従業員に対して給料・手当を支給する場合、社会保険料に加えて、従業員の所得に対して課せられる所得税・住民税を天引きすることが必要となります。所得税も、住民税も、本来であれば、給与所得を得る従業員が自ら申告、納付しなければならないものです。しかし、わが国では、税金の納付漏れを防ぐため、給与所得者については、企業(雇用者)が従業員に対して支給する給料・手当の額からこれらの税額を天引きし、従業員の代わりに申告、納付を行うこととなっています。
給料手当から天引きすべき金額の決定
従業員に対する給料・手当から、どれだけの金額を天引きするかは、所得税の場合と住民税の場合とで異なります。天引額は、従業員によって異なりますから、1人1人個別にその金額を算定しなければなりません。
社会保険料の場合とは異なり、所得税・住民税については、企業が負担すべき金額はありません。従業員の給料・手当から天引きした金額をそのまま納付することになります。
所得税の源泉徴収額の計算
所得税の天引額については、毎年国税庁から公表される「源泉徴収税額表」を用いて、①それぞれの従業員に対して支給される給料・手当の合計額(当該従業員の側で給与所得として課税対象となるものに限ります)から社会保険料等の額を控除した残額と、②扶養親族等の数から求めます。
- 参考 国税庁ウェブサイト>パンフレット・手引>源泉徴収全般(所得税の源泉徴収制度全般については「令和○○年版源泉徴収のしかた」、源泉徴収税額表については「令和○○年分源泉徴収税額表」を参照してください)
住民税の特別徴収額の計算
全国一律でその納付額が計算される所得税とは異なり、住民税の額は、その従業員が居住する都道府県・市町村によって異なります。このため、住民税については、天引額を企業が計算するのではなく、その居住地から通知される「特別徴収税額通知書」に記載された金額をそのまま使って処理します。
なお、住民税の額は、従業員の前年の給与所得の額に基づいて決定されます。このため、前年に所得がない場合(新卒採用の従業員など)については、住民税の天引きはありません。これらの従業員について、住民税の天引きが行われるのは、2年目の6月以降となります。
所得税・住民税の天引きに係る処理
給料日の処理
給料日が到来したときは、従業員が負担すべき所得税・住民税の額を天引きし、残りの金額だけを従業員に対して支払います。この従業員の給・料手当から天引きした金額は、従業員預り金勘定を使って記録します。
【設例1】給料日となり、従業員に対する給料230,000円から、従業員負担の所得税および住民税30,000円を差し引いた残額を普通預金口座から振り込んだ。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
給料手当 | 230,000 | 従業員預り金 | 30,000 |
普通預金 | 200,000 |
納付したときの処理
従業員の給料・手当から天引きした所得税・住民税の額は、給料日の翌月の10日(月給制の場合)までに納付しなければなりません。納付額は、天引きした所得税、住民税の額であり、社会保険料のように企業の負担額が加算されることはありません。
【設例2】【設例1】で従業員の給料・手当から天引きした所得税・住民税の額30,000円を普通預金口座から納付した。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
従業員預り金 | 30,000 | 普通預金 | 30,000 |
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給料・手当からの所得税・住民税の天引きは、社会保険料の天引きと同時に行われます。両者とも、給料日の処理としてセットで理解するようにしてください。
- 給料手当の処理①(社会保険料の前納・後納)
- 給料手当の処理②(所得税・住民税) この記事
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