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株式会社における出資の受け入れの処理

最終更新日:2024年06月15日

企業が営業活動を行うためには、まず、その元手となるお金が必要になります。企業の営業活動は、錬金術のように何もないところからお金を生み出すようなものではなく、一定の元手を増やしていく活動になります。どれだけ優れた能力を持つ経営者であっても、元手となるお金がなければ何もできません。

この記事では、さまざまな企業のなかでも株式会社に注目して、その所有者となる投資者から資金を集めてきたとき(出資を受けたとき)の処理方法について見ていきます。

資本金

株式会社の場合、その設立にあたって(募集設立)、または、その設立後に(増資)出資を受けた金額は、すべて資本金として処理することが原則となっています(「会社法」第445条第1項)。法律上、この資本金とされた部分の金額については、原則として、株式会社のなかに留保しておかなければならないこととされています。これは、その株式会社が倒産したときに、銀行や取引先、従業員など、その株式会社に対して債権(金銭を請求する権利)をもつ人々に対して支払いを行うための最後の財源とすることを目的としています。資本金は、株式会社に対する出資者が、さまざまな債権者のために所有権を放棄した金額ということもできます(したがって、投資者は出資した金額の返金を株式会社に対して求めることはできません)。

簿記でも、この「会社法」の定めにしたがって、投資者から出資を受けた金額を資本金勘定に記録します。投資者から出資を受けたら、その金額を現金または預金の勘定に記録すると同時に資本金勘定に記録します。資本金勘定は、純資産の勘定です。企業の営業活動による純資産の増加額は、通常、売上勘定のような収益の勘定に記録されますが、このような投資者との間の財産のやりとり(資本取引)による純資産の増加額ついては、営業活動の成果が分かりにくくならないように、収益の勘定ではなく、純資産の勘定に直接記録してしまうのです。

簿記検定などの検定試験では、1株当たりの払込金額と発行株式数を問題文に書いて、出資を受けた金額を受験者に計算させる問題が出題されます。株式は、株式会社において出資をした投資者に対して発行されるもので、その金額はすべての株式について同じです。したがって、仕訳を行うにあたって必要となる、株式会社が出資を受けた金額は、1株当たりの払込金額と発行株式数を掛けることで計算できます。

【例】株式会社を設立するにあたり、株式30株を1株当たり100,000円で発行し、そのすべてについて払込みを受けた。払込みを受けた金額は、全額、普通預金口座に預け入れた。また、当社では、投資者から払い込みを受けた金額を全額資本金勘定に計上している。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 3,000,000 資本金 3,000,000
  • 資本金の額:30×100,000=3,000,000円

資本金としなかった金額(資本準備金)

ただし、「会社法」では、その例外として、投資者から出資を受けた金額のうち、2分の1を超えない金額を資本金としないことも認められています(「会社法」第445条第2項)。このとき、資本金としなかった金額については、資本準備金としなければなりません(「会社法」第445条第3項)。「会社法」上、資本金と資本準備金は、その金額に相当する財産を社外に流出させようとするときに必要な手続の厳格さに若干の違いがあり、資本準備金の方が比較的緩くなっています。

簿記でも、この「会社法」の定めにしたがって、投資者から出資を受けた金額のうち、資本金としなかった金額については、資本準備金勘定に記録することとしています。資本準備金勘定も、資本金勘定と同じく純資産の勘定です。

なお、簿記検定などの検定試験では、「会社法上で認められる最低金額を資本金とした」旨の指示が与えられることがあります。この場合は、出資を受けた金額の2分の1ずつを資本金勘定と資本準備金勘定都に分けて記録してください。

【例】株式会社を設立するにあたり、株式30株を1株当たり100,000円で発行し、そのすべてについて払込みを受けた。払込みを受けた金額は、全額、普通預金口座に預け入れた。また、当社では、投資者から払い込みを受けた金額のうち、「会社法」で認められる最低金額のみを資本金勘定に計上している。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
普通預金 3,000,000 資本金 1,500,000
資本準備金 1,500,000
  • 資本金・資本準備金の額:(30×100,000)÷2=1,500,000円

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