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棚卸減耗損

棚卸減耗損とは何か

棚卸減耗損とは、商品の在庫数量を実際に数えた結果、その実際の在庫数量(実地棚卸数量)が会計帳簿等に記録されている在庫の数量(帳簿棚卸数量)よりも少ない場合に計上される損失のことをいいます。棚卸減耗損は、会計帳簿等への記録の誤り、蒸発などの自然減、破損や盗難などさまざまな理由によって生じます。

会計期間中に商品の受入・払出の状況を記録している場合

会計期間中に、商品の受け入れ、払い出しの状況(何個仕入れて、何個売り上げたか)を記録している場合は、決算にあたって、帳簿棚卸数量と実際棚卸数量の2つの期末棚卸数量が存在することとなります。これらの期末棚卸数量は、次の順番で処理していきます。

  1. 帳簿棚卸高を使って売上原価の計算を行う(三分法で仕訳を行っている場合。売上原価対立法で仕訳を行っている場合は不要)
  2. 実地棚卸高を使って翌期に繰り越す商品の額(商品勘定、繰越商品勘定)を修正するとともに、棚卸減耗損を認識する
  3. 棚卸減耗損のうち、当期の売上原価とすべき金額があれば、その金額を売上原価が記録されている勘定に振り替える

棚卸減耗損の認識

決算にあたって認識する棚卸減耗損の額は、翌期に繰り越される商品の額が記録されている勘定(商品勘定、繰越商品勘定)から差し引き、棚卸減耗損勘定に振り替えます。棚卸減耗損の額は、次の計算式によって求められます。

棚卸減耗損=(帳簿棚卸数量-実地棚卸数量)×1個(1単位)当たりの取得原原価

X商品(1個あたりの取得原価:100円)の帳簿棚卸数量は20個であったが、決算にあたって実地棚卸を行ったところ実際には18個しかなかった。なお、当社では商品売買取引の仕訳を売上原価対立法で行っている。

(借) 棚卸減耗損 200
(貸) 商品 200

なお、払出単価の計算を、商品ごとに個別に行っていたり(個別法)、受け入れた順番にしたがって払い出すと仮定して行っていたり(先入先出法)する場合は、同じ商品であっても1個(1単位)当たりの取得原価が変わることがありますので、上のような単純な掛け算ではなく、払出単価の計算を行うにあたって採用している仮定にしたがって、いくらの単価がひもづけられている商品が企業から失われたのかを考えたうえで、棚卸減耗損の額を計算する必要があります。

棚卸減耗損の売上原価算入

決算にあたって認識された棚卸減耗損の額が、営業活動のなかで通常発生する程度のものであれば、経営上、その発生を特に問題視する必要はありません。このような場合は、発生した棚卸減耗損の額を、企業の判断で、その会計期間の売上原価に含めてしまうことができます。この方法によれば、計算される売上原価の額は、「会計期間中に商品の受入・払出の状況を記録していない場合」と同じ結果となります。

棚卸減耗損を売上原価に含めてしまう場合、さきほど棚卸減耗損勘定に計上した金額を売上原価が記録されている勘定(仕入勘定・売上原価勘定)に振り替える仕訳を行います。

商品棚卸高200円を売上原価として処理する。なお、当社では商品売買取引の仕訳を売上原価対立法で行っている。

(借) 売上原価 200
(貸) 棚卸減耗損 200

会計期間中に商品の受入・払出状況を記録していない場合

会計期間中に、商品の受け入れ、払い出しの状況を記録していない場合は、帳簿棚卸数量が存在しないこととなるため、棚卸減耗損を個別に計算することはできません。この場合、実地棚卸数量をもとに売上原価の計算が行われることになるため、売上原価のなかに実際に販売された商品の取得原価(本来の意味での売上原価)と、何らかの理由で企業から失われた商品の取得原価がまとめて計上されることになります。