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減価償却方法の選定

償却方法の届出を行った場合

償却方法の選定

有形固定資産の減価償却費を計算する方法(償却方法)にはさまざまな方法があります(→減価償却費の計算)。税法でも、財務会計の場合と同じく、いくつかの方法が認められており(「法人税法施行令」第48条、「所得税法施行令」第120条)、各企業がそのなかからどの方法を採用する(選定する)かを自由に決めることができます。

償却方法の届出を行った場合、その届け出た償却方法を使って、税務上、損金の額に算入される減価償却費の上限額(損金算入限度額)が計算されます。なお、耐用年数および残存価額については、特別な事情がないかぎり、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(昭和40年大蔵省令第15号)に基づいて決定されます。

選定できる償却方法は、有形固定資産の種類およびその取得時期によって、次のように変わります(「法人税法施行令」第48条、第48条の2、「所得税法施行令」第120条、第120条の2)。

~平成10年(1998年)3月31日取得 平成10年(1998年)4月1日~平成19年(2007年)3月31日取得 平成19年(2007年)4月1日~平成28年(2016年)3月31日取得 平成28年(2016年)4月1日~取得
建物 旧定額法
旧定率法
旧定額法 定額法
建物附属設備
構築物
旧定額法
旧定率法
定額法
定率法
定額法
機械・装置
船舶
航空機
車両・運搬具
工具・器具・備品
旧定額法
旧定率法
定額法
定率法

※ ただし、鉱業用の減価償却資産については、旧生産高比例法(平成19年(2007年)3月31日以前に取得したもの)または生産高比例法(平成19年(2007年)4月1日以後に取得したもの)を選定することも認められます。

償却方法の届出

選定した償却方法は税務署に自ら届け出る必要があります。償却方法の届出に使われる書類は、法人の場合と個人の場合とで異なります。

償却方法の届出を行わなかった場合

償却方法の届出を行わなかった場合、減価償却費の損金算入限度額は、税法で定められた償却方法によって計算されます。この「税法で定められた方法」は次の通りです。

法人の場合(法人税法)

法人を設立して事業を行う場合、原則として、旧定率法(平成19年(2007年)3月31日以前に取得したもの)または定率法(平成19年(2007年)4月1日以後に取得したもの)によって損金算入限度額を計算します(「法人税法施行規則」第53条)。ただし、旧定額法または定額法しか選定できないもの(平成10年(1998年)4月1日以後に取得した建物、平成28年(2016年)4月1日以後に取得した建物付属設備および構築物)については、旧定率法または定率法ではなく、旧定額法または定額法によって損金算入限度額を計算します。

なお、鉱業用の減価償却資産については、旧定率法または定率法ではなく、旧生産高比例法(平成19年(2007年)3月31日以前に取得したもの)または生産高比例法(平成19年(2007年)4月1日以後に取得したもの)となります(「法人税法施行規則」第53条)。

個人の場合(所得税法)

法人を設立せずに個人で事業を行う場合、有形固定資産の種類にかかわらず、旧定額法(平成19年(2007年)3月31日以前に取得したもの)または定額法(平成19年(2007年)4月1日以後に取得したもの)によって損金算入限度額を計算します(「所得税法施行規則」第125条)。

なお、鉱業用の減価償却資産については、旧定額法または定額法ではなく、旧生産高比例法(平成19年(2007年)3月31日以前に取得したもの)または生産高比例法(平成19年(2007年)4月1日以後に取得したもの)となります(「所得税法施行規則」第125条)。