省令「医療法人会計基準」逐条解説|第1条 医療法人会計の基準

医療法人会計
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省令「医療法人会計基準」第1条は、この省令の適用対象となる医療法人の範囲について規定しています。

第1条 医療法(昭和23年法律第205号。以下「法」という。)第51条第2項に規定する医療法人(以下「医療法人」という。)は、この省令で定めるところにより、貸借対照表及び損益計算書(以下「貸借対照表等」という。)を作成しなければならない。ただし、他の法令に規定がある場合は、この限りでない。

準拠すべき会計基準を指定する意義

2015年の「医療法」改正により、一定の医療法人に対しては、その計算書類(財産目録、貸借対照表および損益計算書)について公認会計士または監査法人の監査を受け(「医療法」第51条第5項)、このうち貸借対照表および損益計算書については公告まで行うこと(「医療法」第51条の3)が義務づけられました。

公認会計士や監査法人が医療法人に対して行う会計監査は準拠性監査です(日本公認会計士協会「医療法人の計算書類に関する監査上の取扱い及び監査報告書の文例」(非営利法人委員会実務指針第 39 号)第10項~第17項)。準拠性監査とは、医療法人が作成する計算書類が事前に定められたルールにしたがって作成されているかを確かめることをいいます。

「医療法」の改正が議論された当時は、病院などの施設を対象とした会計基準は存在していたものの、その運営母体である医療法人自体を対象とした会計基準は存在していませんでした。この状態のままでは、公認会計士や監査法人が、医療法人の計算書類について、「ルールにしたがって」いるかどうかを判断することができません。そこで、改正「医療法」の施行にあたって、まずはその判断基準となるルールが作成されました。これが省令「医療法人会計基準」(平成28年厚生労働省令第95号)です。

省令「医療法人会計基準」の適用対象

省令「医療法人会計基準」は、「医療法」第51条第2項に規定する医療法人に対して適用されます。この「医療法」第51条第2項に規定する医療法人とは、次のいずれかに該当する医療法人のことをいいます(「医療法施行規則」第33条の2)。

  1. 社会医療法人の場合
    • 社会医療法人債を発行している法人
    • 最終会計年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が20億円以上、または、最終会計年度に係る損益計算書の事業収益の部に計上した額の合計額が10億円以上である法人
  2. 社会医療法人以外の医療法人の場合
    • 最終会計年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が50億円以上、または、最終会計年度に係る損益計算書の事業収益の部に計上した額の合計額が70億円以上である法人

最終会計年度

最終会計年度の貸借対照表または損益計算書とは、監事または公認会計士もしくは監査法人の監査を受け、理事会が承認したもののうち直近のものをいいます(厚生労働省医政局長発通知「医療法人の計算に関する事項について」(最終改正令和3年2月26日)第1、1、(2))。基本的には、直近会計年度の貸借対照表または損益計算書を使って判断することになりますが、これらについて監査や承認の手続が終わっていない場合は、前々会計年度の貸借対照表または損益計算書を使用することになります。

貸借対照表や損益計算書については、すべての医療法人が監事による監査を受ける必要があり、公認会計士または監査法人による監査を受けることが義務づけられるのは、「医療法」第51条の2に規定する医療法人に限られます。上記の通知において、「監査または公認会計士もしくは監査法人の監査」とされているのは、当会計年度において「医療法」第51条の2に規定する医療法人に該当するかどうかの判定の基礎となった最終事業年度に、その医療法人が「医療法」第51条の2に規定する医療法人に該当していなかった場合(公認会計士または監査法人による監査が義務づけられていない場合)があるためです。

負債の部に計上した金額

省令「医療法人会計基準」では、貸借対照表の様式を規定しています。この様式において、貸倒引当金を含む各種の引当金は負債の部に記載されることとされています。会計理論上、引当金は負債には該当するものではありませんが、このような形で記載を行った場合は、「負債の部に計上された金額」に含まれることとなります。

ただし、貸倒引当金については、資産の部に記載される金銭債権の額から控除することも認められます(厚生労働省医政局長発通知「医療法人会計基準適用上の留意事項並びに財産目録、純資産変動計算書及び附属明細表の作成方法に関する運用指針」(最終改正平成30年12月13日)12)。この場合は、貸倒引当金が負債の部に記載されることはありませんから、「負債の部に計上した金額」からも除外されます。

事業収益の部に計上した金額

省令「医療法人会計基準」では、損益計算書についても様式が規定されています。この様式のなかに、「事業収益の部」は存在しないのですが、これは、本来業務事業損益、附帯業務事業損益、収益業務事業損益のそれぞれに記載されている事業収益の合計額を指しているものと考えられます。

なお、補助金については、圧縮記帳が行われるもの(固定資産を取得するために受けたもの)であっても、その金額は収益の部に計上されることになり、貸借対照表上の負債の部に計上して、将来の会計期間に繰り延べることはできません(厚生労働省医政局医療経営支援課発通知「医療法人会計基準について(Q&A)」(最終改正平成30年3月30日)Q17)。

「医療法」第51条第2項適用対象法人以外の医療法人

省令「医療法人会計基準」では、上記のように省令の適用対象を定めていますが、これは、「医療法」第51条第2項適用対象法人以外の医療法人がこの省令に定められた基準に準拠して会計処理や計算書類を作成することを妨げるものではありません。

とりわけ、負債の額や事業収益の額が「医療法施行規則」第33条の2に規定される金額に近い医療法人については、最終会計年度におけるこれらの金額によって、この省令を適用したり、適用しなかったりというのを変えるのは大変な手間ですから、負債や事業収益の額にかかわらず、省令「医療法人会計基準」に準拠して会計処理や計算書類の作成を行うことが現実的な選択となるでしょう。

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