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棚卸計算法と継続記録法

最終更新日:2024年06月15日

商品売買取引による利益は商品の売上高からその商品を仕入れるために要した原価の額を差し引くことによって計算されます。ここで売上原価から差し引かれる金額のことを売上原価といいます。簿記では、原価という言葉がさまざまな場面で使用されますが、売上原価は売り上げた商品について集計された原価であるところがポイントになります。

棚卸計算法と継続記録法

各期の売上原価の額を計算する方法には、棚卸計算法と継続記録法の2つがあります。

棚卸計算法

棚卸計算法は、各期の決算において、その会計期間に生じた売上原価の額をまとめて計算する方法です。この方法では、会計期間中、売上原価の発生状況をリアルタイムで追跡することはできませんが、その分、簡便に会計処理を済ませることができます。

棚卸計算法では、次の計算式によって各期の売上原価の額が計算されます。

売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高

なお、当期の期首商品棚卸高は、前期の期末商品棚卸高と等しくなりますから、この方法を採用した場合は、当期商品仕入高と各期の期末商品棚卸高を把握しておけば売上原価を計算することができます。

棚卸計算法では、会計期間中に売り上げた商品の原価は記録されません。会計期間中の商品の減少額のなかには、盗難や横領のように望まない理由によるものがあるかもしれませんが、具体的にどれだけの額が販売され、どれだけの額が販売以外の原因によってなくなったかを区別できないため、これらはすべて売上原価にまとめられてしまいます。

継続記録法

継続記録法は、商品を売り上げるごとに、売り上げた商品の原価の額を記録しておく方法です。売上原価の計算は、主要簿上(仕訳帳・総勘定元帳)で行う方法もあれば、補助簿上(商品有高帳)で行う方法もあります。この方法では、会計期間中、売上原価の発生状況をリアルタイムで追跡することが可能ですが、その分、記帳の手間がかかります。

売上原価=会計期間中に売り上げた商品の原価の合計額

継続記録法は、会計帳簿に行われた記録のみで売上原価の計算が行われていきます。このため、会計帳簿に行われた記録が誤っていたり、会計帳簿に記録が行われていなかったりすると(上述した盗難・横領などの場合は会計帳簿への記録は行われないでしょう)、会計帳簿上計算される売上原価の額と実際の売上原価の額がどんどんとズレていってしまう可能性があります。

棚卸計算法と継続記録法の併用

商品の盗難・横領の実態を把握し、かつ、会計帳簿上の記録から計算される売上原価の額が実際の商品売買取引の状況とズレていかないようにするためには、棚卸計算法と継続記録法を併用することが必要になります。両者を併用すれば、会計期間中に行われた商品の動きに関する記録と、期末に実際に確認した商品棚卸高とを突き合わせることによって、会計帳簿に記録されていなかった商品の動きを見つけることができます。

設例による説明

次の資料をもとに当期の売上原価の額を計算しなさい。なお、商品1個あたりの原価は前期から繰り越されてきた商品(期首商品棚卸高)についても、当期中に仕入れた商品(当期商品仕入高)についてもすべて100円である。

  • 会計帳簿に記録されている事項
    • 前期から繰り越されてきた商品の数(前期末に実際に数えて確認した数量と等しい):10個
    • 当期中に仕入れた商品の数:80個
    • 当期中に販売された商品の数:60個
  • 当期末に実際に数えて確認した商品の数:25個

棚卸計算法によって計算した場合

棚卸計算法の場合、会計期間中に売り上げた商品についての記録が行われませんから、問題に与えられている「当期中に販売された商品の数:60個」は使用できません。

継続記録法によって計算した場合

継続記録法の場合、実際に企業が保有している商品の数が確認されませんから、問題に与えられている「当期末に実際に数えて確認した商品の数:25個」は使用できません。

棚卸計算法と継続記録法を併用した場合

  1. 棚卸計算法による売上原価の計算
    • 当期中に販売された商品の数:10個+80個-25個=65個
    • 当期の売上原価の額:65個×100円=6,500円
  2. 継続記録法による売上原価の計算
    • 当期中に販売された商品の数:60個
    • 当期の売上原価の額:60個×100円=6,000円

棚卸計算法で計算された売上原価の額と、継続記録法で計算された売上原価の額とのズレは、会計期間中、売り上げたものとして記録されなかった商品の額を表します。

企業は、このようなズレが生じていることを確認した場合は、これが単なる記録のミスによるものなのか、盗難・横領など意図せぬ原因によるものなのかを確認したうえで、前者であれば誤りを修正し、後者であれば(または原因が分からなかった場合には)その金額を損失(棚卸減耗損)として処理することで、翌期にこのズレを持ち越さないようにします。

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