掛取引
最終更新日:2023年12月03日
掛取引とは、同じ取引先との間で、継続的、反復的に商品売買取引を行っている場合に、代金の受け払いを一定期間ごとにまとめて行う取引形態のことをいいます。代金の受け払いには、本部(経理担当部門)の許可を受けなければならない、小銭(お釣り)を用意しなければならない、紛失しないようにしなければならない、盗難・強盗のリスクに備えなければならないなどさまざまなリスクがあります。また、代金を振り込みによって支払うにしても、商品売買のたびに振り込みを行ったとすると、手数料負担が無視できないほど大きくなってしまいます。そこで、掛取引によって、代金がやりとりされる回数を減らすことで、これらのリスクや経済的負担を減らそうとするわけです。
得意先と仕入先
掛取引を行っている場合、自社から見て、商品を売り上げる相手のことを得意先、同じく自社から見て、商品を仕入れてくる相手のことを仕入先といいます。
また、掛取引によって、得意先から将来支払いを受けることができる金額のことを売掛金、掛取引によって、仕入先に対して将来支払わなければならない金額のことを買掛金といいます。
売掛金や買掛金の状況を相手ごとに整理して記録するために会計帳簿(補助簿)が設けられることがありますが、これらの会計帳簿は、相手の名前を使って、得意先元帳や仕入先元帳とよばれたり、債権・債務の名前を使って、売掛金元帳や買掛金元帳とよばれたりすることもあります。
締日と支払期日
掛取引を行っている場合、売手側は、仕入先に対して請求する金額を一定期間ごとに集計し、実際に請求します。この請求する金額を集計するための基準となる日のことを締日といいます。売手側が仕入先に対して請求する金額は、締日までに売り上げた商品について、代金を回収できていない金額となります(すでに請求済みの金額でもまだ支払いが行われていない場合はあわせて請求します)。
仕入先への請求は、請求書という文書をもって行います。請求書には、請求金額のほか、その金額を支払方法等についても記載されます。支払期日とは、支払いを行う期日となります。支払いが遅れた場合に利息を請求するなどの契約になっている場合は、この翌日から利息が発生することになります。また、振り込みによる支払いの場合は、振込先となる自身の預金口座の情報であったり、振込手数料の負担に関する説明であったりも含まれることになるでしょう。
売手側の処理
商品を売り上げたときの処理
商品を売り上げたときは、その商品の引き渡しによって顧客から確実に受け取ることができると期待される金額を売上勘定に記録するとともに(三分法の場合)、将来に受け取ることができると期待される金額を売掛金勘定に記録します。
売掛金勘定は、将来に受け取ることができる金額(金銭債権)が記録される勘定なので、資産の勘定となります。このため、新たに発生した売掛金の額は、売掛金勘定の借方に記録しなければなりません。
【例】商品30,000円を掛けで売り上げた。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
売掛金 | 30,000 | 売上 | 30,000 |
売掛金を回収したときの処理
その後、売掛金を回収したときは、その回収による現金、預金の増加を現金、預金の勘定に記録するとともに、その回収による将来に受け取ることのできる金額(金銭債権)の減少額を売掛金勘定に記録します。売掛金勘定は資産の勘定ですから、その減少額は貸方に記録します。
【例】売掛金のうち20,000円が普通預金口座に振り込まれた。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
普通預金 | 20,000 | 売掛金 | 20,000 |
このように、売掛金勘定では、新たに発生した金銭債権の額が借方に、回収等によって消滅した金銭債権の額が貸方に記録されますから、売掛金勘定の残高金額は、その時点において未回収の金額(これから支払いを受けることが期待される金額)を意味することになります。
買手側の処理
商品を仕入れたときの処理
商品を仕入れたときは、その商品の取得原価を仕入勘定に記録するとともに(三分法の場合)、将来に支払う必要がある金額を買掛金勘定に記録します。
買掛金勘定は、将来に支払うことになる金額(金銭債務)が記録される勘定なので、負債の勘定となります。このため、新たに発生した買掛金の額は、買掛金勘定の貸方に記録しなければなりません。
【例】商品30,000円を掛けで仕入れた。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
仕入 | 30,000 | 買掛金 | 30,000 |
買掛金を支払ったときの処理
その後、買掛金を支払ったときは、その支払いによる現金、預金の減少を現金、預金の勘定に記録するとともに、その支払いによる将来に支払わなければならない金額(金銭債務)の減少額を買掛金勘定に記録します。買掛金勘定は負債の勘定ですから、その減少額は借方に記録します。
【例】買掛金のうち20,000円を普通預金口座から振り込んだ。なお、この際、振込手数料300円が普通預金口座から引き落とされた。
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
買掛金 | 20,000 | 普通預金 | 20,300 |
支払手数料 | 300 |
このように、買掛金勘定では、新たに発生した金銭債務の額が貸方に、支払い等によって消滅した金銭債務の額が借方に記録されますから、買掛金勘定の残高金額は、その時点において未払いの金額(これから支払わなければならない金額)を意味することになります。