商品を販売するにあたって、顧客に対して一定の条件(一週間以内、レシート持参など)のもとで販売した商品の返品を認めることがあります。
「収益認識に関する会計基準」では、このような場合に、販売した商品が返品される可能性を事前に見積もったうえで、仕訳上の金額に反映させることが原則とされています。しかし、品違いのような単なる顧客側のミスを原因とする返品については、企業側で事前に合理的な見積もりを行うことができません。そこで、このようなケースでは、商品の販売時には原則として商品の引き渡しに係る対価の額をそのまま収益として計上しておき、返品を受けたときはその処理を取り消すという形で対応をとることが認められています。この記事では、この品違いによる返品に係る処理について説明していきます。
売上時の処理
商品を売り上げたときは、将来に返品される可能性のことは気にせずに、その商品の引き渡しに係る対価の額を収益の勘定(売上)に計上してしまって構いません。
たとえば、商品10,000円を売り上げ、代金を現金で受けとった場合、その仕訳は次のようになります(商品売買取引の仕訳は三分法で行うものとします)。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
現金 | 10,000 | 売上 | 10,000 |
返品を受けたときの処理
返品を受けたとき(売上戻り)は、その商品を販売したときに計上した収益(売上)の額を取り消します。収益の記録は、商品を販売したときに貸方に行われていますから、返品を受けたときは、その逆の借方にその金額を計上します。
返品を受けたときは、商品を販売したときに受け取ったその商品の代金を返金しなければなりません。収益を計上した記録を取り消したときは、この代金の返金に係る記録も行う必要があります。
たとえば、さきほど売り上げた商品が返品され、代金10,000円を現金で返金した場合、その仕訳は次のようになります。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
売上 | 10,000 | 現金 | 10,000 |
なお、商品を販売したときに代金を受け取った方法と、返金の方法が異なることがあります。「返品を受けたときは、商品を販売したときの仕訳を貸借反対に行う」といった説明をしているインターネット記事を時々見かけますが、必ずしもその通りにはならないので気をつけてください。たとえば、上の取引について、口座振込の形で返金を行ったとすると、その仕訳は次のようになります。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
売上 | 10,000 | 普通預金 | 10,000 |
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