決算手続とは何か

簿記の考え方簿記決算整理
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決算手続とは、会計期間が終わった後、会計期間中に行われた記録をとりまとめ、一定の修正を行ったうえで、財務諸表とよばれる報告書を作成する一連の手続(作業)のことをいいます。

今日の簿記では、企業の活動期間を強制的に一定期間ごとに区切って、その会計期間ごとに企業の財産の状況を取りまとめることになっています。しかし、実際の企業の活動は、簿記の都合を意識せずに行われていますから、会計期間中に行われた記録のなかに将来の会計期間に係るものが含まれていたり、逆に、会計期間中に起こった出来事であるにもかかわらずまだ記録が行われていなかったりすることもあります。このような余分な記録を取り除いたり、足りない記録を補ったりするのが決算手続の大きな目的になります。

決算手続の流れ

決算手続は、会計期間の終了後、次のような流れで進められます。

  1. (試算表を作成して、会計期間中の記録が正しく行われているかを確認する)
  2. 棚卸表を作成して、どのような修正しなければならないかを明らかにする
  3. 棚卸表に基づいて、会計帳簿上の記録を修正・調整していく(決算整理仕訳と転記)
  4. (試算表を作成して、決算整理仕訳とその転記が正しく行われているかを確認する)
  5. 会計帳簿を締め切り、財務諸表を作成する

このうち、1.と4.に(   )をつけました。今日、多くの企業は会計ソフトや経理システムを使用して簿記を行っているため、わざわざ手作業で試算表を作って集計結果を確認するという作業はあまり重視されていません(ただし、どれだけの取引を行ったかを確認するなど、記録の確認以外の目的で試算表が作成されることはあります)。このため、試算表の作成については(   )をつけています。ただし、記録の確認をすること自体に意味がないという話ではありませんので注意してください。

棚卸表の作成

棚卸表は、財務諸表を作成するにあたって必要となる修正事項をまとめた表になります。

会計期間中の記録は、実際に起こった財産や債権・債務関係の動きをそのままトレースするものになるため、そこに記録される金額は、領収書などの証明書類(証憑)に記載された金額がそのまま使われる形になります。これに対して、決算手続は、会計期間が終わったときに、会計帳簿のなかだけで行われるものになりますから、このような頼りにできる証憑が存在しないなかで進めていかなければなりません。棚卸表は、領収書などの証憑に代替する、期末における財産や債権・債務関係についての拠り所になるものとして作成されます。

棚卸表には、期末商品棚卸高(期末の商品在庫)がどれだけあるか、売掛金(まだ受け取っていない商品の売上代金)がどれだけあるか、当期中に支払った保険料のうち翌期以降の金額はどれだけあるかといった企業の財産や債権・債務の状況が細かく記録されます。これらの金額は、倉庫に入って実際に在庫を数えてみたり、取引先に電話などで照会を掛けたりといった形で求められます。棚卸表に記載された金額は「実際に確認をした」ということをもって、外部から発行された証憑に匹敵する証明力を有することになるのです。

なお、簿記検定等の資格試験では、棚卸表上の金額等が問題文のなかで与えられるため、棚卸表を作成するような問題が出されることはありません(棚卸表の作成には、実際に在庫を数えたり、取引先に確認をしたりという作業が必要であるため、試験問題として出題することができないのです)。

決算整理仕訳

棚卸表に基づいて、会計期間中に行われた記録を修正・調整していくための仕訳のことを決算整理仕訳といいます。

会計帳簿上の記録は、必ず仕訳・転記というプロセスを使って修正しなければなりません。修正液などで消してしまうと、その修正が本当に誤りがあったから修正されたのか、何か都合の悪いことを隠したのかといったことが分からなくなってしまうからです。決算整理仕訳についても、何かやましいことがないことがあったわけではないことを明確にするため、仕訳・転記の形で会計帳簿上の金額を修正していきます。

なお、簿記検定等の資格試験では、決算整理仕訳を会計帳簿上ではなく、精算表とよばれる一種の集計表を使って行う問題が出題されますが、会計ソフトや経理システムが活用されている今日の簿記では、このような表を使って手作業で集計を行うといったことはあまり重視されていません。精算表については、あくまでも学習上、試験上のものとして考えておくとよいでしょう。

会計帳簿を締め切り、財務諸表を作成する

会計帳簿は、会計期間ごとに締切という作業を行う必要があります。締切とは、会計期間中の記録をまとめて、次の会計期間に繰り越す金額を画定したり、当期の利益計算に使用する金額を画定したりする手続です。何年も何十年も記録が積みあがっていくと集計が右肩上がりで大変なことになってしまいますから、会計期間ごとに記録を取りまとめて、その分量を圧縮するわけです。

財務諸表は、冒頭にもお話ししたように、会計期間中の財産や債権・債務関係の状況をまとめたものであり、会社の場合は外部にも公表されます。このため、外部の人も理解しやすいように一定の様式が決まっており、その様式にあわせて作成しなければなりません。現在、財務諸表には、貸借対照表、損益計算書、包括利益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書の5つがあります。基本的には、企業の規模が大きくなるにつれて作成しなければならない財務諸表の数は増えていきますが、貸借対照表と損益計算書の2つは個人事業や零細企業であっても作成される基本的な財務諸表になります。

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