貸倒引当金の設定②(洗替法による仕訳)

簿記債権債務決算整理
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この記事では、売掛金、貸付金などの金銭債権に対して設定される貸倒引当金に係る仕訳の方法のうち、洗替法とよばれる方法について説明します。洗替法は、決算にあたって、前期に設定された貸倒引当金の額のうち当期中に使用されなかった金額を全額取り崩し、新たに当期末の金銭債権の額に応じた貸倒引当金を計上する方法です。

なお、洗替法による仕訳は、「法人税法」における原則的な処理方法とされていますが(「法人税法」第52条第10項)、財務会計上、認められている方法ではないことに注意が必要です(「金融商品会計に関する実務指針」第125項、「中小企業の会計に関する指針」第18項(5))。

財務会計・税務会計における洗替法の位置づけ

貸倒引当金は、当期以前の事象(掛取引、融資など)に起因して、将来に発生する可能性が高いと見込まれる損失(貸倒損失)の額を合理的に見積もったものをいいます。

利害関係者への情報提供を主たる目的とする財務会計では、企業自身がその金銭債権の状況に応じて貸倒引当金の額を見積もる必要があります(「金融商品に関する会計基準」第27項、第28項)。直前期に設定した貸倒引当金の額について、期末に使用されなかった金額がある(残っている)ということは、直前期に企業が行った見積もりが誤っていた可能性があることを意味します。精査の結果、もし直前期に行った見積もりに誤りがあったことが判明した場合は、直前期に遡って見積もりを修正する必要がありますから(「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第55項)、過年度に設定した貸倒引当金の額を無条件に当期の利益として戻し入れる洗替法が選択される余地はありません。このこともあり、財務会計では、前期分の戻入額(遡及修正の対象とならなかったもの)と当期分の繰入額を相殺して、純額で当期の損益として計上する差額補充法による処理が求められます(「金融商品会計に関する実務指針」第125項)。

これに対して、「法人税法」では、納税額を算定するための基礎となる課税所得について恣意的な操作が行われないよう、課税所得の計算上、貸倒引当金として繰り入れることのできる金額の割合を一律に定めてしまっています。このため、財務会計のときのような見積もりの誤りについて検討しなければならない場面が基本的にありません。また、財務会計上、貸倒引当金の見積もりについて遡及修正が行われた場合であっても、その修正はあくまでも財務会計上の問題であり、過年度に行った税額計算に影響を及ぼすものではないため(「法人が『会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準』を適用した場合の税務処理について」問1、2)、貸倒引当金の取崩額が当期の戻入益として処理されないと、取崩額の行き場がなくなってしまいます。このため、税務会計上は、洗替法による仕訳が原則的な処理ということになります。

洗替法による仕訳

設例】決算にあたり、貸倒引当金について必要な処理を行う。

  1. 当期末における貸倒引当金勘定の残高(貸倒引当金の未使用額)は50,000円であった。
  2. 当期末において貸倒引当金の設定対象となる金銭債権の額は2,000,000円、貸倒引当金の要設定額を設定するための基礎となる貸倒実績率は1.5%であった。

貸倒引当金は、金銭債権の評価勘定(資産のマイナス項目)であるため、その設定額は貸方に記録されます。洗替法では、過年度に計上した貸倒引当金のうち未使用額を取り崩し、新たに当期分を繰り入れるのですから、取崩額は借方(貸方の反対)に、繰入額は貸方に記録されることになります。

また、貸倒引当金の相手勘定については、取り崩しにより当期の利益として認識される金額は貸倒引当金戻入(貸倒引当金戻入益)勘定に、新たに当期の費用として前倒し計上される損失の額は貸倒引当金繰入勘定に記録します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
貸倒引当金50,000貸倒引当金戻入50,000
貸倒引当金繰入30,000貸倒引当金30,000

※当期の貸倒引当金として設定される金額:金銭債権期末残高2,000,000円×1.5%=30,000円

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