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損益計算書・貸借対照表の作成

今日の簿記では、企業の活動期間を一定期間ごとに区切って、その期間ごとに会計帳簿に行われた記録をもとに財産の状況をまとめます。この区切られた期間のことを会計期間といい、財産の状況がまとめられた報告書のことを財務諸表といいます。ここでは、財務諸表のなかでも代表的な損益計算書と貸借対照表の作成について見ていきます。

損益計算書

損益計算書とは

損益計算書は、会計期間中に行われた営業活動による財産の増減の状況をまとめたものです。財産の増減の状況は、企業の財産を増加させたできごと(収益)と、減少させたできごと(費用)に分けて表示されます。最終的な増減額ではなく、財産を増減させたできごとに焦点を当ててまとめることで、会計期間中に行われた営業活動がよかったのか、悪かったのか、あとから振り返り、確認することができるようになります。

収益と費用

収益とは、企業の財産を増加させたできごとのことをいいます。会計期間中、収益が記録される勘定には、売上、営業収益、受取手数料、受取地代、受取利息などがあります。ここで「企業の財産を増加させたできごと」は、「企業の現金が増えたできごと」とイコールではないというところに注意してください。預金口座から現金を引き出せば現金は増えますが、預金口座の残高が減っているので、トータルで考えれば企業の財産は増えていません。また、金融機関から借り入れをしても現金は増えますが、将来の負担(返済する義務)が増えているので、やはりトータルで考えれば企業の財産が増えているとはいえません。現金という目の前の財産の変化ではなく、取引全体の状況をトータルで考えることが大切です。

費用とは、企業の財産を減少させたできごとのことをいいます。会計期間中、費用が記録される勘定には、給料、広告宣伝費、旅費交通費、水道光熱費、通信費、支払家賃、支払利息などがあります。収益の場合と同様に、「企業の財産を減少させたできごと」は、「企業の現金が減ったできごと」とイコールではありません。預金口座に現金を預け入れれば現金は減りますが、預金口座の残高が増えているので、トータルで考えれば企業の財産は減っていません。また、商品を仕入れれば現金は減りますが、その代わりに商品というものが増えているので、トータルで考えれば企業の財産は減っていません。

損益計算書の様式

損  益  計  算  書
20X1年4月1日~20X2年3月31日
費用 金額 収益 金額
給料 6,000 営業収益 20,000
減価償却費 8,000 受取利息 10
旅費交通費 3,000
消耗品費 1,500
水道光熱費 1,000
支払利息 30
当期純利益 480
20,010 20,010

損益計算書には、借方側に費用の各勘定、貸方側に収益の各勘定の残高金額が記載されます。会計期間中に行われた営業活動による財産の増減額は、借方側に記載された収益の総額(この設例では、6,000+8,000+3,000+1,500+1,000+30=19,530円)と貸方に記載された費用の総額(この設例では、20,000+10=20,010円)の差額として計算されます。この設例のように、貸方に記載された収益の総額の方が大きい場合は、この差額のことを当期純利益といいます。

当期純利益は、総額が少ない借方側に赤字で追記して、借方に記載された金額の合計額と貸方に記載された金額の合計額が等しくなるようにしてください。当期純利益を赤字で書くのは、この金額が費用の金額でないことを明らかにするためです。なお、借方に記載された費用の総額の方が大きかった場合、この差額は当期純損失とよばれ、総額が少ない貸方側に赤字で追記されることになります。

貸借対照表

貸借対照表とは

貸借対照表は、会計期間の終わり(期末)における企業の財産の状況をまとめたものです。貸借対照表に記載された財産の状況は、そのまま次の会計期間のはじめ(期首)に引き継がれます。このため、貸借対照表は、期末における財産の状況をまとめたものであると同時に、次の会計期間に引き継がれる財産のリストをまとめたものということもできます。貸借対照表では、まず、企業の財産が今後の営業活動に使えるもの(資産)が列挙されたうえで、これが今後の営業活動のなかで外部の第三者に引き渡す義務を負っている部分(負債)とそれ以外の部分(純資産)に分けて表示されます。

資産、負債、純資産

資産とは、企業が次の会計期間以降の活動に使えるものをいいます。企業が期末に保有している財産(金銭やもの)だけでなく、契約等により、将来に受け取ることが決まっている金銭やもの、サービスの額も資産として処理されます。たとえば、商品を後払いの条件で販売したときの今後受け取ることになる販売代金や貸付金は、現時点では金銭の形で保有していないものの、将来に受け取ることが決まっており、その金銭は将来の営業活動に使えるものなので、期末に保有している財産と同じように資産として取り扱います。

負債とは、今後の営業活動のなかで外部の第三者に対して引き渡す義務を負っている金額のことをいいます。代表例は借入金で、この金額は将来のどこかのタイミングで返済しなければなりません。その他、商品の仕入れ代金、建物や車両を分割払い(ローン)で購入した場合の今後の支払額なども負債に分類されます。負債として貸借対照表に記載された金額は、将来の返済等のために企業が保持しておかなければならない金額を意味しています。

純資産は、資産の総額から負債の総額を差し引いた残額です。企業が会計帳簿を作成するにあたって総勘定元帳にどのような勘定を設けるかは、原則として、その企業が自由に決めることができますが、純資産については例外で、「商法」、「会社法」などの企業が準拠すべき法令の定めにしたがって勘定を設ける必要があります。

貸借対照表の様式

貸  借  対  照  表
20X2年3月31日
資産 金額 負債及び純資産 金額
現金 500 未払金 5,000
普通預金 3,500 元入金 15,000
備品 11,000
車両運搬具 5,000
20,000 20,000

貸借対照表には、借方側に資産の各勘定、貸方側に負債および純資産の各勘定の残高金額が記載されます。貸方側の負債と純資産は、借方側の資産の内訳(第三者に対して義務を負っている金額とそうでない金額)を示したものなので、借方側に記載された金額と貸方側に記載された金額は必ず一致します。資産の総額よりも負債の総額の方が大きくなることがまれにありますが、このような場合も、純資産の額は貸借対照表上マイナスの金額で表示されるため、貸方側に記載された金額の方が大きくなってしまうことはありません。