営業活動に必要な財またはサービスの取得
営業活動に必要な財(もの)の取得
営業活動に必要な財(物理的な形があるものをいいます)を取得した場合、その財の取得原価を、その財の種類に応じて設けた勘定の借方に記録します。
財の取得原価とは、その財を取得するにあたって予定していた目的のために使えるようになるまでに要する金額のことをいいます。取得原価には、購入等したものの価額(購入代価)だけでなく、その財を企業まで運んでくるための運送費用、運送に要する保険料、設置・取付などのために要する費用(据付費)、試運転費、登記・登録のための費用、関税その他の税金などさまざまな費用が含まれます。各勘定への記録にあたっては、原則として、これらをすべて合計して、1つの金額にまとめてください。
取得した財を記録する勘定は、その財の種類や保有目的などに応じて決められます。具体的にどのような勘定を設けるかは各企業の判断に委ねられていますが、例をあげれば次のようなものがあります。
- 土地
- 地面のこと。建物等を建てるために使われるもの、駐車場や資材置き場として使用されるもの、田畑・山林など。
- 建物
- 土地の上に作られるもので、屋根と壁によって空間が区切られ、内部に人や物を収容することができるもの。ビル、店舗、工場、倉庫、車庫など。
- 構築物
- 土地の上に作られるもので、建物以外のもの。舗装、看板、照明、柵・塀、立木、池など。
- 機械・装置
- 製品等を製造するために使用されるもの。
- 備品
- 企業のなかで人間が使用することが予定されているもの。机・椅子、ロッカー、棚、パソコン、エアコンなど。
- 車両運搬具
- 人や物品を運ぶために使用されるもの。乗用車、トラック、オートバイ、自転車など。
- 消耗品費
- 短期的(1年以内)に使用されると見込まれるもの。金額が比較的安価なもの(10万円未満など)。コピー用紙、インクトナー、洗剤その他の清掃用具、電卓、時計など。
備品350,000円を購入し、代金は据付費5,000円とあわせて現金で支払った。
(借) | 備品 | 355,000 |
(貸) | 現金 | 355,000 |
消耗品7,000円を購入し、代金は現金で支払った。
(借) | 消耗品費 | 7,000 |
(貸) | 現金 | 7,000 |
営業活動に必要なサービスの取得
簿記では、相手のために何かをやってあげることのことをサービスといいます(役務ということもあります)。サービスという言葉は、日常生活のなかでは、おまけをしてもらうこと、無料で何かをしてもらうことといった意味で使われますが、簿記では、正当な対価が支払われる場合(金銭的な「おまけ」がない場合)であっても、何かをやってあげる、何かをやってもらうことがあれば、サービスがやりとりされたことになります。サービスには、人を運んでもらう(飛行機、電車、タクシーなどの利用)、ものを運んでもらう(運送・輸送)、企業や商品を宣伝してもらう、不動産(土地、建物など)を貸してもらう、金銭を貸してもらう(借入れ)、何かの際に助けてもらう(保証・保険)などさまざまなものがあります。
営業活動のなかで、第三者からサービスの提供を受けた(何かをやってもらった)場合は、その対価の額を、そのサービスの種類に応じた勘定の借方に記録します。提供を受けたサービスについて、具体的にどのような勘定を設けるかも各企業の判断に委ねられていますが、例をあげれば次のようなものがあります。
- 給料
- 営業活動を行うために働いてくれた個人に対して支払われるもの。給料、賞与、各種手当など。
- 発送費
- 物品を発送するために支払われるもの。運送費用(冷凍・冷蔵などの特殊料金を含む)。
- 広告宣伝費
- 企業や取り扱う商品について宣伝する、または、宣伝してもらうために支払われるもの。広告媒体(CM、ポスターなど)の作成費用、イベントの実施費用、景品等に要する費用など。
- 旅費交通費
- 人の移動のために要した金額(交通費)および移動先での活動のために要した金額(宿泊費、滞在費など)。
- 水道光熱費
- 水道、電気、ガスなどを使用したことに対して支払われるもの。
- 通信費
- 他の場所にいる個人や組織と連絡を行うために要した金額。郵便費用、インターネット利用料など。
- 支払手数料
- 第三者からサービスの提供を受けたときに手数料として支払われるもの。仲介手数料、時間外手数料など。
- 保険料
- 企業で働く人または営業活動で使用しているもの(倉庫、店舗、商品など)に対して掛けられている保険に係る費用。
- 支払家賃
- 第三者が保有する建物の全部または一部を使用することについて支払う使用料。
- 租税公課
- 国や地方自治体に対して支払う税金や料金・手数料など。
- 支払利息
- 金銭を貸し付けてくれた銀行等に対して支払う報酬の額。
出張先のホテルの宿泊費9,000円を現金で支払った。
(借) | 旅費交通費 | 9,000 |
(貸) | 現金 | 9,000 |
水道料金40,000円が普通預金口座から引き落とされた。
(借) | 水道光熱費 | 40,000 |
(貸) | 普通預金 | 40,000 |