海老原諭ウェブサイト

返品・値引・割戻時の記録(後入先出法)

仕入戻し・仕入値引・仕入割戻

商品を仕入れ、商品有高帳への記録を行った後に、その商品を返品したり、値引きや割戻しを受けたりしたときは、商品を仕入れたときに行った記録を修正するために、新しく記録を行う必要があります。商品有高帳は、商品の動きをその取得原価を使って記録する会計帳簿ですから、値引きや割戻しのように保有する商品の数量は変わらなくても、取得原価が減少しているのであれば記録は必要です。

受入欄の記録

商品を返品したときは、受入欄に返品した商品の数量、返品によって返金されたまたは支払う必要がなくなった金額、および、これらの数量と金額から計算された単価(=金額÷数量)を記入します。商品を仕入れたときに、引取運賃その他の付随費用を含めた金額で受入欄への記入を行っている場合であっても、返品時に受入欄に記入する金額は、付随費用を含めた取得原価の額ではなく、返金されたまたは支払う必要がなくなった金額になります。商品を仕入れたときに記入した金額と異なっていても構いません。

仕入れた商品について値引きや割戻しを受けたときは、その値引きや割戻しによって返金されたまたは支払う必要がなくなった金額を金額欄に記入します。商品を返品していない以上、企業が保有する数量に変わりはありませんから、数量欄には何も記入する必要はありません。

なお、これらの記録は、商品を仕入れたときの通常の記録と区別するために、赤字で行います。また、数量および金額については、数量または金額が減ったことを明確にするために、数字の前にマイナスを意味する△をつけておきます。

残高欄の記録

後入先出法は、後から仕入れた商品から順に払い出すと仮定して払出単価の計算を行う方法ですが、商品を返品したり、値引きや割戻しを受けたときは、最も後に仕入れた商品ではなく、返品したり、値引きや割戻しを受けた商品の数量や金額を減らします。上の例では、商品を返品する直前の22日に単価600円の商品と単価650円の商品と単価680円の商品が記録されていますが、22日に仕入れた単価680円の商品が返品されたので、22日に仕入れた単価680円の商品の数量(90単位-20単位=70単位)および金額(61,200円-13,600円=47,600円)をそれぞれ減らしています。

なお、値引きや割り戻しを受けた場合、および、返品をした場合で商品1単位当たりの返金を受けた金額または支払う必要がなくなった金額が元々商品を仕入れたときに受入欄に記入していた金額と異なるときは、商品1単位当たりの金額を計算しなおす必要があります。このような場合は、商品を仕入れたときと同じように、減らした後の金額を減らした後の数量で割る(金額÷数量)ことによって、新たな商品1単位当たりの金額を計算します。

売上戻り・売上値引・売上割戻

返品(売上戻り)の場合

戻り商品を新品の商品と区別しないとき

商品を売り上げ、払出欄への記録を行ったあとに、その商品が返品された場合で(売上戻り)、その返品された商品を販売前の(新品の)商品を区別して記録しないときは、商品を売り上げたときに行った払出欄の記録を修正するために記録を行います。この修正の記録は払出欄に行いますが、商品を売り上げたときの記録と一目で区別がつくように、その記録は赤字で行います。

また、残高欄では、その商品を売り上げたときに払出しの記録を行った(数量を減少させた)単価の商品を増やします。下の例では、5月12日に払い出した単価710円の商品が返品されていますから、残高欄では単価710円の商品を20単位増やします(30単位+20単位=50単位)。

戻り商品専用のページを設けるとき

一方、返品された商品を販売前の(新品の)商品を区別して記録するときは、次のように商品有高帳に返品された商品専用のページを設けたうえで、その受入欄に黒字で記録を行います。

売上値引・売上割戻の場合

商品を売り上げた後に、その商品について値引きや割戻しを行った場合に、商品有高帳への記録を行うことはありません。商品有高帳は、商品の動きを記録する会計帳簿です。値引きや割戻しを行っても、売り上げた商品は戻ってこないため、記録を行う必要はないのです。