医療法人の財産目録・貸借対照表

2026年8月29日更新

財産目録および貸借対照表は、どちらも特定の時点(基本的には会計年度末)における資産、負債および純資産の状況をまとめたものである。財産目録は、貸借対照表において計算された金額をまとめたものであり、両者は密接不可分である。このため、このページではこれらをまとめて説明する。

財産目録・貸借対照表の様式

医療法人が主たる事務所の所在地の都道府県知事に対して届け出る財産目録および貸借対照表の様式は、次の区分に応じてそれぞれのものが定められている。

標準様式
「医療法人における事業報告書等の様式について」(平成19年3月30日医政指発第0330003号、最終改正令和7年3月31日)、様式2および様式3-1
診療所のみを開設する医療法人
「医療法人における事業報告書等の様式について」(平成19年3月30日医政指発第0330003号、最終改正令和7年3月31日)、様式2および様式3-2
「医療法」第51条第2項の医療法人
「医療法人会計基準適用上の留意事項並びに財産目録、純資産変動計算書及び附属明細表の作成方法に関する運用指針」(平成28年4月20日医政発第0420第5号、最終改正平成30年12月13日)、様式第三号
「医療法人会計基準」(平成28年厚生労働省令第95号、最終改正令和元年5月7日)、様式第一号
社会医療法人債を発行する社会医療法人
「社債医療法人債を発行する社会医療法人の財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(平成19年厚生労働省令第38号、最終改正令和元年5月7日)、様式第一号および様式第二号

資産・負債・純資産

財産目録および貸借対照表では、資産、負債および純資産の状況がまとめられる。

資産とは、医療法人の将来の活動に利用することができる金銭、物品、権利等のことをいう。負債とは、医療法人の将来の活動のなかで資産を引き渡したり、役務を提供したりする義務のことをいう。財産目録および貸借対照表は、医療法人がその時点で保有している金銭および物品だけでなく、将来におけるこれらの増減(その時点までに契約等によって確定しているものに限る)も含まれる。

純資産は、資産の総額から負債の総額を差し引いた金額である。資産の総額が負債の総額よりも多いときは純資産の額が正(プラス)となるが、資産の総額が負債の総額よりも少ないときは純資産の額が負(マイナス)となる。資産、負債および純資産の関係は、次のように恒等式の形で表されるが、この恒等式のことを純資産等式という。

資産ー負債=純資産

資産・負債の流動・固定分類

財産目録および貸借対照表において、資産は流動資産と固定資産に分けて表示しなければならない。また、貸借対照表において、負債は流動負債と固定負債に分けて表示しなければならない。資産を流動資産と固定資産に、負債を流動負債と固定負債に分ける基準には、正常営業循環基準と1年基準の2つがある。

正常営業循環基準とは、医療法人の正常営業循環過程に含まれる資産および負債を流動資産および流動負債とする基準である。正常営業循環過程とは、患者に対して医療サービスを提供するために金銭を投じて物品を購入し、その物品を売却したり、医療サービスを提供したりすることによって患者から金銭を回収するという一連の過程のことをいう。具体的には、現金および預金、患者に対して売却する薬品その他の物品(たな卸資産)、事業未収金、前払金などは流動資産に該当し、買掛金、前受金などは流動負債に該当する。

1年基準とは、正常営業循環基準において流動資産または流動負債とされなかった資産または負債に対して適用される基準である。1年基準では、資産のうち1年以内に現金等の形で回収されるもの、1年以内に使用もしくは処分されるもの、または、1年以内に役務の提供を受けるものは流動資産、それ以外のものは固定資産となる。同様に、負債のうち1年以内に資産の引き渡しまたは役務の提供が行われるものは流動負債、それ以外のものは負債となる。

総額主義

財産目録および貸借対照表には、総額で金額を表記しなければならない。これを総額主義という。総額で表記するとは、対応するプラスの金額とマイナスの金額を相殺せずに、それぞれの金額をそのまま表記することを意味する。たとえば、資産が5000万円、負債が3000万円あるときに、これらの金額を相殺して資産を2000万円(=5000万円ー3000万円)、負債をゼロとすることは認められない。また、たとえば、同じ相手に対して貸付金が500万円、買掛金が300万円あるときも、これらの金額を相殺して貸付金を200万円、買掛金をゼロとすることは認められない。

総額主義は、医療法人がどの程度の規模で活動しているかを財産目録または貸借対照表の利用者に正しく理解させるために必要になる。プラスの金額とマイナスの金額を相殺した金額(これを「純額」という)が使用されると、財産目録または貸借対照表において、医療法人の活動規模が金額を相殺した分だけ小さく表示されてしまうため、このような表記方法をとることは禁じられている。