認する」という機能があると言われてきましたが、今日では、会計ソフトや経理システムを使用して会計帳簿(電子帳簿)を作成することが一般的となっているため、このような検算目的で試算表が作成されることは少なくなっています(コンピュータによって集計された結果をわざわざ手作業で確認するのもおかしな話です)。検算目的であれば、仕訳日計表を使った方が取引数が少ない分、確認をしやすいでしょう。
合計と残高
各勘定に記録された金額を集計する方法には、合計と残高という2つの方法があります。合計とは、借方に記録された金額と貸方に記録された金額をそれぞれ別々に集計したものをいい、残高とは、借方の合計金額と貸方の合計金額の差額のことをいいます。
具体的に見てみましょう。現金勘定の記録が次のようになっていたとします。
現 金 | |
---|---|
200,000 | 70,000 |
50,000 | 90,000 |
40,000 |
合計金額の計算
合計は、借方に記録された金額と貸方に記録された金額をそれぞれ別々に集計したものですから、次のように計算できます。
- 借方合計:200,000円+50,000円=250,000円
- 貸方合計:70,000円+90,000円+40,000円=200,000円
残高金額の計算
残高は、借方の合計金額と貸方の合計金額との差額として求められます。今回の現金勘定では、借方の合計金額の方が大きいので、大きい方から小さい方を引いて、次のように計算できます。
- 残高:250,000円-200,000円=50,000円
なお、今回の現金勘定のように、借方の合計金額の方が大きい場合の残高金額のことを借方残といいます。逆に、貸方の合計金額の方が大きい場合はその残高金額のことを貸方残といいます。
3つの試算表
試算表には、3つのものがあります。各勘定の合計金額をまとめた合計試算表、各勘定の残高金額をまとめた残高試算表、各勘定の合計金額と残高金額をまとめた合計残高試算表の3つです。
合計試算表
合計試算表は、各勘定の合計金額をまとめた試算表です。借方の合計金額は借方欄に、貸方の合計金額は貸方欄にそれぞれ記入します。元々の勘定に記録がなかった場合は、0と書かずにそのまま空欄にしておきます。
合 計 試 算 表 | ||
---|---|---|
借 方 | 勘定科目 | 貸 方 |
250,000 | 現金 | 200,000 |
900,000 | 普通預金 | 600,000 |
資本金 | 100,000 | |
売上 | 700,000 | |
400,000 | 仕入 | |
50,000 | 旅費交通費 | |
1,600,000 | 1,600,000 |
各勘定の合計金額を記入したら、それぞれ1本線を引いたうえで(これを合計線といます)、その下に、借方欄に記入された金額と、貸方欄に記入された金額をそれぞれ合計した結果を書きます。借方欄に記入された金額と、貸方欄に記入された金額の合計額が一致したことを確認したら、その確認の証として最後に2本線を引きます(これを締切線といいます)。
残高試算表
残高試算表は、各勘定の残高金額をまとめた試算表です。借方残は借方欄に、貸方残は貸方欄にそれぞれ記入します。残高金額が借方・貸方の両方に出てくることはありませんから(借方と貸方の両方に金額が残っている場合は、引き算をして差額を求めなければなりません)、借方か貸方のどちらかは空欄になります。
残 高 試 算 表 | ||
---|---|---|
借 方 | 勘定科目 | 貸 方 |
50,000 | 現金 | |
300,000 | 普通預金 | |
資本金 | 100,000 | |
売上 | 700,000 | |
400,000 | 仕入 | |
50,000 | 旅費交通費 | |
800,000 | 800,000 |
最後に、借方欄の合計金額と貸方欄の合計金額を計算して、両者が一致することを確認するのは合計試算表のときと同じです。
合計残高試算表
合計残高試算表は、各勘定の合計金額と残高金額をまとめた試算表です。さきほどまでの合計金額と残高金額をそのまま書き写す形になりますので、新しいことはありません。
なお、合計欄と残高欄は左側と右側ではなく、内側と外側で書き分けますので注意してください。
合 計 残 高 試 算 表 | ||||
---|---|---|---|---|
借 方 | 勘定科目 | 貸 方 | ||
残 高 | 合 計 | 勘定科目 | 合 計 | 残 高 |
50,000 | 250,000 | 現金 | 200,000 | |
300,000 | 900,000 | 普通預金 | 600,000 | |
資本金 | 100,000 | 100,000 | ||
売上 | 700,000 | 700,000 | ||
250,000 | 250,000 | 仕入 | ||
50,000 | 50,000 | 旅費交通費 | ||
800,000 | 1,600,000 | 1,600,000 | 800,000 |
貸借平均の原理
すべての勘定の金額を1つにまとめて作成される試算表では、必ず借方欄に記入される金額の合計額と、貸方欄に記入される金額の合計額は必ず一致します。これを貸借平均の原理といいます。これは合計試算表であっても、残高試算表であっても、合計残高試算表であっても変わりません。
手作業で試算表を作成した場合、借方欄に記入された金額の合計額と、貸方欄に記入された合計額が一致しないときは、必ずどこかに誤りがあります。まず、集計に誤りがないかを確認したうえで、集計に誤りがなければ、仕訳や転記に誤りがなかったかを確認し、その原因を突き止めることが必要になります。
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