総平均法による商品の期末棚卸高の計算

簿記決算整理
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商品売買取引について、商品が増減するたびに商品勘定の残高を増減させる処理方法(売上原価対立法、分記法など)を採用していない企業では、決算にあたって、売上原価を計算するために商品の期末棚卸高を計算する必要があります。

商品の期末棚卸高は、その企業が、商品の払出単価をどのように計算しているかによって決まります。期末に払い出されなかった商品(期末に売れ残っている商品)が期末棚卸高となりますから、商品の払出単価が決まれば、自動的に期末棚卸高も決まるわけです。

商品の払出単価の計算方法にはいくつかの方法がありますが、この記事では、商品の払出単価を総平均法で行っている場合の期末棚卸高の計算について説明していきます。

総平均法とは

総平均法とは、会計期間中に取り扱った商品について、期末に平均単位取得原価をまとめて計算したうえで、この平均単位取得原価を用いて売上原価や期末棚卸高を計算する方法をいいます。

総平均法では、平均単位取得原価が期末にまとめて計算されます。先入先出法や移動平均法のように、会計期間中、商品の払出しがあるつど払出単価の計算を行う必要がないため、簡便に記録を行うことができます。その一方で、会計期間中は、商品の払い出しの状況が会計帳簿に記録されないため、どれだけの商品が払い出されたか、どれだけの商品が残っているかをタイムリーに把握することはできません。

商品の在庫管理を行っていれば、総平均法が採用されている企業であっても、在庫として保有している商品の個数はいつでも把握できます。総平均法において把握できないのは、その在庫として保有している商品の価額です。

なお、税法上は、会計期間の全体を1つの計算単位とするかわりに、1ヶ月を1つの計算単位として平均単位取得原価を求める方法も認められています(法人税法基本通達5-2-3)。この方法によれば、会計期間の全体を1つの計算単位とする方法よりも、タイムリーに商品の状況を金額ベースで把握することが可能になります。

設例

【設例】次の資料に基づいて、商品の期末帳簿棚卸高を計算しなさい。

  1. 前期からの商品の繰越数量・繰越金額    120個  26,400円
  2. 当期中の商品の仕入数量・取得原価合計  1,880個 473,600円
  3. 当期末における商品の数          150個

平均単位取得原価の計算

平均単位取得原価は、次の計算式によって計算されます。

$$\text{平均単位取得原価}=\frac{\text{期首商品の価額}+\text{当期中に仕入れた商品の取得原価合計}}{\text{期首商品の数量}+\text{当期中に仕入れた商品の数量}}$$

この設例の状況をこの計算式にあてはめて、商品の平均単位取得原価を計算すると、次のようになります。

$$\text{平均単位取得原価}=\frac{\text{26,400}+\text{473,600}}{\text{120}+\text{1,880}}=500$$

期末における商品の数

この「期末における商品の数」として何を使うかは、会計期間中に商品の出入りを継続的に記録しているか(出入りのたびにその数を記録しているか)どうかによって変わります。

商品の仕入数量、売上数量を継続的に記録している場合

商品有高帳などを使って、商品の仕入数量、売上数量を継続的に記録している場合は、それらの記録をもとに算出した期末商品の数(帳簿棚卸数量)を使って期末帳簿残高を計算します。

決算にあたって、実際に商品を数えて期末の数量(実地棚卸数量)を確認することも行いますが、売上原価の計算に直接この数量を使用することはしません。

商品の仕入数量、売上数量を継続的に記録していない場合(実地棚卸のみ行う場合)

一方、商品の仕入数量、売上数量を継続的に記録していない場合は、決算にあたって、実際に商品を数えて期末の数量(実地棚卸数量)を確認することになります。

期末商品棚卸高の計算

この設例では、期末における商品の数が150個と与えられていますから、期末棚卸高は次のように計算できます。

$$\text{期末における商品の数150個}\times\text{平均単位取得原価500円}=\text{75,000円}$$

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