商品有高帳とは何か

簿記会計帳簿商品売買
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商品有高帳とは、企業における商品の受入れと払出しの状況を取得原価ベースで記録する補助簿をいいます。商品有高帳への記録は、総勘定元帳と同じように、取り扱う商品ごとに分けて行われます。このため、商品有高帳は、補助簿のなかでも補助元帳とよばれるものに分類されます。

商品の取得原価は、同じ会計期間のなかでも変動します。商品自体の価格(購入代価)が見直されることもあれば、引取運賃などの付随費用が見直されることもあります。ある商品について、先週に仕入れたときには1,000円だったものが、今週になったら1,010円に上がっていたということもよくあります。

企業の倉庫のなかには、このような取得原価の異なる商品がたくさん保管されています。ここで、お客さんから注文があり、ある商品を1ケース倉庫から出すことになったとしましょう。その商品の取得原価はいくらでしょうか。取得原価は違っても同じ商品です。見た目では区別できません。商品有高帳は、このような場合に出庫される商品の原価(これを払出価額といいます)を決定するために利用されます。

商品有高帳の様式

商品有高帳の様式は、次のようになっています。

商  品  有  高  帳
甲商品
摘要受入払出残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
41前月繰越402008,000   402008,000
 3売上   102002,000302006,000
 6仕入6020612,360   9020418,360
 7売上   152043,0607520415,300
 9売上   252045,1005020410,200

まず、冒頭に記録が行われる商品の名前を記入します。商品有高帳では、商品ごとに記録を分けて行いますから、その記録がどの商品に関する記録なのかを明確にする必要があります。

月・日欄および摘要欄には、商品が増減した月日とその理由を記録します。商品有高帳は、商品の動きを記録するためのものですから、商品が増減した理由については簡潔な記録で構いません。取引先や支払条件などについては、仕入帳や売上帳などの他の会計帳簿に記録されるからです。

受入欄には、仕入先との関係において発生した商品の取得原価の増減が記録されます。商品を仕入れたとき(増加したとき)は黒字で記録し値引を受けたり、返品をしたりしたとき(減少したとき)は赤字で記録します

払出欄には、顧客をはじめとする仕入先以外の者との関係において発生した商品の取得原価の増減が記録されます。商品を販売したとき(減少したとき)は黒字で記録し返品を受けたとき(増加したとき)は赤字で記録します。なお、商品有高帳は、商品の動きを取得原価で記録するものですから、売り上げた商品を値引したときは記録を行いません。売上値引は、売上金額の減少であり、原価の減少ではないからです。

最後に、残高欄には、商品の受入れや払出しの結果として、企業が保有している商品の状況を取得原価ベースで記録します。

商品有高帳への記帳の方法

商品有高帳への記帳方法は、商品の払出単価(払出欄の単価として使用する金額)を決定する方法の違いによって変わります。移動平均法や先入先出法のように、払出単価を随時計算できる方法を採用している場合は、会計期間中、商品が増減するたびに記録を行う必要があります。これに対して、総平均法や売価還元法のように、払出金額(売上原価)を期末等にまとめて計算してしまう方法を採用している場合は、会計期間中は受入欄の記録のみを行っておき、払出欄や残高欄の記録は期末等にまとめて行うことになります。

具体的な記録方法については、それぞれの方法ごとに記事を作成していますので、そちらを参照してください。

このブログのアクセス解析によれば、商品有高帳への記録について説明した記事へのアクセスが非常に多く、とりわけ返品・値引の処理に関心があるようです。返品・値引の記録を、①仕入・売上と同じ側に赤字で書くのか、②仕入・売上と逆側に黒字で書くのかについては文献によってさまざまで、簿記を学習中の方にとっては気持ち悪く感じることでしょう。

私は、仕入値引が払出欄に記録されることは望ましくないと考えるため(値引を受けても商品の数自体は変わらないから)、①の方法を採用していますが、②の方法が絶対に誤りというわけでもありません。商品有高帳をはじめとする補助簿は、主要簿に行われる仕訳とは異なり、会計基準の適用対象外なので、企業独自のルールで記録・作成を行うことが許されています。したがって、絶対的な正解はそもそも存在しません。企業で商品有高帳への記帳を行う際は、その企業のルールにしたがってください。資格試験では問題や解答用紙のなかに、学校の試験では講義中に指示があるはずですので、その指示にしたがってください。

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