商品有高帳(移動平均法)
設例
4月中における商品Xに関する売買の状況は次の通りであった(@は商品1個当たりの金額を表す)。
4月1日 | 前月繰越 | 9個 | @30円 |
4日 | 売上 | 4個 | @50円 |
8日 | 仕入 | 10個 | @33円 |
13日 | 売上 | 5個 | @50円 |
15日 | 売上値引 | 80円 | |
19日 | 売上 | 6個 | @50円 |
21日 | 仕入 | 12個 | @36円 |
22日 | 仕入値引 | 64円 | |
26日 | 売上 | 5個 | @50円 |
解答
商 品 有 高 帳 | |||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
商 品 X | |||||||||||
月 | 日 | 摘要 | 受入 | 払出 | 残高 | ||||||
数量 | 単価 | 金額 | 数量 | 単価 | 金額 | 数量 | 単価 | 金額 | |||
4 | 1 | 前月繰越 | 9 | 30 | 270 | 9 | 30 | 270 | |||
4 | 売上 | 4 | 30 | 120 | 5 | 30 | 150 | ||||
8 | 仕入 | 10 | 33 | 330 | 15 | 32 | 480 | ||||
13 | 売上 | 5 | 32 | 160 | 10 | 32 | 320 | ||||
19 | 売上 | 6 | 32 | 192 | 4 | 32 | 128 | ||||
21 | 仕入 | 12 | 36 | 432 | 16 | 35 | 560 | ||||
22 | 仕入値引 | △64 | 16 | 31 | 496 | ||||||
26 | 売上 | 5 | 31 | 155 | 11 | 31 | 341 | ||||
30 | 次期繰越 | 11 | 31 | 341 | |||||||
31 | 968 | 31 | 968 |
解説
商品有高帳とは
商品有高帳とは、企業が保有する商品の状況を商品の種類ごとにその取得原価ベースで整理、記録しておくための会計帳簿です。この設例では、商品Xに関する商品有高帳の記録が示されていますが、ここには商品X以外の商品に関する状況は記録されません。また、商品有高帳への記録は取得原価ベースで行います。このため、商品の販売価額(および売上に係る返品・値引き等の額)が商品有高帳に記録されることもありません。
仕入等により商品を受け入れたときの記録
新たに商品を受け入れたときは、まず、その数量、単価および金額を受入欄に記録します。単価および金額は、引取運賃などの付随費用を含めた取得原価で記録します。このため、先に数量および金額を記入してしまい、単価欄には金額欄の金額を数量欄の数量で割った答えを書くという順で書くようにしましょう(端数処理の方法については、各企業でルールを決め、そのルールにしたがって処理してください)。
次に、残高欄の記録を行います。まず、数量欄および金額欄の記録を行いますが、どちらも直前の数量および金額と、新たに受け入れた商品の数量および金額を合計した結果を記入してください。8日の取引でいえば、数量欄は直前の残高5個と新たに仕入れた商品10個の合計15個、金額欄は直前の残高150円と新たに仕入れた商品330円の合計480円となります。単価欄は、受入欄のときと同じように金額欄の金額を数量欄の数量で割った答えを書きます。8日の場合480円を15個で割った32円が単価欄に書く金額です。
売上等により商品を払い出したときの記録
商品を払い出したときは、まず、その数量、単価および金額を払出欄に記録します。商品有高帳は、商品の状況を取得原価ベースで記録しておく会計帳簿ですので、単価欄および金額欄に販売価額を記入してはいけません。まず、単価欄は直前の残高欄に記録されている単価をそのまま書き写します。そして、金額欄はこの単価に払い出した商品の数量をかけて計算します。4日の取引でいえば、直前の残高欄に記録されている単価は30円ですから、これに販売数量4個をかけた120円が金額欄に記入する金額になります。
次に、残高欄の記録を行います。直前の残高欄に記録されている数量、金額から払い出した数量、金額をそれぞれ差し引いてから、差し引き後の金額を差し引き後の数量で割って単価を求めるようにすると、商品を受け入れたときと同じように記録を進めていくことができます。商品を払い出したときは、理論上、払出後も単価は変わりませんが、端数処理の仕方によっては、単価が払出しの前後で変わってくる場合もありますから、念のため、単価は数量と金額を使って計算しなおすようにした方がよいでしょう。
返品・値引き・割戻しがあったときの記録
かねて受け入れていた商品について、返品をしたり、値引きや割戻しを受けたときは、その商品の取得原価があとから修正されたことになるため、仕入時に商品有高帳に行った記録も修正する必要があります。過去に行った記録の修正であることが明確になるように、仕入時に記録を行ったのと同じ受入欄に赤字で修正内容を記録します(△はマイナスを表します)。なお、この場合は、残高欄に記録した単価を改めて計算しなおす必要があります。新しい単価は、直前の残高欄に記録されている数量、金額から返品等により減少した数量、金額をそれぞれ差し引いてから、差し引き後の金額を差し引き後の数量で割って求めてください(値引き・割戻しの場合は金額だけが減り、数量は減りません)。
一方、かねて払い出していた商品について、返品を受けたり、値引きや割戻しをしたときは、基本的に商品有高帳への記録は必要ありません。この設例では、15日に売り上げた商品の値引きを行っていますが、商品有高帳には一切記録が行われていません。このような取引は商品の取得原価ではなく、売上高を後から修正する取引であるからです。なお、かねて売り上げていた商品の返品を受け、その商品をアウトレット品や中古品としてではなく、新品と同じように取り扱う場合は、もともとその商品が記録されていた場所に返品された商品の数量、単価、金額を記録することもあります。この場合は、払い出しの取り消しになりますから、払出欄に赤字で修正内容を記録します。