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売上原価とは何か

売上原価の意味

売上原価の意味

商品売買取引において、商品(顧客に販売するために第三者から仕入れたもの)を販売したことによって得た利益の額は、販売した商品の価額(販売価額等)から、その販売した商品を仕入れるにあたって要した金額を差し引いて計算されます。たとえば、ある商品を500円で売り上げた場合、その商品を仕入れるために200円を支払っているならば、この商品を売買したことによって生じた利益の額は300円(=500円-200円)です。売上原価とは、この商品の販売価額等から差し引かれる金額のことをいいます。

売上原価は付随費用を含めた取得原価をもとに計算する

売上原価の額は、販売した商品の取得原価をもとに計算されます。ここで、商品の取得原価とは、その商品を販売できる状態にするまでに要する費用の額のことで、商品自体の価額(購入代価)だけでなく、引取運賃、運送にあたっての保険料、関税、保管料をはじめとする各種の費用の額(付随費用)も含まれます。取得原価に付随費用を含めて計算するのは、この金額も購入代価と同じように商品売買を売買したことによって得られる販売価額等から差し引く方が、より適切な利益を計算できると考えられているからです。たとえば、280円で仕入れ、20円をかけて運んできた商品を500円で販売したとしましょう。この場合、企業が設けた金額は販売価額から商品の価額だけを差し引いた220円(=500円-280円)とするよりも、引取運賃(運送料)もまとめて差し引いた200円(=500円-280円-20円)とした方が自然に感じられるでしょう。この一連の取引において実際に増えた現金の額は200円(=500円-280円-20円)なのですから。

期間損益計算における売上原価と取得原価の関係

今日の簿記では、企業の営業活動から生じる利益の額が会計期間ごとに計算されます(期間損益計算)。会計期間は、企業の営業活動の進捗状況とは無関係に区切られてしまうため、当期に仕入れた商品であっても、販売されるのは翌期になってしまうということが普通にあります。

この場合、商品を仕入れたとき(当期)に費用を認識し、商品を販売したとき(翌期)に収益を認識すると、期間損益計算がおかしな結果になってしまいます。たとえば、当期に商品200円を仕入れ、この商品を翌期に500円で売り上げたとしましょう。仕入時に費用を認識し、販売時に収益を認識すると、当期は200円の赤字(=収益0円-費用200円)、翌期は500円の黒字(=収益500円-費用0円)となります。この商品を売買したことによって生じた利益の額は300円(=500円-200円)なのに、この金額が当期にも翌期にも出てきません。

このような事態を防ぐため、今日の簿記では、会計期間ごとの商品の販売価額等から差し引かれる金額は、その会計期間中に販売された商品の取得原価に限るものとしています。当期に仕入れた商品の取得原価であっても、その商品が当期中に販売されていない場合は売上原価にはなりません。

各会計期間の売上原価が把握されるタイミング

各会計期間の売上原価が把握されるタイミングは、商品売買取引の処理をどのような方法で行っているかによって変わります。

商品を販売するつど売上原価を計上する方法で記録を行っている場合

商品を販売するつど売上原価の記録を行う方法(売上原価対立法)で商品売買取引の記録を行っている場合、各期の売上原価の額はリアルタイムで把握されることになります。この場合、売上原価の額が記録されている勘定の残高金額がそのままその会計期間におけるその時点までの売上原価の額となります。

なお、この方法で売上原価を把握するためには、商品を販売するつど、その商品の売上原価となる取得原価の額を把握できる体制を整えておく必要があります。具体的には、個別法、先入先出法、移動平均法などの「継続記録法」とよばれる方法を使って商品の払出単価を計算していることが必要です。

会計期間ごとにまとめて売上原価を計算する方法で記録を行っている場合

商品を販売するつど売上原価の計算方法で商品売買取引の記録を行っていない場合(三分法などによっている場合)、売上原価の額は、決算にあたってその会計期間中に発生した総額をまとめて計算することで求めます(売上原価を計算しないという選択肢はありません)。この場合、売上原価を計算するために、会計期間中には行われない特別な仕訳が必要になります。

なお、この方法で売上原価を計算する場合は、上記の継続記録法ではなく、総平均法、売価還元法、最終仕入原価法のような商品の払出単価を会計期間分まとめて計算してしまう方法によることもできます。