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先入先出法による商品有高帳への記録

最終更新日:2024年06月15日

先入先出法とは、先に受け入れた商品から順に払い出すと仮定して、商品の払出単価などを計算していく方法です。

売上原価対立法分記法のように、商品を売り上げるつど、売上原価を計上していかなければならない方法で記録を行っている場合は、会計期間中、常に、商品有高帳への記録も行っておく必要があります。これに対して、分割法(三分法など)のように、売上原価の計算を決算時にまとめて行う場合、商品有高帳への記録は、ある程度省略してしまっても構いません。この場合、期末に近いタイミング(後に仕入れた商品)の状況さえわかってしまえば売上原価の計算はできてしまうからです。

受入れ順序の記録

先入先出法の場合、たとえ同じ商品であっても、いつ仕入れたものであるかが、記録上、区別されます。払出欄、残高欄の記録を行うにあたって、複数の異なるタイミングで仕入れた商品を列挙する必要があるときは、先に受け入れたものから順に、上から列挙していきます。たとえ同じ日の取引であったとしても、数量や金額を合計してはいけません。

設例による説明

【設例】甲商品に関する4月中の取引の状況は、次の通りであった(@は商品1個当たりの金額を表す)。

  • 前月からの繰越高 16個 @200円
  • 4/3 売上 10個 @500円
  • 4/5 仕入 9個 @220円
  • 4/9 売上 5個 @500円
  • 4/14 売上 6個 @500円
  • 4/17 仕入 12個 @220円
  • 4/18 仕入値引(4/17仕入分) 128円
  • 4/22 売上 7個 @500円
  • 4/23 売上値引(4/22売上分) 300円
  • 4/27 売上 4個 @500円

この取引を先入先出法によって商品有高帳に記録すると、次のようになります(値引額は、仕入時と同じ欄に記入)。

商  品  有  高  帳
甲 商 品
摘 要 受  入 払  出 残  高
数量 単価 金額 数量 単価 金額 数量 単価 金額
4 1 前月繰越 16 200 3,200 16 200 3,200
3 売上 10 200 2,000 6 200 1,200
5 仕入 9 220 1,980 6 200 1,200
9 220 1,980
9 売上 5 200 1,000 1 200 200
9 220 1,980
14 売上 1 200 200 4 220 880
5 220 1,100
17 仕入 12 220 2,640 4 220 880
12 220 2,640
18 仕入値引 △128 4 220 880
12 209.3 2,512
22 売上 4 220 880 9 209.3 1,884
3 209.3 628
27 売上 4 209.3 837 5 209.3 1,047
30 次月繰越 5 209.3 1,047
37 7,692 37 7,692
5 1 前月繰越 5 209.3 1,047 5 209.3 1,047

前期繰越高の記録

摘 要 受  入 払  出 残  高
数量 単価 金額 数量 単価 金額 数量 単価 金額
4 1 前月繰越 16 200 3,200 16 200 3,200

新しい期間(年・月など)の記録を始めるにあたっては、あらかじめ直前の期間から繰り越されてきた商品について記録を行っておく必要があります。この直前の期間から繰り越されてきた商品についての記録は、前期繰越として受入欄および残高欄に行います。

なお、複数の異なるタイミングで受け入れた商品を保有している場合は、原則として、残高欄はもちろんのこと、受入欄についても、先に受け入れたものから順に記録を行っていきます。ただし、前期末に低価法によって商品の評価替えが行われている場合のように、受け入れたタイミングは違っても、すべて同じ単価になおされてしまっている場合は、それらをまとめた合計数量、合計金額で記録を行っても構いません。

売上時の処理

商品を売り上げ、顧客に引き渡すために倉庫等から払い出したときは、直前の残高欄に行われている記録を参照しながら、先に仕入れたものから順にその単価を払出欄の単価欄に書き写し、金額を求めていきます。この設例の場合、各日の記録は、次のようになります。

摘 要 受  入 払  出 残  高
数量 単価 金額 数量 単価 金額 数量 単価 金額
4 1 前月繰越 16 200 3,200 16 200 3,200
3 売上 10 200 2,000 6 200 1,200

3日(27日も同様)……直前の残高欄に1行しか記録がないため、その行に記録されている単価を払出欄の単価欄に書き写します。金額欄には、この単価に払い出した数量を掛けた金額を記入します。

摘 要 受  入 払  出 残  高
数量 単価 金額 数量 単価 金額 数量 単価 金額
5 仕入 9 220 1,980 6 200 1,200
9 220 1,980
9 売上 5 200 1,000 1 200 200
9 220 1,980

9日……直前の残高欄に2行分の記録がありますが、売り上げた商品の数(5個)が、1行目に記録されている商品の数(6個)よりも少ないため、この1行目の単価欄にある金額だけを払出欄の単価欄に書き写します。金額欄には、この単価に払い出した数量を掛けた金額を記入します。

摘 要 受  入 払  出 残  高
数量 単価 金額 数量 単価 金額 数量 単価 金額
9 売上 5 200 1,000 1 200 200
9 220 1,980
14 売上 1 200 200 4 220 880
5 220 1,100

14日(22日も同様)……直前の残高欄に2行分の記録がありますが、売り上げた商品の数(6個)が、1行目に記録されている商品の数(1個)よりも多いため、まずは、この1行目の単価欄にある金額を払出欄の単価欄に書き写します。そして、残りの商品(5個)については、2行目の単価欄にある金額を払出欄の単価欄に書き写します。金額欄には、それぞれの単価にそれぞれ払い出した数量を掛けた金額を掛けて記入します(合計する必要はありません)。

なお、残高欄の数量欄、金額欄には、直前の数量欄、金額欄の数字から、払出欄に記入した数量、金額を差し引いた残りを記録します。なお、残高欄への記入も、商品の受入順に別々の行に行っていきますから、受け入れたタイミングが異なる商品の記録を混ぜてしまってはいけません。

仕入時の処理

摘 要 受  入 払  出 残  高
数量 単価 金額 数量 単価 金額 数量 単価 金額
3 売上 10 200 2,000 6 200 1,200
5 仕入 9 220 1,980 6 200 1,200
9 220 1,980

商品を仕入れ、倉庫等に受け入れたときは、その受け入れた商品に関する記録を受入欄に行います。このとき、数量欄、単価欄、金額欄に記録される数字は、次のようになります。

商品有高帳では取得原価による記録を行います。取得原価は、仕入れた商品の価額(購入代価)だけでなく、付随費用も含めて計算しますから、単価についても、この付随費用を含めた金額で計算する必要があります。単価欄に、仕入れた商品の単価(付随費用を含めない額)を記録しないようにしてください。

次に、残高欄への記録ですが、直前の残高欄の記録をすべて書き写したうえで、その下に、受入欄に記入した数量、単価、金額を書き写します。在庫として保有していた商品とは受入れのタイミングが異なりますから、数量、単価、金額を混ぜてしまってはいけません。

返品・値引き・割戻しの処理

売上に対する返品・値引き・割戻し

一度、売り上げた商品について返品を受けた場合は、その商品を廃棄する場合、中古品・アウトレット品として取り扱う場合、新品と区別せずに取り扱う場合のそれぞれで対応が変わります。

返品された商品を払出欄にマイナスの金額として記録する代わりに、受入欄に記録する方法もあります。この場合は、マイナス記号をつけずに、プラスの金額として記録してください。

商品有高帳は、企業が商品管理のために作成する補助簿であり、外部に公表されるものではないので、企業内でルールを定めておき、そのルールにしたがって記録をしていれば、返品の記録を受入欄、払出欄のどちらに行っても問題はありません。簿記検定などの資格試験では、解答してもらいたい場所が(   )で示されていますから、その場所に記入してください。ただし、受入欄、払出欄のどちらに記入するかによって、マイナスの金額とするかどうかが変わるので注意してください。

なお、私は、後述する仕入戻し(仕入返品)と、仕入値引き・割戻しの記録の整合性を図るため、返品・値引き・割戻しについては、その商品の仕入時・売上時の記録を同じ場所に記録するようにしています。たとえば、仕入先への返品ならば受入欄、得意先・顧客からの返品ならば払出欄といった具合いです。

なお、一度、売り上げた商品について、その後に値引きや割戻しを行ったときは、商品有高帳への記録は行いません。商品有高帳は、商品の動きを記録するものですが、値引き、割戻しの場合は、返品の場合とは違って、企業に商品が戻ってくることはないため、記録を行う必要がないのです。

仕入に対する返品・値引き・割戻し

一度、仕入れた商品を返品した場合は、仕入時に受入欄に行った記録を取り消すと考えて、受入欄に赤字で(または△をつけてマイナス表記したうえで)数量、単価、金額の記録を行います。なお、このときに受入欄の単価欄に記録する金額は、その商品を仕入れたときに計算した平均単位取得原価ではなく、その商品を仕入れたときに受入欄の単価欄に記録された単価になります。

この場合は、残高欄への記入には注意が必要です。通常、企業が保有する商品の数が減った場合、残高欄の上に記録されているものから順に払い出しますが、返品をした場合は、その返品した商品を仕入れたときの単価が記録されている行の数量を減らします。最も新しく仕入れた商品を返品した場合は、残高欄の一番下に記録されている商品の数量が減ることになります。

次に、一度、仕入れた商品について値引き、割戻しをした場合は、受入欄に赤字で(または△をつけてマイナス表記したうえで)値引きや割戻しをした金額の記録を行います。商品が返品されているわけではないので(企業が保有する商品が増えたわけではないので)、数量欄への記録を行うことはありません。また、数量がないため、単価欄への記録も行うことができません(ゼロで割ることができないため)。

摘 要 受  入 払  出 残  高
数量 単価 金額 数量 単価 金額 数量 単価 金額
17 仕入 12 220 2,640 4 220 880
12 220 2,640
18 仕入値引 △128 4 220 880
12 209.3 2,512

また、この場合も、値引き、割戻しを行った商品の単価が記録されている行の金額を減らします。値引き、割戻しにより、その日に仕入れた商品1個あたりの単価も変わることになりますから、再計算が必要です。上の商品有高帳において18日の残高欄の単価欄に記入されている209.3円は、次のように計算されます。

新しい単価=(2,640円-128円)÷12個=2,512円÷12個=209.333……円→209.3円

値引き、割戻しを受けた場合、仕入れた商品を払い出している(返品している)わけではないため、それらの金額を払出欄に記録するのは不自然です。上述のように、返品の場合は、受入欄、払出欄のどちらに書いても一定の合理的な理由があるのですが、値引き、割戻しの場合はこのような理由はありません。

このため、仕入れた商品を返品したときに、その記録を払出欄に行ってしまうと、どちらも取得原価のマイナスでありながら、値引き、割戻しのときは受入欄に、返品のときは払出欄に、と記録を行う場所が別々になってしまい、集計をやりにくくなってします。私が、返品・値引き・割戻しについては、その商品の仕入時・売上時の記録を同じ場所に記録するようにしているのはこのためです。

次期繰越高の記録

摘 要 受  入 払  出 残  高
数量 単価 金額 数量 単価 金額 数量 単価 金額
27 売上 4 209.3 837 5 209.3 1,047
30 次月繰越 5 209.3 1,047
37 7,692 37 7,692
5 1 前月繰越 5 209.3 1,047 5 209.3 1,047

ある期間(年・月など)の記録を終えるにあたっては、期間中の記録が正しく行われているかを確かめるために、締め切りという作業を行います。商品有高帳の場合、直前の残高欄に記録されている数量、単価、金額を払出欄に書き写したうえで(実際に払い出したときの記録と区別するために赤字で記入する)、受入欄、払出欄の数量、金額の合計がそれぞれ一致することを確認します。

そして、両者が一致することを確認したら、新しい期間の記録をはじめるため、前期繰越高の記録を行います。

なお、単価については、合計する必要はありません。単価は、金額を数量で割って計算される商品1個当たりの金額であり、そもそも「合計」するのようなものではないからです。

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