この記事では、手形借入れの処理について見ていきます。手形借入れとは、取引先等から借り入れを行うにあたって、将来に企業が支払う金額(元本と利息の合計額)に相当する金額の約束手形を振り出すことをいいます。
約束手形は、将来の特定の日(支払期日)に特定の金額(手形金額)を当座預金口座から支払うことを約束するものですから、借入金の返済日や利息の支払日が決まっている場合は、このような形で使用されることもあるのです。このように金銭の融通(貸し借り)にあたって振り出される約束手形のことを金融手形とよぶこともあります。
手形借入金勘定への記録
借入れを行うことによって企業が負うことになる、将来の支払義務(債務)は、負債の勘定である手形借入金勘定に記録します。負債の勘定ですから、新たに借り入れを行って、将来に返済しなければならない金額が増えたときは貸方に、過去に借り入れた金額を返済して、将来に返済しなければならない金額が減ったときは借方にその金額を記録します。
通常、手形借入れを行った場合、借入期間に対応する利息の額を返済すべき元本の額とあわせて約束手形に記入してしまいます。元本の返済だけ手形で済ませて、利息の支払いは別に支払うといったことは基本的に行いません。
この点は、通常の借入れの処理と大きく異なる部分です。手形借入れによらない借入れでは、利息の額を借入金勘定に含めて会計帳簿に記録することはありません。通常の借入れでは、返済期限を後から変更でき(繰上返済など)、これに応じて支払うべき利息の額も変動するため、利息の額を事前に確定することはできません。しかし、手形借入れでは、約束手形の振り出しにより、返済期限(支払期日)を事前に確定することができるため、利息部分も含めた将来の支払額を手形借入金勘定に記録してしまいます。
借入時の処理
手形借入れを行ったときは、①現金・預金の増加を記録するとともに、②将来に支払うことを約束した金額(約束手形に記入した金額を借入金勘定の貸方に記録します。また、③受け取った金額と将来に支払うことを約束した金額の差額についても、その内容に応じて必要な勘定に記録を行います。たとえば、利息に相当する部分の金額については、支払利息勘定で処理します。
【設例1】取引先から先方振出の小切手2,000,000円を受け取った。この小切手は借入れのために受け取ったものであり、当社は小切手を受け取るのと同時に約束手形2,015,000円を振り出している。なお、両者の差額は、借入期間中の利息に相当する金額である。
借方科目 | 貸方科目 | 借方科目 | 貸方科目 |
---|---|---|---|
現金 | 2,000,000 | 手形借入金 | 2,015,000 |
支払利息 | 15,000 |
返済時の処理
振り出した約束手形の支払期日となったら、①当座預金の減少を記録するとともに、②返済により減少した債務の減少額を手形借入金勘定の借方に記録します。当座預金を減少させるのは、約束手形の支払いが当座預金口座から行われるからです。
なお、利息の処理については、借入れを行ったタイミングで終わっているため、このタイミングで行う必要はありません。
【設例2】かねて振り出していた約束手形2,015,000円の支払期日となり、当座預金口座から支払いが行われた。なお、この約束手形は、かねて取引先から借入れを行った際に振り出したものである。
借方科目 | 貸方科目 | 借方科目 | 貸方科目 |
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手形借入金 | 2,015,000 | 当座預金 | 2,015,000 |
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