この記事では、小口現金の出納管理に利用される小口現金出納帳への記録方法について説明します。
小口現金係(用度係)は、経理部門以外の部門に所属しており、必ずしも簿記の知識があるわけではありません。このため、小口現金係(用度係)に対しては、通常、経理部門から報告専用のフォーマットが手渡され、そのフォーマットに必要な記録を行っていくことになります、小口現金出納帳は、ここで経理部門から小口現金係(用度係)に手渡されるフォーマットのひとつです。
小口現金出納帳の様式
小口現金出納帳の記入欄は、次のように分けられています。小口現金を経理部門から預かったときも、自ら使ったときも使用するのがB~D、預かったときにのみ使用するのがA、使ったときにのみ使用するのがE以降の記入欄となります。
小 口 現 金 出 納 帳 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
受入 | 月 | 日 | 摘要 | 支払 | 内訳 | |||
旅費交通費 | 消耗品費 | 通信費 | 雑費 | |||||
A | B | C | D | E | F | G | H | I |
- 受入欄(A)……小口現金の増加額(経理部門から小口現金を預かったとき、補充を受けたとき)
- 月・日欄(B・C)……小口現金が増減した日付
- 摘要欄(D)……A欄およびE欄以降に記入した金額についての説明
- 支払欄(E)……小口現金の減少額(小口現金を使用したとき)
- 内訳欄(F以降)……小口現金の使用額を区分ごとに記録する
小口現金を使用した場合は、支払欄(E)と内訳欄(F以降)の2か所にその金額を記録しなければなりません。内訳欄にどのような内訳が設けられるかは経理部門の考え方次第ですが、報告を受けた際にその金額が記録される勘定ごとに内訳欄を設けておくと、仕訳が楽になります。なお、最後の雑費欄(I)には、どの内訳項目にも当てはまらない「その他の理由による支出額」を記録します。
小口現金出納帳への記入例
支出時の記録
小口現金を支出したときは、支出した金額を支払欄と内訳欄の2か所に記録します。摘要欄には、後に経理部門が支出の内容を確認することができる程度に記録を行ってください。下の記入例では省略していますが、電車代やバス代のように、領収書を受け取ることができない場合は、乗車した経路などをあわせて記録しておくと金額の確認が容易になります。
小 口 現 金 出 納 帳 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
受入 | 月 | 日 | 摘要 | 支払 | 内訳 | |||
旅費交通費 | 消耗品費 | 通信費 | 雑費 | |||||
30,000 | 4 | 1 | 前週繰越 | |||||
2 | 電車代 | 2,100 | 2,100 | |||||
〃 | コピー用紙 | 2,500 | 2,500 | |||||
3 | タクシー代 | 4,100 | 4,100 | |||||
4 | 郵便切手代 | 4,200 | 4,200 | |||||
5 | 電車代 | 1,800 | 1,800 | |||||
〃 | 手土産代 | 3,000 | 3,000 | |||||
6 | バス代 | 600 | 600 | |||||
〃 | メモ帳代 | 800 | 800 |
報告前の処理
小口現金係(用度係)は、経理部門に報告を行うにあたって、前回の補給からの使用額を、支出欄、内訳欄ともにあらかじめ集計しておきます。集計は、同じ欄に記入された金額を上から順に足していくだけです。
なお、それまでの記録と集計金額を区別するために、両者の間に合計線(一本線)を引きます。合計線には、足し算や引き算を筆算で行うときに、問題と答えを分ける線と同じような意味があります。
また、内訳欄については、集計金額の後に締切線(二重線)を引きます。これ以降、内訳欄への記録は行われないことを意味します。一方、支払欄については、まだ記録が続きますので、締め切り線を引く必要はありません。
小 口 現 金 出 納 帳 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
受入 | 月 | 日 | 摘要 | 支払 | 内訳 | |||
旅費交通費 | 消耗品費 | 通信費 | 雑費 | |||||
30,000 | 4 | 1 | 前週繰越 | |||||
2 | 電車代 | 2,100 | 2,100 | |||||
〃 | コピー用紙 | 2,500 | 2,500 | |||||
3 | タクシー代 | 4,100 | 4,100 | |||||
4 | 郵便切手代 | 4,200 | 4,200 | |||||
5 | 電車代 | 1,800 | 1,800 | |||||
〃 | 手土産代 | 3,000 | 3,000 | |||||
6 | バス代 | 600 | 600 | |||||
〃 | メモ帳代 | 800 | 800 | |||||
19,100 | 8,600 | 3,300 | 4,200 | 3,000 |
補給を受けたときの処理
経理部門から小口現金の補給を受けたときは、その金額を受入欄に記録します。なお、定額資金前渡制度(インプレストシステム)では、経理部門に報告した使用額と同額が補充されます。このため、この場合は、支払欄の最終行に記録されている支払合計額と受入欄に記録される補充額は一致することになります。
小 口 現 金 出 納 帳 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
受入 | 月 | 日 | 摘要 | 支払 | 内訳 | |||
旅費交通費 | 消耗品費 | 通信費 | 雑費 | |||||
30,000 | 4 | 1 | 前週繰越 | |||||
2 | 電車代 | 2,100 | 2,100 | |||||
〃 | コピー用紙 | 2,500 | 2,500 | |||||
3 | タクシー代 | 4,100 | 4,100 | |||||
4 | 郵便切手代 | 4,200 | 4,200 | |||||
5 | 電車代 | 1,800 | 1,800 | |||||
〃 | 手土産代 | 3,000 | 3,000 | |||||
6 | バス代 | 600 | 600 | |||||
〃 | メモ帳代 | 800 | 800 | |||||
19,100 | 8,600 | 3,300 | 4,200 | 3,000 | ||||
19,100 | 6 | 本日補給 |
小口現金出納帳の締切り
報告から補充にかけての一連のプロセスが終了したら、いったんそれまでの記録を終わらせて、仕切り直しをします。これを締め切りといいます。確認が終わるたびに確認済みのとこるまで区切りを入れてしまうことで、何か問題が生じたときに、記録を確認すべき範囲を狭く限定することができ、問題を早く発見・解消することができるようになります。
小口現金出納帳の締切りは、次の期間に繰り越されるべき金額を支出欄に赤字で記録したうえで、受入欄の合計金額と支払欄の合計金額が一致することを確認することによって行います。なお、支払欄の金額のうち合計線が引かれる前の金額は、すべて合計線の後の金額に集計されてしまっていますから、締め切りにあたって、合計線が引かれる前の金額をもう一度足してしまわないように注意してください。
小 口 現 金 出 納 帳 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
受入 | 月 | 日 | 摘要 | 支払 | 内訳 | |||
旅費交通費 | 消耗品費 | 通信費 | 雑費 | |||||
30,000 | 4 | 1 | 前週繰越 | |||||
2 | 電車代 | 2,100 | 2,100 | |||||
〃 | コピー用紙 | 2,500 | 2,500 | |||||
3 | タクシー代 | 4,100 | 4,100 | |||||
4 | 郵便切手代 | 4,200 | 4,200 | |||||
5 | 電車代 | 1,800 | 1,800 | |||||
〃 | 手土産代 | 3,000 | 3,000 | |||||
6 | バス代 | 600 | 600 | |||||
〃 | メモ帳代 | 800 | 800 | |||||
19,100 | 8,600 | 3,300 | 4,200 | 3,000 | ||||
19,100 | 6 | 本日補給 | ||||||
〃 | 次週繰越 | 50,000 | ||||||
69,100 | 69,100 |
コメント